株式会社リストラ
やれるだけのことはやったつもりだが、ついに人員削減に踏み込まなければいけなくなった。
社員の渡は社長と反りが合わない。30代で、妻子もある働き盛りの男だが、社長の意向でリストラ対象となった。
引導を渡すのは、専務の俺の役目だ。
会議室に二人きり。暗澹たる思いで切り出す。
「渡。お前には他にもっと合う仕事があるはずだ。別の仕事を探してみるのはどうだ。」
言葉をなるべく柔らかくしたつもりだった。
「専務、僕なりに会社の為に働いてきたつもりです。でも実は最近、起業したいと思い始めまして。今僕が辞めることは、会社に迷惑をかけやしないかと、辞職を言い出せなかったのです。」
そう言って、翌月に渡は退社した。半年後、渡の会社はめきめき頭角を現し、メディアに頻繁に露出していた。
一方の我社は、社長の意向に沿ってばかりいたら、役に立たないイエスマンばかりが残ってしまった。
全社員がリストラ対象だ。
渡、俺もそっちに連れて行ってくれ!!!
家族に美味しいもの買ってあげたいと思います!世界平和をお祈りしに神社へ行きます!