全ては武装

紋の入った旗を掲げろ
戰場では、気を抜いた奴から死んでいく。

小さい頃のお気に入りは、色とりどりのキャンディがプリントされた黄緑のワンピース、ふわふわのクリーム色のパニエ、りすちゃん柄の紫のスカート、黒いギンガムチェックのフリフリワンピース…

お姫様になりたかった、アイドルになりたかった
憧れの女の子はみんなパステルカラーのスカートを翻して歩いていた


全ては武装

私が身にまとう全て
髪もメイクも服も靴もぜんぶぜんぶ!
この言葉も全て


そう纏うものは全て武装
自らの所属を明らかにするもの

自分はどのような人間か、ってことだけじゃない
どう魅せたいか、どう見られたいか
人は見た目が100パーセント、なんて言うんだものこれは自分自身で相手の先入観を操るための手段

だから鎧を背負う

「誰がお前なんか見るんだよw」

と言われたって
街ですれ違う人たちの視界に一瞬紛れ込む。友人たちが目を合わせて話をしてくれる。なにより、鏡の向こうの自分が誰より自分自身を見つめている。

その姿を私がみせたい私にしておきたいの


私はいま、あるアパレルショップでバイトをしている
端的に言うと内定先

めちゃくちゃきつい!
よく、裏側を知ると楽しめなくなるからディズニーでバイトしないっていってるディズニー好きがいるけど(私もその1人だ)それに近いようなものを感じる

これで生きていくのだから、商売だから、買ってもらうのではなく売るというスタンス
「いらないものはいらない、買わない」「店員さんのオススメよりも自分を信じる」派の私にとっては大打撃だ

何色の在庫が残ってるからオススメしろ云々
やっぱりあるもんだなぁ…

私はアルバイトの立場なのをいいことに、自分の好きな、もしくはお客様に似合っているアイテム、色をおすすめするようにしている
なんていうか案の定まだ染まりきらない

服が好きな人ほど早く辞めてしまう業界なんだそうだ
わかるー…


ただ、それでも諦めたくないのは、自分が目の前のお客様の戦闘服になるかもしれない服を一緒に選ばせていただけているからだ。気分は武器商人。

大事なプレゼンの日に着てくれるのかも、デートに着て行ってくれるのかも…推しに会うときに着てってくれたりもするのだろうか

身に付けるものすべてに守られながら生きている

露出度の高い服が苦手なのはそんな意識があるからかもしれない、なんて、ね。


メイクとか服とか頑張ると必死に取り繕っちゃってみたいに言われることが多いのですが
必死だよ。自分で自分を守ってあげなきゃつぶれちゃう。気持ちを切り替えるには見た目を変えてあげるのが一番手っ取り早いって知ってるから


だって、こころのうちを晒すのは勇気のいること

私はなかなかできなかった、今もできてない
ネット弁慶なのでツイッターに書き殴っては消す日々だ(いつもご迷惑おかけしております)

上手く自己表現ができず、意思を伝えるのが苦手で、それで何回も苦しくて泣いたことがあった
幼い頃からずっとだ

思っている事を伝えて嫌われたら?
気持ちを伝えたいほど大好きな人にはやっぱり嫌われたくない
面と向かってなんてとてもじゃないけど。

そんなとき喉の奥がきゅーっと締まるのがわかる
大袈裟とかじゃなくて本当に声が出なくなる
そうすると怖くて涙が出てきて
黙って泣いてる人、になる自分が不甲斐なくて
もっと辛くなった


怖がる私の建前は、ひとの言葉と音を借りているのだからこれは私じゃないという、ただの言い訳


そうしてどうしようもないときは、歌うことにした

下手くそで、音程もリズムもめちゃくちゃ
でもそれだけが自分の心を表に出す手段になった

ぼろぼろ泣きながら歌う
誰かの借り物で、自分じゃないからセーフだ


そうして何年も経つうちに、誰かにきいて欲しくなった
軽音楽部に見学に行った高校一年生の私、そうとう勇気を出してたなぁっていまでも思う

大学ではアカペラをやっていた
ひとに歌を聴いてもらうのって、甘くない


みんな上手くて、私だけがまだずっと下手くそだ

傷付いたこともたくさんあった
ディズニーソングをメインボーカルでやらせてもらったとき、特別にお気に入りの曲だったから本当に心を込めて丁寧に大事に歌った、全てをかけて本気で

あとから先輩たちにプリンセス(笑)と呼ばれていた事を知る
何年たっても、他の曲を歌っても変わらなかった

あー、本気でぶつかるとそれだけ傷も深くなるんだぁぁってぼーっと意識がふわふわするままに全体練習に出られなくなっていって、また喉がいうことをきいてくれなくて、そのままふわふわ、私はゆっくりと幽霊部員になっていくのだった


歌は正直で
自分1人で戦うしかなくて
誰も守ってくれなければ、心の内を暴かれるわ(私が勝手にさらしているだけなんだけど)
本当に難しいものなんだって、それだけはわかっているつもりだ


おもうところがたくさんある

袖から出てきてライトを浴びた瞬間に、曲順も歌詞もなにもかも、考えていたことが全部吹っ飛んでしまうことも

ステージから見える真っ暗なはずの客席は意外と丸見えで、表情まで読み取れることも

失敗した、挽回しなきゃと焦るともっとピッチがずれていくことも

このひとたちは自分の歌を聴いて何をおもうの、もしかして嫌いになるの、と不安になることも


全部覚えている



それでも何回でもトライしたくなるのが不思議だけど、やっぱり自分には歌しかないのだと思った

こうして文字にしていても霞を掴むようでうまく表せない、感情の波がおさまって行ってくれないまま、もどかしくて、こうして眠れなくなる

全員殺す!みたいな目で周りを睨む全力武装の私がその重荷をとく場所をまだ失えない

下手でも、怖くても、
波を生むこの風が止まない限りは丸腰のままありのままの自分の声を聴いてくれるひとを探すんだろう

だから辛かった
冷たくて酷いこと言うなって自分でも思うけど

そんなこと言ってそこに立つのって、
わたしたちここまで付いてきてまだ信じてもらえてないのって、

世界の全ては椅子取りゲームだよ
自分が今いる場所は誰かが心から望んだのに届かなかった場所かもしれないから、まぁそんなの本当はどうかなんてわからないけどね


まだもやもやが抜けない

自分の心が狭いのも他人に厳しいのも大嫌いだ

でも、部活とかサークルとか遊びの範疇でだけど私だって歌って生きてきたひとだ

いろいろ感じて、悩んで、考えて考えて、もやもやしたまま、でもそれを見ないふりしてゆっくり一歩、またほんの少しだけ、きちんとサポート出来てないけど、まだ手放しで…とはいかないけど、それでも見失わない程度には後に続いてきたつもり



だけど今
私は自分の耳を信じていいのか、自分の心を信じていいのか、まだわからない。

ここに残るのかも離れるのかも。

別物として捉えるゆとりを持てるのかも。






わからないまま布団に潜る

明日の私もきっと、何も言えずに自ら築いた鎧に守られて生きる

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