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真紅のハートと、敗北の痛み


永田聖一朗 24th birthday event
1部

参加してきました。


手紙を書きました。
推し始めて1年、ようやく自分の言葉をながたさんに伝える。それがどれだけ恐ろしかったか。

舞台を見にいくたびに、この気持ちをどうにかして伝えられないだろうか、あなたをこんなにも応援したいと思っている人がここにいるよと叫びたい。あなたの不安が少しでも軽くなるように、あなたが少しでも生きやすくなるように。
それでも手紙を書くのは怖かった。
去年はペンライトありの舞台ばっかりで安心した。何も言わなくたってあなたのオタクがこうして存在していてあなたを応援しにきましたよって伝えられるから。もうそれでいいじゃんって思ってた。怖い。こわいんだよ、もう嫌だ。


抽選は1部以外外れて、先着も仕事で参加すらできない。追加公演の4部まで40秒で売り切れたらしい。
馬鹿。
ほんとばか。馬鹿すぎます。運営も、推しも、なにより私が。

スキチケの譲渡なんて気味が悪いし、そんな風にしてチケットを得て、入り口で本人確認されたら?恥ずかしいし他のオタクに顔覚えられるだろうしその後現場行けないリスクの方が嫌だった。
そんなの起こる確率が低いことはわかってるけど、でも、まだ推しを降りるつもりはなかったからそんな風な推し方したくなかった。意味わかんないかもしれないけど私なりに真剣に、フェアに推しに向き合いたかったってだけだ。後ろめたい気持ちでする応援の先になにかがあるなんて思えなかった。


それでも行くしかなかった。当てたし。1部だけ。

推しにかわいいと思って貰えるなんて思ってないけど、でも最低限見た目はきちんとしてかなきゃって、スナで新作のワンピース買ったしミュールはダイアナの限定のやつだしピアスとネイルは靴に揃えたしTwitterで特定したお揃いのネックレスと時計はしてきた。
髪は乱舞祭の時のドぴんくが色落ちしててどうしようもなくギャルだったからせめてと思ってメイクは控えめにしたし、なんとか人間らしい見た目ではあったと思う。自分なりに頑張ったと思う。1年に1度しかないこれに、私はどうしようもなく本気だし、推し始めて1年経つのになんっにも推しのこと知らない私はようやく推しがどんな人なのか少しでも知れる機会を得てびっくりするくらい浮かれてた。




前日の私、突然推しを「くそざこ俳優」呼ばわりしだす。
いやでもくそざこなんで…


そんなくそざこ俳優を見にくそざこオタクは新大久保へゆく。
溶けるような夏晴れ。風はなく、湿度はさほど高くないように思う。
駅のスタバでダブル抹茶ティーラテをすすり、手紙の清書。仕事でもペンを持つことなんてほぼないから手が疲れて痛かった。推し、ファンレなんて読むのだろうか。なんとなく、なんとなくだけど確実にあのひとはオタクが嫌いなんだと思うから、きっと読んではくれないんだろう。読んではくれないのに、私はこんなに悩んで怖がって、ようやく手紙を書き終える。
開場時間はもうすぎていて、慌てて物販を買いに向かう。
新大久保のメイン通り、わけわからん食べ歩きの店のわけわからん香りに気持ち悪くなり、韓国コスメ屋の店先のミスト付き馬鹿でか扇風機の風に前髪を全部取っ払われる。

暑い。こんな日に推しは生まれた。

全部がぜんぶエモーショナルな感じに収束していって、今日はきっと、なんとなく忘れられない思い出になるんだろう。
きっとたぶん、そうでしかない。

細い小道に入り、突然住宅街みたいになったその中に会場があった。
外ではこんなクソ暑いのにオタク女がたむろしていて、スタッフの方が入り口で検温していた。
いつぶりだろう、プレボが置いてあるのが見えたので昨日慌てて買ったプレの袋に書きたてのファンレを放り込む。
気合い入ったデカい袋が3,4個あって、バイベなのにダンボール2つ?とかしか用意されてなかったプレボは既にぎちぎちだった。多分靴っぽいなこれ、みたいな袋を少し端にずらさせてもらって自分のプレを突っ込んだ。

ホールは狭くオタクはちぢこまって蛇腹の列を作り、ただでさえ狭いエントランスは人でいっぱいだった。
物販もなんてことない。
いつも通り写りは悪くて、ランダム要素はブロマイドコンプリートセットを買うと全2種のランブロが貰えるだけ。それでもまぁ、揃うまでは並び直しするか…そこしかお金落とす要素ないしな…と思いながら代金の計算。
前のオタクがブロマイド全種を2セット買っていた。おいおい、説明読まなかったのかよ特典は1会計につき1枚って……


え!特典2枚貰ってる!!!!
しかも、特典ABって書かれたやつから1枚づつ!!!!!!!!


