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320ページの技術同人誌執筆を支える技術

320ページの同人誌を執筆し,技術書典4で頒布しました.勢いで突っ走った感がありますが,メモとして残しておきます.記事タイトルは新刊のオマージュですので,実際に何かの技術を紹介しているわけではありません.

利用したもの

Word2010,HHKB,ATOK,BlackBerry KEYone,Dropbox Paper,Trello,Adobe Acrobat X Pro,Jupyter,matplotlib,Illustrator CS6,PowerPoint2010(順番は適当)

大まかな流れ

ネタだしや構想の段階ではDropbox Paperを利用しました.主に近距離出張のときに,BlackBerry KEYoneに入れたアプリを起動し,qwertyキーボードをムニムニしながら目次や概要を書いていました.そこからTrelloにTODOリストを作り,進捗管理ができるようにしました.

普段は2世代ほど前のノートPCにディスプレイとHHKBをつないで執筆しました.高いだけありますね,HHKB.もくもく会など外出先で執筆するときも,HHKBを持ち歩いていました.Let's noteのSXシリーズとHHKBのフィット感は最高です.

図は基本的にPowerPointで作り,Wordに拡張メタファイルとしてコピペしました.計算結果の図は,プログラムから数値データをテキスト形式で出力し,matplotlibで描画,epsで保存しました.epsをIllustratorで開き,これもWordに拡張メタファイルとしてコピペしました.

PDFファイルは, AcrobatをインストールするとWordに追加される「Acrobat」タブの「PDFを作成」(PDF Maker)から作成しました.

進捗管理

進捗管理はTrelloで行いました.TODO,調査中,執筆中,サンプルプログラム作成中,レビュー中,完了のリストを作り,カードに書いた項目を移動させながら全体の進捗を見ていました.概ねうまく行きましたが,完了に入るカードがほとんどなく,最後の最後までレビュー中で止まるカードばかりだったのは問題でした.

執筆

Word 2010で書きました.ファイルを分割せずに単一ファイルにしたのは失敗でしたが,それ以外は概ね快適でした.Wordが・・・?と思う方も大勢いらっしゃると思いますが,Wordはスタイルを軸とした正しい使い方さえ身につければ,かなり快適です.数式(数式エディタではない)もほとんどの数式はキーボード入力で完結できます.唯一できなかったのは,行列の中に線を引くことくらいです.どうせショボい式だろうと思う方は,是非一度見てください.BOOTHで取扱中です.図表番号,参考文献番号の引用についても,Wordの相互参照を利用することで,番号のインクリメントや削除・挿入に自動で対応できます.スタイル区切りを利用したトリッキーなこともしていますが,必須ではありません.

問題は,複雑な数式があると画面の更新が異様に遅くなったことでしょう.オブジェクトを埋め込む数式エディタとは異なり,テキストを装飾して組み立てる数式は,描画の負荷がかなり大きかったようです.28.8kbpsのモデムで遠隔ログインしているのかと思うほど,文字入力に対して描画が遅れます.そして,文章の追記によって数式がページを移動した場合などは,数十秒ほど改ページの調整で動作が止まります.下書きやアウトライン表示でかなりマシにはなりますが,図表の調整などでは印刷レイアウトで作業する必要があります.これが無ければ,あと数日は早く仕上げられたと思います.

図の作成

概念図や計算条件などの図はPowerPointで作成し,計算結果はJupyter上でmatplotlibと戦いながら作成しました.当初,図は全て300dpiのpngファイルとして保存し,Wordに貼り付けていました.ところが,いざ入稿しようという段階で,PDFに変換するときの設定を変えてもボケが改善せず,全てメタファイルに差し替えました.

このボケの原因はPDFの作り方にありました.当初はプリンタ→Adobe PDFを選んでpdfファイルを作っていましたが,どのように設定しても画像がボケてしまうようです.PDF Makerを試してみたところボケが若干改善したこと,メタファイルを使っていたFortran本ではボケていなかったことから,図をpngからメタファイルに差し替えました.

ちなみに,320ページあるとpdfファイルの作成にもかなり時間がかかります.プリンタ→Adobe PDFでpdfを作る場合には,印刷プレビューに数分,pdfファイルの保存ダイアログボックスが出てくるまで数分,実際の変換に10分ほどかかりました.PDF Makerを使うときは,正確には測っていませんが,30分くらいは放置していました.しおりやハイパーリンクの埋め込みに相当の時間がかかっていたようです.

試し刷り

入稿前に仕上がりを確認するために,Kinko'sで印刷・くるみ製本をしました.印刷の仕方が店舗によって異なるので慣れが必要ですが,どの店舗でも夜に行って今すぐくるみ製本をしてくれというのは嫌がられます.長い時間かかるような事を言ってきますが,そこは腹の探り合いです.ただし,仕事は丁寧です.24時間営業の店舗に夜預け,朝受け取るというのが,そういう駆け引きが無くて一番効率的でした.

印刷

おそらく,技術書典4に参加したサークルの中で,最も印刷所の恩恵を受けたのは当サークルでしょう.他のサークルが締切や値段と戦っている中,当サークルは,324ページの原稿を,18日に,早割10%OFFで入稿し,翌日に電子ブック校正も行いました.もっとも,印刷所さんのシステムが不調だったということもあっての特別措置であり,普段の締切は他の印刷所さんと大体同じです.

当サークルは結成以来,一貫してプリペラさんを利用しています.プリペラさんは,技術書典2でバックアップ印刷所であった新藤コーポレーションさんの同人誌印刷サービスです.技術書典3では,当初バックアップ印刷所ではなかったのですが,当サークルが印刷を依頼した際に,直接搬入できるよう事務局に掛け合っていただいたようです.技術書典4では宅配搬入でした.ここから導き出される答えは・・・

対応が丁寧,電子ブック校正のおかげで仕上がりがわかる,印刷もきれい,早割は35%OFFまであるので,当サークルは次回も利用します.

まとめ

技術書典2,超技術書典,技術書典3と参加して同人誌作りも熟れたと感じていましたが,今回は色々と苦戦しました.同人誌で厚いは正義だと信じていますが,正義を貫くにも相応の労力と時間とお金がかかる事がわかった技術書典4でした.

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