記事紹介:「副作用のない」新型コロナ「ワクチン」の持つ意味とは
今日は下記の様な記事を見掛けたので紹介しておこう。
最近、国内の研究グループが、PEGなどの製剤化物質を使わない「裸」のmRNAワクチンを開発したというニュースがちらほら見られている。この記事では、その詳細について分かりやすく書いてくれている。
現在新型コロナウイルスに対して使われているRNAワクチンには記事にある通り脂質をベースにした構造体をRNA製剤の外殻として用いている。これが免疫原性を持つことで炎症反応などの原因になるという側面もある。そこで、可能な限り余分な成分を除いてRNAワクチンを作ったというのが今回の研究である。
記事では、その余分な成分に伴う悪影響は無くなっていると紹介されている。これはその通りだと思うが、核酸ワクチンとしての根本的な問題である、特有の免疫学的機序については勿論解決されていない。むしろ、RNAが裸で投与されれば、核酸認識シグナルによる免疫の活性化はより効率的に生じる可能性もある。
また、記事によると、投与方法や安定性の観点から、このRNAワクチンは皮膚の樹状細胞のみを標的としていて全身性の影響は出ないとされている。これは一定の安全性に繋がると考えられる一方で、この原理であればそもそもRNAワクチンを使う必要が無いのでは?と思う。既存のタンパク抗原ワクチンであっても同様の反応は生じるからだ。もっとも効率的なクラスI経路によるCD8T細胞の活性化や、核酸そのものによるアジュバント活性等、効果を上げる機序はあり得るのだが、これはそのまま自己免疫疾患の発症リスクにも繋がるというのは今までに説明した通りである。いずれにしても、安全性の観点から言って、核酸ワクチンを使用するべきではないという評価は変わらないだろう。
核酸ワクチンに関しては、自己増幅型の核酸ワクチンなども含めて様々な発展形が開発されている。これは企業が良い機会とばかりに普通では使えない様な危険なモダリティを実用化してしまおうという狙いによるものである。だが、核酸ワクチン本来の危険性を無視し、周辺の課題解決によってさも優れた製剤であるかの様に宣伝し、無知な一般人を騙す事は許されるべきではない。まずは本質的な核酸ワクチンのリスクを正しく評価し、その上で核酸ワクチンに用いられる副成分のリスク評価も個別に実施した上で、どの程度の安全性向上が見込まれるのかという議論が初めて成立する。記事の様な一側面だけを切り取った議論に科学的な価値は無いのだ。
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