運営は大馬鹿です。唯一の課金要素を大潰ししています。
本当に意味がわかんなかった。
意味わからん過ぎた。何が起きたかわからず、私


あ、えと、全種各1と…ブロマイドは全部2セットで。


そりゃ、そうなるに決まってんだろ!!!!!!!!!!!!


特典ABから1枚づつ貰いそのまま席へ。

私は大学時代にアカペラサークルに入っていてサークルライブなるものが年2であったのだが、そのキャパが大体200くらい。弱小サークルだったので抽選こそないがサークルメンバーも自分が出てない間は席に座ることがあるので8割くらいは埋まっていたかと思う。

そんなの、比じゃない。
傾斜のない客席、150のキャパ。小劇場っぽくて雰囲気ある〜とかそういう事は言ってらんない、ここは間違いなく、廃校寸前の田舎の小学校の体育館ステージと同等の狭さだ。
てか私の出身校の体育館のステージの1/3くらいしかない。狭。。。。。

あと近…
私はよく「いつか本気でキレたらステージに上がって推しの首を締める」と言うのだが、それが難なく実現できそうな近さ。
段差もほぼない。パンツ履いてたら手も掛けず一歩で上れそうだ。

座席番号はA-8。
普通に考えたら「最前!やったー!めっちゃ下手だけど遮るものなく推しを見れるなら問題なし♡」となるような席だがキャパが少な過ぎてほぼドセンだった。
何度も言うがキャパが少な過ぎて8番とかいう番号でドセンだった。キャパが少な過ぎて。


足元までステージから丸見えなので既に靴擦れしはじめた新しいミュールを放り投げる事はできず、アナウンサー座り(伝われ)で綺麗に座る。手もきちんと重ねる。
就活の時に良くやっていたし余裕だと思ってたけど流石にきつかった。マジで脚ずっと動かしてた。座り直しもしまくり。ごめん、左右と後ろのオタク。(前にオタクはいない。気分がいい。)


内容はあんまり覚えてない。
「あぁ、他の俳優のバイベに呼ばれないのも納得だな」と思われるようなトークだった。

推し、本当の本当にコミュ障でインキャらしい。
この顔で…?????
ほっといても女が寄ってきてちやほやしたり話したりしてくれたんだろう。こいつはそうやって甘えて生きてきたんだなと思った。


Twitterでもこいつは何かにつけて「ほめて?」である
ファンもママタイプが多いのでそれに疑問を持たずでろでろに甘やかす。
私も人を際限なく甘やかし可愛がるのが大好きな長女なのでこの男のこういうところにもどうしようもなく惹かれてしまっている。
もう、だめだ。こいつがホストじゃなくて助かった。私はきっと飾りボトルで卓を埋め尽くすために、マイクで被りを煽るために、他の誰よりも高いタワーを立てるために、水でも風でも、Pすらもかけ持って、それで出稼ぎでもなんでもやっただろう。
こいつが持っている魅力っていうのはそういう危なげなもので、それが、どうしようもなく心臓の辺りをぎゅっと押しつぶす。

あの目が怖い。



悔しい。




私は負けたんだ、今日確かに負けた。

誰にとかじゃなくってきっと全てに。
悔しくて仕方ない。

毎部衣装もヘアセットも変わって、ショーゴヤマザキにユッケチャンまでゲストに来てたと知って、フォロワーに介抱されながら堪えていたけどちょっとだけ泣いた。


悔しいけど、何もできなかった。
たぶんきっとこれから何もしない。

彼の舞台が好きなんじゃないかもしれない。
この男の人並はずれた承認欲求を満たしてやることにならきっと、私は何を掛けてでもなんだってやってしまうし、もっともっと狂って、自分が壊れてでも全てを注ぎ込むんだろう。

ただその時は来ないような気がしている。


好きなブランドのAWルックが出始める。
セールも真っ只中だ。
それを身漁る余裕がある。

本気ってなんだろう。


お見送りで貰った指ハートだけが今の私を支える全てで、
きっとアクターズリーグまでに黒染めして左右にピンクとブルーのイヤリングカラーを入れる事だけが唯一の決め事なのかもしれない。





バースデーイベントはこわい。
私が崎山さんから降りることを決めたのも、彼のお誕生日当日だった。

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