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たった数か所の〇〇〇〇

 誰にでも避難場所は必要だ。そして最も安らげる場所が自宅や自室とは限らない。

 例えば俺は数か所の避難場所を持っている。その場所は絶対に誰にも教えられない。ある山の中に俺がとても好きな場所がある。そこには「ヤマタノオロチの胴体の太さってこんな感じかな?」というような巨大なフレックス管が無造作に捨ててある。雨さえ降っていなければ数時間かけて山に分け入りそこまで行き、その中でしばらく眠る。とても静かで、本当に落ち着いて眠れる俺の避難場所。

 それは別にどこかのなぜか鍵さえかかっていない屋上でもいいし、ネットカフェで一晩ほど好きな漫画を読むような時間でもいい。全力で泣き叫べるような場所でもいいし、ひとりで真っ暗なところに一日中飲み物を入れたペットボトルだけを横に置いて過ごしてもいい。時にはそういったことも必要なのではないかと考えている。

 旧石器時代からやっていそうな自分以外誰も客がいない喫茶店でもいい。ひたすら己自身や、目の前の問題と向き合いギブアップするまでソファーに座り込んでもいい。そのうちに真剣にやっているのが馬鹿らしくなる。

 それはなるべくなら日曜日にするべきことだ。それで心底迎えたくない月曜日の朝が少しだけ楽に迎えられる。

 何よりも危険なのは一晩中恐ろしくて逃げだ出したくてたまらないようなことと全力で対峙することだ。

それを続けるとといつのまにか禿げてくる。俺のように。

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