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それぞれのこだわりとゆるやかなつながり

いもいも表コミの古谷(あき)です。

いもいもでは定番教材の「カプラ」。どんなものでも作れるように考え抜かれた大きさ、形で精巧に作られているとのことですが、平たく言えば、ただの積み木です。

でも、このカプラが超すごいんです。
積み木なんて小さな子どもの遊びだろうと思いきや、生徒たちはそれぞれこだわりを持って試行錯誤を繰り返し、ものすごい集中力で作品を作り上げます。

それぞれきれいだけど、全く異なるこれらの作品。でも実は、ある共通点があるのです。

表コミの色々なクラスで行ったワーク「カプラの絨毯」について書いていきます。

カプラの絨毯

ルールは非常にシンプル。
「グレーで塗られたところにしかカプラは置いてはいけない」。これだけです。
その制約のもと、いくつ積めるか競ったり、橋をかけたり、屋根をつくったり。

まず最初は「1本立てたカプラの上に積めるだけ積む!」
こんなにもシンプルなお題なのに、みんな積み方が異なるのが面白いところです。

超シンプルに横積みしていく子もいれば、

ちょっとナナメに置くという目から鱗な工夫もあれば、

超システマチックなブロック積みも。

記録度外視で自分のこだわりの積み方をする子もいれば、

オシャレな積み方と記録を両立するスゴウデも。

「最初の1本を補強して、積み上げた後に外す」という手法を考えた生徒もいました。

補強自体が楽しくなっちゃって、もはや上に積むなんてどうでもよくなってます(笑)写真じゃわからないけれど、真ん中にたしかに一本立っていました。

たぶん最もうまいのは、ブロック状にぎっちり積んでいく方法なのだと思います。
でも、今までの知見を伝えてその通りにやってごらん、なんて言われても面白くもなんともない。たとえそれが不合理だろうとなんだろうと、自分で考えて自分の方法で積んでいく。むしろ、他の人がやってない方法でやってやる。自分自身の試行錯誤で、ちょっとずついい方法にせまっていくのが面白いんです。

橋づくり

続いて、橋づくり。
グレーに塗られたところに2本置いて、その2本を上空でつなげます。

このお題は、なるべく本数を少なくしていくのが面白い。
そんな意味を込めてプリントに書いたのは、「いくつでつながる?」でした。

みつかったのがこちらの5本。間違いなく最小です。(ピースでおさえてるわけではないですよ!)

と思ったら、別日の授業でまさかの4本達成!
「最初の2本は立てておく」という自分の中に勝手にあった前提が覆り、世界が広がった瞬間でした。

いつもは写真を嫌がる子が、自らマスクを外して記念撮影(笑)

続く中学生。
小学生が4本達成したよ、と伝えると、意地になって3本以下を作ろうとします(笑)1番下の2本を斜めにしないと不可能だとすぐに気付く思考力がさすが中学生。

必死にバランスをとろうと頑張って、ついに2本達成!!

……と思いきや。よく見ると何やらキラリと光るものが。
セロテープを使った完全なズルでした(笑)

そこからは屁理屈合戦。

「紙を折ってはいけないとは言われてない!」

「紙を持ってはいけないとは言われていない!」

などなど(笑)
型にハマらない柔軟さが素敵です。

最小性を目指す生徒もいれば、綺麗さや頑丈さにこだわる生徒もいてもいい。こだわりはプリントに書いて設定しておくのではなくて、自分でみつけてもらおう。僕たちがするのは、その背中を押すための声かけだけ。
そう思って、途中からタイトルを「いくつでつながる?」から「つなげ!」に変更しました。

すると、こんな見事な橋が出来上がり!

さらに、どれだけ長い橋を作れるかに挑戦する2人組も。

最後には、机の端と端に立てた2本を繋ごうという激ムズミッションに自ら挑戦!
あとちょっとのところで達成こそしなかったですが、一旦別の場所で半分の橋を作ってから挑戦するという慎重っぷりが最高でした。

最小性であれ、橋の長さであれ、作品性であれ、そこに「こだわり」があれば必ず、生徒たちの中で試行錯誤は生まれていて、その試行錯誤こそが宝なのだと思います。

屋根をつくれ!

最後のお題は「屋根をつくれ!」

こんなシートを作りました。
横置きした2本のカプラの上に、屋根を展開していくお題です。

出来上がった作品たちがこちら。

そう、記事の最初に載せていたのは、このお題の作品なのでした。
つまり……たった2本のカプラが土台となっているのです!

最初はお題達成のためになんとなく積んでいっていたのが、次第に自分のこだわりをみつけ、熱中していく。出来上がった作品以上に、生徒たちのそんな様子が素敵でした。

作品性を追求する生徒たちの傍ら、橋に引き続いて最小性を追求する生徒たちも。

バランスを取るためにどれが必要でどれが不必要か、2ヶ所に必要なおもりをどうにかして1本のカプラで賄えないか……などなど、超高度な試行錯誤をしていました。

1つ目の中学生クラスで出来た記録10本を次のクラスの生徒が上回り、現在最小は9本。果たしてこれが最小なのか……興味は尽きません。

さらに、まさしく「屋根」を作った生徒も。

たった2本のカプラの上に、気づけばA4の紙がすべて隠れるほどの大きな屋根の出来上がり!

「2本から紙へ!紙から机へ!机から教室へ!教室から日本へ!」と騒ぐ周りの生徒に乗せられて、「次は机を全部隠す!」とどんどん広げていく彼女の姿は、もはや職人の風格すら宿っていました。

もちろん、屋根づくりにもトンチ組はちゃんといましたよ。
「全お題トンチでクリアする」と息巻いていました(笑)

それぞれのこだわりとゆるやかなつながり

みんなで教室に集まって、それぞれがカプラを積み上げる。
そこにあったのは、それぞれのこだわりとゆるやかなつながりでした。

全体ワークの良さが、他人から思いもよらないアイディアをもらえることだとしたら、個人ワークの良さは自分のこだわりにとことんこだわれることです。
ストイックに最小性を目指す生徒の隣で、トンチを効かせてズルしようとする生徒がいて、そのまた隣にそれぞれの作品性を追求する生徒がいて。

でも、その子たちがゆるやかにつながっている。同じ時間、同じ空間、同じお題を共有しているからこそ、インスピレーションをもらったり、仲間の集中する姿に背中を押してもらったり、お互い出来たものを見て賞賛しあったりして、自然と影響しあう。
だから、家で1人ではやろうと思わないことも、教室ではできてしまう。

象徴的だったのはこちらのハート型の屋根。

この屋根がハート型になっていったのは、途中で隣にいた生徒から「ハートの下の部分みたい」と言われたことがきっかけでした。

1人で作った作品だけど、でもみんながいたからこそ出来たものでもある。
それぞれの作業をしているのだけれど、ゆるやかに、でも確実につながっている。

そんな生徒たちの姿に、「教室で授業することの意味」が少し見えたような気がしました。


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