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インデックスファンド投資でアーリーリタイヤが難しい理由②

前回は、インデックスファンド投資でアーリーリタイヤが難しい理由として、外国株インデックスの予想収益率8%だと、まとまったリタイヤ資金を作るには時間か元手が相応に必要だということを書きました。
今回は、難しい理由その2として、株式投資の収益のブレ(ボラティリティ)を取り上げます。

理由2:分散したポートフォリオでも外国株のボラティリティは高い

株は預金でも債券でもない
前回の計算では、外国株インデックスの収益率が、あたかも毎年8%の確定リターンであるかのように計算しました。これは、8%複利で運用した成果を見るための極端な前提で、株のファンドを買う以上そんなことはありえません。株式の収益はプラスにもマイナスにもなります。例えば、前回も触れたGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の「基本ポートフォリオの定期検証」では、外国株式の標準偏差(ボラティリティ)は年率25.7%としています。(標準偏差の詳細な説明はしませんが、詳しくない方はとりあえずブレの大きさを表す尺度ぐらいに考えていただいていいと思います。)
ちなみに外国株以外だと、国内債券4.10%、国内株式24.86%、外国債券11.46%としています。実感の通り、債券と比べると株の収益のブレはかなり大きいのです。なお、外国債券と国内債券で大きな違いが出てくるのは、資産自体の値動きもそうですが、外国債券が円建ての収益率なので為替の変動も含んでいるからだと思います。

平均収益率7.8%、標準偏差25.7%の意味
さて、では年率の標準偏差が25.7%というのはどういうことなのでしょうか。一番良く使われる説明が、正規分布に基づくものです。データの分布が正規分布(平均に近いデータほど多い釣鐘型の分布)に従うとすると、あるデータが平均から±1標準偏差の間に含まれる確率が68.27%平均から±2標準偏差の間に含まれる確率が95.45%になります。
すなわち
・外国株インデックスの年間の収益率が、平均7.8%、標準偏差25.7%
・外国株インデックスの収益率が正規分布に従う
とすると、外国株インデックスの年間の収益率は、
・68%の確率で+33.5%~-17.9%、95%の確率で+59.2%~-43.6%に収まる

ということになります。
なんというか、レンジが広すぎて全然当てにならないというのが率直な感想ではないでしょうか。95%の確率で+59.2%~-43.6%の範囲に収まると言われても、それだけ広ければ収まるだろうさ、という感じだと思います。そして、標準偏差25.7%が言わんとしているのはそういうことです。
ちなみに、実際の株価指数の収益率は、概ね釣鐘型の分布になるものの、中心から離れた収益率が発生する(大きなプラスまたは大きなマイナスになる)確率が、正規分布よりも大きいことが知られています。この考え方を市場以外にも拡張して1冊の本にしたのが数年前にベストセラーになったニコラス・タレブの「ブラック・スワン」です。

簡単なシミュレーションをしてグラフで見てみよう
以下は平均期待収益率7.8%・標準偏差25.7%という前提で、平均ゼロ・標準偏差1の乱数を使って20年分の株価をシミュレートしたものです(いわゆるモンテカルロ・シミュレーションの簡単なやつです)。100で始まった株価が20年でどうなるのかを、10ケース分シミュレートしてます。

上のグラフの10個のケースでは、100でスタートした株価は40~2000の範囲に収まりました。収益率にすると-60%から+1,900%です。再計算するたび結果は変わります。今回の例では、一番下の薄い茶色と濃紺が、20年経過した時点で100を下回る価格になりました。
簡単な例ですが、期待収益率7.8%、標準偏差26%という数字だけを見ると、暗いだけの未来も発生し得るシチュエーションであることは覚えておいても良いかもしれません。もっとも、実際には株価にはトレンド(上がり続けたり下がり続けたりする傾向)が形成されることもあれば、リバーサル(買われすぎたものが反落する、売られすぎたものが反発する)が効くような局面が発生しますが、上のシミュレーションでは考慮していません。また、私自信は、会社が黒字を出し続けられていれば、株価は長期的には上昇傾向で推移すると考えています。

アーリーリタイヤとボラティリティ
アーリーリタイヤは2つの局面に分けられます。1つはリタイヤが見えるまで資産を貯めるフェイズ、2つ目は資産を現金化して生活費に充てながらリタイヤ生活を実践するフェイズ。
理想なのは2フェーズ続けて予想収益率が高い資産を保有しながら、資産を貯めたり維持したりすることです。ただ、これまで見てきたように外国株インデックスはそれなりに収益のボラティリティ(標準偏差)が大きいです。リタイヤ後の収入源が全く無い場合は、リタイヤのタイミングでもっとボラティリティの低い資産に切り替えることになると思います。アーリーリタイヤという当初の目的からすると逆説的ですが、標準偏差25.7%と付き合い続けるためには、それ以外の収入源が無いと辛いと感じる人が多いのではないでしょうか。そして結局、リタイヤまでの資金を貯めるためには相応の元手と期間が必要であるという前回の話に戻っていきます。


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今回はボラティリティのお話をしました。次回「分散されたポートフォリオと大儲けの消失」ということで締めたいと思います。
読んでいただきありがとうございました。

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