『青春18×2 君へと続く道』を見た



大人はなぜ色を失うのだろうね?映画を見ながら、何度かそんなことを考えていた。

映画は台湾と日本の共同製作のもので、有り体に言えばラブストーリー。挫折を味わった男の人が、昔の恋を辿りながら自分を再構築する話。

一夏の恋だったと思う。二人が出会って恋に落ちてまた離れるまで、そんなに長い時間は経っていない。
でも、大人になったジミーの記憶には確かにあの夏の恋が焼きついていて、それは鮮明な色を保ったまま色褪せない。台湾の景色、好きだなぁと思った。何度か行ったけどまだ行きたい。また行きたい、できれば夏。対して大人のジミーを描写するシーンは全てどこか色褪せて、薄暗かったのが印象的だった。場所は日本、季節は冬で、冬景色。
何かを失ったとき、人の目から色は消えるんだろう。何かを、というより、生きる希望を、と言いかえたほうがいいのかもしれない。
ジミーにあるあの夏の記憶は色褪せないけれど、アミがもうこの世にいない事実、それはジミーから色を奪った。
恋は長く続かない。何年も何年も死ぬまでずっと恋の最初と同じ鮮烈な色味は保てない。それはもう仕方がないことなんだと思う。そうだとしたら、大恋愛の末に永遠を誓った恋人たちもまた、いずれは色を失うのだろうか?
たぶん、それは違うよね。初恋と同じだけの熱量は保てなくても、きっと色褪せはしない。
だから、変化ではなく、喪失。喪失がジミーから色を奪ったんだなって、これをツラツラ書きながらやっと気がついた。あ〜そうか、この話は喪失を受け入れる話だったんだな……

台湾でアミと出会い、恋に落ちて、アミが日本に帰る間際に「夢を叶えよう」と約束をして。その数年後にアミを失ったことを知り、ジミーは進むべき道を見失い、最終的には積み重ねたものの全てを失った。

いつ、どこで間違えたのだろう?最初から間違えていたのだろうか。
そう自問自答してジミーは旅に出る。過去、アミは「自分探しの旅というより、自分はこれでいいんだって思うための旅」みたいなことを言っており、これは私的には印象に残ったセリフだったが、ジミーにとってもアンサーだったらいいな、と思った。この記憶(セリフ)がミッドポイントになるような構成にはなっていなかったけど、ジミーがアミの故郷まで旅をする意味になっていたらいいなと思う。だって、自分がたどってきた過去を否定するのって辛いなって私は思うから……。喪失を受け入れられなかったのも、その結果の今も、ジミーはジミーで。
アミの故郷へと旅をすること。それがジミーにとってこの先の長い人生の旅のためへの糧になってほしいと私は思う。途中で出会う人たちもまた、多分もう一生会わない友人たちばかりで。人生ってそんなもんだよね、もう会わないけれど、友人なんだよね、と思う。いまの自分を形作るほんの一部だとしても、その人との時間があった。

中国って(これは台湾だけど)、「路(lu)」という文字がつくものが好きな気がする……体感。そういう気質?感覚?があるのかしら。ジミーの路はアミが死んだことを知ったあの日からボロボロ崩れていたけれど(もしくは路が続いていることを忘れていたけれど)、この旅でアミという過去に会いに行くことでまた再出発するのだろう。
映画を見ているときはわりと「??」な個人的感情も多かったけど、改めて噛み締めているとしっくりくるかもしれない。

恋愛の描写はすべてベッタベタの展開、セリフもわりと王道が多く、恋愛映画がそもそも得意じゃないわたしは見ていて身体が痒くなったりもしつつ、そこはね、まぁ好みっていうかね!という気持ちもある。様式美ってあるじゃない、何にでも。love letterのオマージュも入ってるならそりゃね、恋愛映画だからあるだろそりゃ!みたいな。だからそこは変に気にならなかったんだけど、そんなに刺さらなかったのはわたしがまだ癒すだけの過去がなく、デカい挫折もしていないからだろうか?あと数年して見たらまた違うのかも。

でも私もまた台湾行きたくなった〜〜……。台湾の温かい感じ、わかる。ランタン、私も飛ばしたなぁとか。記憶の中のきらきらした色味とか、夏なのに寂しい感じとか。あと、4歳年上の謎めいた異国の女の子に恋をしてしまう18歳ジミーの気持ちとか……。私が清原サマだ!って言いたいわけではなく、でも誤解を恐れずに言えばあの……アミの魔性の感じ、わかるっていうか……。あれさ、割と自覚的なんだよね〜〜みたいな。4つ下の男の子が自分のことをいいなって思ってるのに気がついていて、あの揶揄う感じさ〜アンタさ〜!みたいな😂
とにかく色々とノスタルジーで頭を抱えてしまった。小5の頃の林間合宿、当時は北京に住んでいたので、場所が中国のなんか山奥にある村?みたいなところだったんだけど。好きな男の子と同じ班でね……その記憶と同じ色味をしていた。そういう意味でも、印象的な映画だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?