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映画『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』を観て

突然ですが、2021年秋にNHKが行った歴代仮面ライダーの「全仮面ライダー大投票」の結果をご存知ですか?

1位:電王
2位:W
3位:オーズ

仮面ライダー大投票
左から電王、W、オーズ

何がびっくりしたってコレ、この結果私の好きな仮面ライダー順位とまったく一緒だったの!

(知らんて(((;◔ᴗ◔;))))

仮面ライダーって特に平成ライダーってイケメン若手俳優の登竜門と言われる。

その中でも現在活躍中No.1は仮面ライダー電王の佐藤健くん。

そして、2位の仮面ライダーWは2人で一つの仮面ライダーに変身するからWなわけで、その片割れが人気実力兼ね備えてる菅田将暉くん。

そこまで聞いたら3位のオーズは誰が仮面ライダーなの?って期待が高まるでしょう。

3位はね、以前は佐藤健くんとも同じアミューズ所属だった渡部秀くん。

ん?だれ???

ってなった人いますよね?

テレ朝系お好きだったら「科捜研の女」に橋口呂太役で2017年からずっと出てるのでご存じかも。

けど、電王とWのライダーの役者ほど知名度はない。

では、なぜこのライダーオーズが3位なのか?

それは相手役がカッコいいからです(キッパリ)
相手役と言ったってヒロインじゃありません。ライダーが倒すべき怪人役です。

あー、ファイズで出てきた綾野剛的な怪人???

いえいえ、ちょっと違うんです。

怪人なんだけど情を重ねてしまう切ない怪人なんです。

オーズは別格・ダークな世界観は大人向け

「仮面ライダーオーズ」は物語・世界観の完成度がとても高く歴代仮面ライダーの中でも人気を博した偉大な作品。

ことに最終回の美しく哀しい物語は10年前当時ネットが1日ざわついていたのを覚えているほど。

まず世界観がシブい。

人間の尽きることない「欲望」にフォーカスして、その名もグリードという怪人が登場。そのグリードは欲望の塊でしかない。骨格(性格)を成すコアメダルとその肉づきを形成するセルメダルから成り立つ。そしてヒトの欲望を利用してヤミーという名のさらなる怪人を排出してゆく。

対して世界平和を守るために立ち上がるのが仮面ライダーなわけだが、オーズの場合、主役の火野映司というキャラクターがグリードの対極に位置する無欲の人間。その日暮らしの小銭と明日はくパンツ1枚があれば世界中どこででも生きていけるというツワモノ。

火野映司

500年前の世界でヒトの欲望によって生み出されたグリードのコアメダル、それを受け入れられる器の人間はなかなかいない。なぜなら既にヒトはそれぞれの欲に満ちているから。

でも火野映司は違った。自らの欲望より他人の幸せを願うような人だからグリードのコアメダルを受け入れられるに足る器だったのだ。

見どころはアンクと映司の奇妙なバディ関係

https://www.kamen-rider-official.com/zukan/character/1071

また、オーズの見どころはなんと言っても怪人であるアンク(三浦涼介2役)とオーズ・火野映司の奇妙なバディ関係にある。
アンクはその復活に際し、ある理由から意思を持った右腕しか再建されなかった。そのため自身の完全復活にはグリードを倒すことで得られるメダルが必要。便宜上、死にかけていた刑事さんの身体を借りて人間の形で暮らしている。他方、映司は映司で困っている地球上の人々を助けたいという強い思いを持っている。そのためには戦える力が必要だった。

それぞれのニーズが一致することで敵なんだけど共闘するようになる。
2人の間にはいつしか友情のようなものが芽生え…。

このあたりの小林靖子脚本の見事なこと!

特に私の好きなのが第34話ね。この回は毛利さんの脚本。

プトティラコンボに変身し暴走する映司を自ら傷つきながら止めるアンク

映司に頼ってもらいたいという高校時代の隣のクラスの引きこもり北村君(ヤミーの親)の欲望についてアンクは「友だちになりたいなんて人間てのは奇妙な欲望を持つなぁ」と言う。
しかし、この回のラストで間違いなくアンクは友情に近い絆を映司との間に感じる。プトティラコンボに変身し人間をも襲う暴走するライダー・映司を収めようとしてアンクは自らが傷つきながらも映司の変身を解く。ライダーから人間の姿に戻った映司は怪人アンクの腕の中で安堵して目を閉じるのだ。
アンク「俺はお前がどうなろうと構わない。だがな、俺は何があっても完全に復活を遂げる。そのためにお前の力が必要なんだ!」
映司「お前なら、絶対、止められると思った。」

