風が止まないように、いつも


ハーフアップのちいさなしっぽが、少しだけ揺れた。


それだけで、他のことは全部どうでもよくなってしまう。
生まれた時から持っていたって心は厄介だ。


どうしたって満たされなくて、どうしようもなく焦がれて逃げられない
苦しくて仕方ないのに、悔しい思いをするのに、毎日泣きたくなるのに、こうして会場に滑り込むのを、1本でも多くこの色を灯したいと思うことを、私はまだやめられない


あれ、おかしいな?
と思った。

scarlet lipsが終われば、あとは適当にペンライトをいじって先に目についた色を振ればいいだけだったのに、どう考えてもメインステージの階段のいちばん上、その真ん中にむらくもごうが居る。

「え?」
好きすぎて幻覚を見たのかと思ったところで隣に座っている妹が脇腹を小突く。よかったね、と言わんばかりに何度も。私がペンライトのメモリーボタンを押すまで何度も何度も。


発声禁止なのに声にならない悲鳴がずっと喉から勝手にこぼれてくる。
震えた。

TimeLineに、2回目がある。


寿でのそれは加州だったし、鶴丸だったし
回替わりの2度目はきっと、歌が上手かったり人気だったりする子がやるんだって思ってた。



Timelineの2回目、はじめて歌ったのは村雲江だった。
公演の途中なのに笑い出したいような愉快な気持ちだ。

しかも今度は三日月のパートだ。違うパートが聴ける…!


すいしんしくんはいつだって丁寧で、控えめだから、くもくんがペースを乱されたりつられたりするような事はなくって、2人とも丁寧にていねいに、ゆっくりとそっと、大事に歌い切ってくれた。
くもくんがすいしんしくんの邪魔をするような事もなかった。歌唱力の差はあるから、そこはごめんなさいだけど。

やっぱり推しは歌が上手いわけじゃないけど、前回よりずっと良かった。ずっとずっと。
悲劇も、1回目も、もう、「悲劇」と呼ぶしかない出来だったから嬉しかった。嬉しくて、嬉しくて。
回替わりなんて誰も予想が付かないのに、私は私の持っていたチケットで、私の名義のチケットで、推しの回替わりを2回も当てた。

現地にいるって大事なことだ。
回替わりとなればそれはもっと。
推しの色を1本でも多く灯す。あの子に、自分のオタクは確かにいるよ、あなたをずっと応援してるよって伝える方法は今はそれしかない。

だから。
諦めなくて良かった。
2018の焼き増しだなんて吐いて、セトリも何もかもボロクソ言ったけど、推しはここまで来てくれた。
私もここまで来れた。


大好きでいれてよかった。

しっかり練習してくれてありがとう。
どっちのパートも覚えるのは大変だったよね。
2人と練習する時間取るのもきっと簡単じゃなかったと思う。
ありがとう。だいすき。




どうか、どうかまだ
村雲江であることを選んでいてください。

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