あのきら星に手を伸ばせ


胸まで伸ばしていた髪が、ぱつん、と。
白いケープの手元に落ちてくる

さようなら、短い2ヶ月を走りきった私
ここがあなたの帰る現実の入り口です。



当日の朝まで、なんなら家を出る数分前まで、カレイベでカレンダーが貰えることを知らなかった無知のオタクは、服屋でもらったノベルティーの薄っぺらいトートを肩に引っ掛けて玄関のドアを閉めた

凍えるように寒いのに、現場がある日はもこもこのコートを着られないのが嫌だ
座席で嵩張るのはもっと嫌だから、いつもと同じネイビーのダウンごと自分を抱きしめてあげる
ごーおん東京、すいいべを共にしたこのダウン、寿の頃に買ってだいぶいろんな現場に着て行ったな


いくら演技が好きって言ったって、これだけ好みの顔をしてるんだからビジュで沸くのも許して欲しい
でも1年半くらい経つのにまだ推しに慣れなくて、事前通販してたカレンダーは宛名書きだけみて恥ずかしくなりすぎて仕舞い込んだんだった

開演前の少しの時間でぺらぺらと中身をめくってみる
なんか不思議な表情してる時もあるけど基本的にながたさんはかっこいいのでした。


去年のバーイベで私はそれはそれはショックを受けて、いまさら元推しと比べてみたりなんかして、そうしてまた病んで、あれにこれにとばたばた駆け抜けたら年が変わっていたのでした。

気付いたら、ごーおんも終わっていたのでした。


とんでもない長丁場、ものすごいボリュームの公演をこなして。
劇中劇とかいうメチャ難のこととか、初めての日舞とか、いろんなことと戦ってくれたながたさん。
この日はなんかそんな全部が終わってホッとしたような様子で、ちょっとだけ幼くみえました。


MCもおんなじ事務所の方(ジョナサンさん。本名と顔が一致しない。)だったからかゆる〜っとしてて結構おしゃべりだった。
バーイベで見た時より遥かに完成度の高い「永田聖一朗」をみせられてびびった。とても。

ふざけて、とぼけて、甘えて、慌てて、はしゃいで
クリームがかかった100てん満点のあまぁい味付け。
あのひとの全部が、自分を見て、好きになって、本当に愛して、と言っているんじゃないかって錯覚を起こす。

部首、って言葉知らなかったのはびっくりしたけど。へん、とつくり、しか知らんらしい。いやそれの類義語が部首や。


きっと、いくつまでかわいいを切り売りするのか悩んでいる今年でアラサーの仲間入りの男の子がまた困ったように笑う
これが今、いちばん、なによりも私の情緒をかき乱す


もう間も無く八雲のお稽古が始まるところみたいで、それも楽しそうにお話しされていた。
自由に演じていい、って言われてるんでどうやるか楽しみ。って言ってくれて私もとっても楽しみになった。まだ台本とかは貰ってない感じだった。それかまだ読んでないのかな?って

舞台に立つのって、舞台に立ち続けるのって、どんな気持ちなんだろう。
どんなプレッシャーと、どんなストレスに飲み込まれて、どんな風な精神状態になるんだろう。

ただ客席に座ったことがあるだけの私は何にも知らなくて、ただ同じ世界にあることが不思議なくらいうつくしい人が見せてくれるものを出来る限りの最高の笑顔で迎えて、足りない頭を絞り尽くした限りのおぼつかない言葉をなんとか出力する。

それだけ。ずっと何にもわからないまま。
しょうがない事だけど、これもひとつの罪と思いながら。


イベントってだいすき。
あとはちいさな箱でやる舞台も。

こちらの反応がダイレクトに伝わっている感覚がする
推しのテンションうまく乗せられるかも、自分たちの肩にかかってるような圧力みたいなものがすき

マスク越しだって笑って、隣と後ろに迷惑のない範囲で大袈裟にリアクションして、全身で楽しいよって、ありがとうって、だいすきって叫ぶの

伝われ、頼む。伝わって欲しい。

拙いけど、私も精一杯「お客さん」やるから、全力の「推し」がほしい。ぜんぶ欲しいんだよ。


相手が人間だって事忘れないように何度も頭に刻みながら「お客さん」をやる。何度も。
これからも、私にできる限りずっと。何回でも。


どうかあなたの苦しみも少しは紛らせますように、
そんな叶うわけない祈りをかける

せめて私があなたを苦しめていませんように
だって私はこれしか知らないのです

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