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非行少年を支援するむずかしさを実感する『どうしても頑張れない人たち〜ケーキの切れない非行少年たち2』(宮口幸治 著)。

 本書は、累計発行部数120万部のベストセラー『ケーキの切れない非行少年たち』の続編である。実際に支援する人が陥りやすい間違いについて紹介している。
 私は子どもがいないため、具体的な実感はないが、非行少年を持った親御さんではなくても、思い当たる節があるのではないだろうか。
 それがなぜ、子どものやる気を削ぐのか、詳しく書かれている。日頃、子どもの行動に手を焼いている親御さんにとっても参考になる本である。

 前著では「ケーキを3等分できない非行少年がいる」ということに衝撃を受けた。その理由として、そうした子どもたちには発達障害や軽度の知的障害があり、それが見過ごされてきたことが非行につながるのだという。
 では、どうすればいいのだろう? 

 著者がいいたいことは「頑張れない子どもたちこそ支援が必要だ」ということである。ともすると「頑張ったら支援します」という姿勢になりがちだが、それでは非行少年たちは頑張れない。頑張れないから非行に走ってしまったのだ。その心情に寄り添い、伴走することが重要なのである。

 よく小さい子どもに「宿題をやったら、おやつをあげる」といって、鼻先に人参をぶら下げることがあるが、それが通用するうちはいい。しかし、子どもによってはできないこともある。それが重なると、子どもはどうなるだろう。 
 
 努力することを諦めて、「どうせ自分なんて、何をやってもダメなんだ」と思ってしまう。その心情を理解できない親は「どうして、できないんだ」と詰問したり、叱ったりする。

 こうした親の行為は子どもを無気力にするだけである。学校に行かなくなってひきこもりになったり、ときには非行化したりする。親はどうしていいかわからなくなり、いろいろ試してみるが、うまくいかない。そうして、さらに非行がひどくなり、補導されるに至る。

 著者は少年院での子どもたちとの関わりから、無気力で反抗的な子どもたちこそ、大人の支援が必要だと説く。
 大人のいうことをまったく聞かず、反抗的な態度を取る子どもがいる。支援する側は手を焼き、「こういう子どもには関わりたくない」と思ってしまうが、支援が必要なのは、まさにこうした子どもたちなのである。

 本書に書いてあることを実行するのは、なかなかむずかしい。「言うは易く行うは難し」である。それでも、根気強く付き合えば、子どもはきっと変わる。信頼できる大人に出会うことで驚くような変化を遂げる。そう著者は支援者にエールを送っている。
 

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