オタク、Zeppへ行く。


発表の日は本当に、膝から崩れ落ちて。

すえひろがりも終わって、やっといつも通りの日常に帰っていく。そんな日に突然、なんの前触れもなくその時はやってきて。

屋根がないだけでギャーギャー言って、似合いもしないカーゴパンツとかスニーカーを買い込んで、そうして山に登っただけで疲れ果ててたのに
今度は椅子がない!


夏はポケモン!
冬は江おん!!!!!!!!!!!!

去年根こそぎ使い果たした貯金はもちろん1年で元に戻るわけもなく、ただ明日のご飯と再来月のチケットのために今日も出勤して、働いて、働いて、働いて、それから死んだように眠る。それの繰り返し。
また現場に入るために。その繰り返し。ずっと繰り返し。


私がこの世界の中で好きだと思うのは推しだけではないし
欲しいと思うのもチケットだけじゃない

それでもこの一瞬のきらめきをほんの僅かでも逃すのが惜しくってもがいてる。ずっと。いつまでなんてわからないくらいにずっと。このままどこまで走っていくのかもわからなくてもずっとずっと。

何もわかんなくて、未来も見えなくて、漠然とした不安だけがずっとずっと何をしてても付き纏ってくる。現場にいる時以外は常に。離れてくれない。
ふとした一瞬に何度だって襲ってくるこの気持ちはこの本気度と気合いのまま推しを追いかけてるうちは永遠に拭えないものなのは分かってるのだけど、じゃあ、今走るのを止めてしまったら、ゆっくり歩いて行こうって、そう思ってしまったら、落ち着いて深呼吸をしたら、何もかもが壊れてしまうようで後に引けない。泳ぐのをやめたら死んでしまう魚みたいに、水槽の外から見たらなんてあほらしい姿なんだろうかと笑えてくる。


もう、冷静に考える頭とか、落ち着いて安定した情緒とか、私はあの日の、江おんの初日に置いてきたから

日程出た時に「5公演はなんとか入りたい❣️」とか言ってたくせに、今年も気付いたら3倍のチケットを取っていた。
去年は5割ちょいだったみたいだけど、今年はどうやら6割入ったらしい。もはやどこか他人事。


今年のスケジュールは最悪で、まともに社会人してたら全通どころか半通も厳しいような日程のなか、私は今回も「物理(的に入れる公演全て現地)」をする。
いや、もはやシフトさえ捻じ曲げて、それ以上をする。

オタクがこんなに厳しいのだから、演者はどれほど大変なんだろう。そう思うことしか出来なかったな。
なんで大阪と東京の間1日しかないんだ。どういう箱の押さえ方を…そう思っても、もうやると決まってしまったからには少しでも多く動員としてカウントされるように足掻くしかない。


また江かよとか、出ずっぱりでずるいとか、もう、うるさい!うるさい!!
すえひろがりも曲数多いとか、そんなんばっか言われててずっといらいらしてた。
じゃあ、客席見てみなよ。何色が多いの。誰がチケット取って、誰がその椅子に座ってるの。誰がグッズを買ってるの。

いま、大詰めに入れるかどうかの瀬戸際にいる刀ミュには、絶対にこの公演が必要だったでしょう。
オタクを叩くのはまぁ良いけど、どうかどうか、推しに見つかりませんように。まぁ、そんなの無理だけど。
それでも戦ってくれた大好きな人に今日も心からの感謝を。


いつだって限界だから私はやっぱり夜勤明けに予想より長く大残業して職場を逃げるように飛び出す
荷造りもしてなくてとりあえず着替えとかろうじてまとめてあったコスメやらスキンケアやらを鞄に放り込んで、数日前にやっと予約していた新幹線に駆け込んだ

初日がはじまる。
酷い眠気をホットのカフェオレで飲み下し、重い瞼にグリッターを乗せる。



車窓から富士山が見えた。

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