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戸籍法の改正要綱案がまとまったようです

以前の記事で触れた、戸籍の氏名に読み仮名をつけようとする戸籍法の改正案の要綱がまとまったと、昨日ニュースで見ましたので、思ったことを取り急ぎ書き留めてみます。

キラキラネームに一定の制約「一般的な読み方を」 法改正要綱案
↑ヤフーニュース(毎日新聞)に飛びます

私の感想としては「ま、この辺がお上の落としどころかな」といったところで、特別に歓喜も落胆もしていません。

要綱案には「氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものでなければならない」と明記されており、「一般的に認められている」ものとは「漢字の読み方が社会で受け入れられ、慣用的に使われていることや、常用漢字表や漢和辞典に掲載されていることが基準」になるようです。

しかし、その「慣用的に使われている」の判断基準が曖昧なままなのが問題であり、この文言そのものを高く評価することはできません。

また「反社会的、差別的、淫らな読み方」、「人の名前として違和感のあるキャラクターの名前」、「漢字と反対の意味」、「読み違いと受け取られる読み方」、「漢字から全く連想できない読み方」は認められない可能性があるとも書いてあります。

「反社会的、差別的、淫らな読み方」を認めないとするのは今までのルールと大して変わりません。「悪魔」と書くのがダメだったのが、安玖磨(あくま)空馬(あくま)も読みで不許可ですよになるだけです。反社会的という点では帝郎(てろ)もダメでしょうし、「淫ら」ということでは珍子(ちんこ)もアウトでしょう。

「人の名前として違和感のあるキャラクターの名前」は、キラキラネームの伝説的代表格、光宙(ぴかちゅう)黄熊(ぷぅ)を意識したものと思われます。こういった名前はそもそも実在するかも怪しかったのですが、これからの出現を抑止するという点で、制限する意味は大いにあると思います。

「漢字と反対の意味」の読み方というのは、毎日新聞による法務省への取材によれば、「高(ひくし)」というのが一例のようです。「乱」と書いて「おさまる」、「苦」と書いて「たのしむ」と読む反訓という語法は、漢字の歴史上実在するものではありますが、社会性に欠けるため認めないことにしたのでしょう。

「読み違いと受け取られる読み方」というのは、同じく元記事の取材によれば、鈴木(さとう)太郎(じろう)などが該当するようです。ここまで極端だと、そりゃダメだろうなとはっきりわかるのですが、郁(ゆう)輝(こう)といった、漢字のパーツの一部(ここではそれぞれ「有」と「光」)に由来する誤読がどう扱われるのかは不透明なままです。

佳(けい)柊(とう)といった"よくある誤読"が、"慣用的に使われている"と解釈される余地があるのが恐ろしいところです。

「漢字から全く連想できない読み方」の一例には太郎(まいける)が挙げられていますが、裏を返せば、連想が可能な月(るな)海(まりん)はOKということになってしまいます。むしろ太郎(まいける)が具体例として挙げられているところから、「連想が可能なら外国語読みは認められる」と暗に言っているようにも思えます。

確かに、日本の戸籍を持つ中国系や韓国系の人に対し、中韓風の読み方を一律に禁じるのは横暴だと思いますので、「外国語読みは禁止」と明記するのは難しい面があるかもしれません。しかしせめて「誤読」や「外国語読み」については「原則認めない」や「認められない可能性が多い」などとは言ってほしかったとこであり、この点については大いに落胆しました。

また、おそらくは慣用的に使われているという点から、葵(あ)絆(な)のような“一部引きちぎり型”は認められてしまうんだろうなとも感じています。これははなから法規制されるとは思っていませんでしたが。

具体的にどんな読みが「一般に認められている」と言えるかは、法改正後にそれぞれの市区町村に通達されるようです。そこに認められる例と同時に認められない具体例も記載され、かつそこに「誤読」と「外国語読み」が含まれることをさほど期待せずに願っています。

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