余命はあてにならない。悪い意味で(『君の膵臓を食べたい』)
12月下旬から予選が始まるR-1グランプリ2021の出場資格が、芸歴10年以内の芸人さんに絞られたらしいですね。突然すぎないか?これまで5回決勝に進んでいた芸歴20年目のおいでやす小田は、出場資格を失ない、「いきなりすぎへん?来年からにしようや。ラストイヤーがないのよ?どうしてくれんねん、この先の人生!」とコメント。確かにこう言いたくなる気持ちもわかる。芸人じゃないけど、当然あると思ってたことが急に決まって、「あと一回チャンスくれ!!」なんてことはたくさんある。
仕事終わり、夜中に、タイトルが気になってた『君の膵臓を食べたい』をネットフリックスで見た。間違いなく映画館では見ないであろう映画だけど、なんだかんだ、しっかり泣けた。この記事の題名は、作品に関わるとっても大きなネタバレなので、別にいいか、と言う人は読んでください。
ストーリーは、教師として高校に勤めている男が、母校であり高校生当時に図書委員として蔵書の区分分けをやっていたことから、図書館老朽化による取り壊し前の蔵書移転の担当を押し付けられるところから始まる。移転作業を学生と一緒にやっていると、ふっと蘇る、自分が高校生の時の、ある女子と過ごした記憶––––みたいな感じ。
劇中では懐かしいシーンがたくさん出てきた。まずガラケー。新着メール受信の問い合わせ。淡いわー、、。絵文字がフランク過ぎるかなとか、絵文字多いなとか、推敲に推敲を重ねた末に全消去して、またはじめからメールの文章を考えたり。映画の内容よりは、その時代に実際にあったシーンにキュンキュンすることが多かった。
主人公を演じた北村匠海の、大声出さないし感情もそこまで出さない、シャイだけど中身は熱い、その具合は実際にいるよな〜と共感できるほど演技が上手だと思った。
そして、がっつりネタバレ表題の件。北村匠海と恋愛関係にあるヒロインの浜辺美波は、すい臓がんを患って数ヶ月の余命宣告を受けていた。
となると、見ている側としては(当然?)闘病の末に亡くなった女子と主人公の、切ない物語だと思っていた。余命宣告を受けたことで、死ぬまでの距離が確定したと思い込む。その余命までは生きられる。その過程でショッキングなことは起きるまい。
えっ???????嘘でしょ???????
ヒロインの浜辺美波、余命を全うする前になんと、通り魔に殺されてしまった。そこで「甘さ」という言葉がポコーンと頭に浮かびました。余命を全うするその時までは生きられるだろうという、甘さ。その前に、もしかすると明日何かが起きるとは思ってもいない。次があるだろう。いつもの日常が明日も明後日も来るだろうという考え。
このショッキングな結末には完全にやられた。余命はあてにならない、というか、あてにしてはいけない。
一番泣けるのは、浜辺美波の家を訪ね、お母さんと北村匠海がお話をするシーン。これまで感情を抑えていた北村匠海が、堰を切ったようにドバーっと涙を流すシーン。めちゃくちゃ泣いた。「ずるい演技だな!」って思いながら泣いた。
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