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人間が老いるのと同じように、巨大な団地も老いていく。そこで起きた殺人事件を追ったのが『マンモスの抜け殻』(相場英雄 著)である。
40年ほど前、東京の郊外には団地が多く建てられ、その中に商店街ができ、活気ある様相を呈していた。しかし、いま、そこに暮らす人々は年を取り、子どもたちも成長して団地を出てしまった。まるでマンモスの抜け殻のようになり、老人の住処になっている。
そんな時が止まったような団地で起きた殺人事件。殺したのは誰なのか。その団地で育った刑事が真相を追う。
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殺人事件を追う刑事、仲村勝也は事件のあった団地の出身である。殺されたのは、勝也が子どもの頃から団地内で高利貸しをしていた藤原光輝である。反社会勢力との関わりもある腹黒い人物だ。
藤原が殺害されたと思われる少し前、勝也の幼なじみの松島環が藤原と会っていたことが判明する。いまは新興企業に投資情報を提供するサービス会社の社長で、メディアにも登場するほどの有名人だ。
そんな環がなぜ、すねに傷を持つような人物と接触していたのか。勝也には理由がわからない。
一方、もう一人の幼なじみである石井尚人もまた、殺人のあった時刻に殺害現場である団地にいたことがわかる。尚人は殺された藤原が経営する老人施設で介護職員として働いているのだ。団地に利用者がいて、たまたま帰宅する利用者を団地まで送っていたのだった。
偶然なのか、必然なのか、勝也の幼なじみ2人が殺人事件の重要参考人となってしまう。「まさか、2人が殺人事件の犯人のはずがない」と思いつつ、刑事として職務を果たそうとする勝也。
事件を追ううち、日本の高齢社会の現実が見えてくる。勝也の母親もまた認知症の気配があり、尚人が働く老人施設の様子が気になってくる。
実は、環と尚人の2人には、人にはいえない藤原との因縁があった。それが事件を解決する糸口にもなるのだが、思いも寄らぬ人物が犯人であることがわかるのだ。
子どもたちがいなくなり、年寄りだけが残った団地は、まるでマンモスの抜け殻のようだ。そんな団地が東京のあちこちにある。廃墟になりつつある団地とそこに住む老人たち。
そんな団地で起きた殺人事件を端緒に、繁栄に取り残された人々が浮かび上がる。まさに日本の光と影を表しているようだ。
しかし、小説の最後、希望を見出せるような挑戦が始まる。暗い世相であっても、それをひっくり返そうとする人物はいるものだ。未来に絶望せずにすむような社会派ミステリーである。
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