仮面ライダーオーズ 第34話〔親友と利用とその関係〕
変身を解かれ、アンクの腕の中で安堵する映司


そして、小林脚本で最も深かった~と感じたのが第46話。
「映司グリードとWバースとアンクの欲望」。

物語も終盤に近付いてきたこの回ではグリード化していく映司とヒトに近くなってきたアンクの対比が描かれる。これまでに散りばめられてきた伏線回収も小林脚本ならではの緻密さだ。

映司「お前のほしいものって何だ?人間か?」
アンク「もっと単純だ、世界を確かに味わえるモノ、生命だ!」

ただのメダルの塊でしかなかった怪人アンクが人とかかわる中で"生きる"ことの意味を考えるようになる。ただ食べて寝て何かを眺めているだけじゃなく人とかかわることの大切さを次第に学んでゆくのだ。
この微妙な感情の動きをアンク役三浦涼介くんは見事に表現。涙を誘う。

アンク「お前もなんか欲しがってみろ…そうすればわかる!
お前はなんか欲しいと思ったことあんのかっ!あんのかぁ映司っ! 」

映司「俺は確かに欲しかった、、、欲しかったはずなのに諦めて蓋して目の前のことだけを、、、どんなに遠くても届く俺の腕、力、もっともっと。
もう叶ってた。お前から貰ってたんだ。
一度も言ってなかった。アンク、ありがとう。」

仮面ライダーオーズ 第46話〔映司グリードとWバースとアンクの欲望〕
映司に「ありがとう」を言われてハッとした表情のアンク

生命を持っている人間ですら目の前の欲望に目がくらんで人を不幸にしてしまうヤミ―になる。そんな中でも冷静に外からヒトという生き物を観察して生きることの意味、人に生かされることの意味に気づいていくアンク。

アンクという怪人の目を通して現代人の闇を掘り起こす小林脚本の巧さよ。まったくもって子ども向けではないストーリーにダーク過ぎる2人の関係だ。

残り2話となったこの回で映司とアンクの2人が居候しているクスクシエというレストランに戻ることはないと予想させ、果たしてどのようにどちらが駆逐されていくのか、当時からハッピーエンドにはならない予感バリバリだったのを思い出す。

人気の高かった美しい変身形態・タジャドルコンボ

※最終回の内容に関しては感動いっぱいでさらに3000文字ぐらい語ってしまいそうなのでここでは割愛。

さて、今回10年ぶりに当時のオールスターキャストで映画化。「復活のコアメダル」とくればアンクをはじめとするグリードたちが再び登場することは想像に難くない。

この公開を機にテレビ版を1話から最終話まで見直し、準備万端で映画館へ。


--------------以下、ネタバレ含む---------------

10年ぶりのオーズ「復活のコアメダル」は


映画評ではかなり「酷評」と言ってよい☆の数。
映画.comで「2.2」だかを記録。

それはなぜか、ズバリ!主人公の仮面ライダーが死んでしまうから。

えーーーーっっっっ!?

しかし、この私、大満足!!!
コーフンのるつぼで帰ってきた。

その理由は、今回の「復活のコアメダル」は実は主役が火野映司ではない!という衝撃。

なんと主役はアンク。大好きなアンク♡
アンク視点で物語が進行していく、あれれ?怪人なのに?!

それだけアンクあってのオーズ。アンクなしにはオーズは始まらないのだ。

怪人なのに!

仮面ライダーオーズの主人公だった人が脇に徹してる、しかも見事な1人3役で。
そして、火野映司というキャラの無謀さは実はテレビ版でも十分に表現されており、これまでも死ななかったのが不思議なぐらい。

人類を救うことが彼にとってのたった1つの欲望であり、その昔内紛のあった国で少女を救えなかったことが彼のトラウマだったのだから。
今作で似たような状況にある少女を助ける代わりに自らの命を差し出した。

ついにオーズである映司の欲望が叶えられた時と言ってよい。
ハッピーバースデー!! by 鴻上会長

だから私は満足だったのだな、と。

仮面ライダーオーズそのものが好きな人にとってはもう二度と会えない、オーズ。なぜ主人公を死なせるの?!となるはず。

でも、私がこのドラマを好きだったのはイコール怪人アンクのことが好きだったからで。そういう人は実はオーズファンにはたくさんいるのではないか、と信じている。

生命のなんたるか、を知ったアンクが今作では命を落とす親友・映司を見送る側に立つ、失うことの恐怖と悲しみを既に知っている人の心を持った怪人に成長しているアンク。

やっぱりラストシーンは涙なしには見られない。

そして、キャスト全員が10年前と変わらぬ姿で登場。
わずかに年を取ったかな、と感じる人もいたがほぼ10年前の姿ってすごくない?

里中さん、伊達さん、比奈ちゃん、映司くん、アンク、後藤さん、知世子さん


3月14日の公開から既に2ヶ月近くが過ぎ、もう配信も始まっているというのにお休み中に3回目を劇場にて観てしまった。

息子には「まだ行くの?」と呆れられ(-_-;)

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