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学術まとめ③腫瘍壊死因子・TNF

~Tumor necrosis factor~

1)TNF-α

・TNF-αは主にマクロファージから産生される炎症性サイトカインで、好中球、単球、線維芽細胞、T細胞、NK細胞、マスト細胞などから産生される。

・TNF受容体はTNFR1(p60)とTNFR2(p80)が存在するが、TNFR1は全身の多くの組織に構成的に発現しているのに対して、TNFR2は何らかの刺激を介して免疫系の細胞に発現する誘導型の受容体である。TNFR2においては細胞内に存在するデスドメインを欠損している一方、TNFR1はデスドメインを介していくつかのシグナル伝達分子とDISC(death-inducing signaling complex)と呼ばれる複合体を形成し、タンパク質分解酵素であるカスパーゼ8の活性化を介して自発的な細胞死を誘導する。

・TNF-αはマクロファージやNK細胞を活性化する。

・血管内皮細胞や血管平滑筋細胞に作用して、PGI2、NO産生を介して血管透過性亢進、血管拡張、血圧低下をきたす。

・内因性発熱物質作用がある(cf:IL-1、IL-6、IFN-γ)。

・低濃度で単核食細胞からのIL-1、IL-6、TNF-α産生を誘導する。

2)TNF-β(Lymphotoxin)

・TNF-βは主にT細胞や白血球から産生される。また、上皮細胞や線維芽細胞、内皮細胞からも産生される。

・TNF-βはTNF-αと同様にTNF受容体を介してシグナルを伝達する。

・産生される量は少なく、局所的に作用し、基本的にTNF-αと同様の生理活性を示す。

3)BAFF:B cell-activating factor belonging to the TNF family(BLyS:B-lymphocyte stimulator)

・BAFFはTNFファミリーに属するサイトカインで、主に樹状細胞、単球、マクロファージから産生される。B細胞からは産生されない。

・BAFFの受容体はBAFFに特異的なBAFF-Rのほかに、同じくTNFファミリーのAPRIL(A proliferation-inducing ligand)とも親和性のあるTACI(Transmembrane activator and CAML-interactor)、BCMA(B cell maturation antigen)が知られている。BAFF-RはAct1、TRAF3を介してシグナルを伝達する。

・B細胞の分化、生存、増殖に寄与する。抗体産生を促進する。

・TACIを介して、活性化T細胞にアポトーシスを誘導する。

・BAFFのノックアウトマウスでは、脾臓においてT2(transitional type 2)B細胞の著しい減少が観察される。

・BAFFを過剰発現させたマウスではSLE様症状を呈する。

4)FasL:Fas ligand

・FasLには膜結合型と可溶型が存在し、可溶型はDISC形成を起こさない。主に活性化T細胞やNK細胞、胸腺細胞などが発現する。

・FasL受容体はFasとDcR3(Decoy receptor 3)である。可溶型のDcR3は抑制的に機能する。

・Perforinシステムと共にCTLの機能を担う分子であり、病原性微生物に細胞死を誘導する。

・胸腺細胞や活性化T細胞に細胞死を誘導し、免疫寛容に寄与する。

・FasやFasLの欠損はSLE様症状を呈する。

5)RANKL:Receptor activator for nuclear factor k B ligand

・RANKLは骨芽細胞や線維芽細胞のほか、T細胞や樹状細胞、表皮細胞などの細胞膜上に発現する。また、可溶型RANKLとして放出される。

・RANKL受容体はRANK(Receptor Activator for Nuclear Factor k B)であり、TRAF1、2、3、5、6を介してシグナルを伝達する。

・破骨細胞の活性化因子であり、関節リウマチなどへの関与が示されている。

・樹状細胞の成熟、活性化に寄与する。

・T細胞の活性化、成熟に寄与する。

6)TRAIL:TNF-related apoptosis inducing ligand

・TRAILには膜結合型と可溶型が存在し、様々な組織で発現している。活性化T細胞のほか、NK細胞、単球、樹状細胞、好中球にも発現がみられる。

・TRAIL受容体はTRAIL-R1 (Death recepter 4: DR4)、TRAIL-R2 (Death recepter 5: DR5) 、TRAIL-R3 (Decoy receptor 1: DcR1)、TRAIL-R4 (Decoy receptor 2: DcR2) 、Osterprotegerin (OPG)の5種類が知られている。DR4とDR5はFADDを介してCaspase8依存的に細胞死を誘導する。DcRは細胞死を誘導しない。また、OPGはTRAILの抗アポトーシス作用に関わっていると考えられている。

・主に腫瘍細胞や形質転換した細胞に細胞死を誘導する。FasLと異なり、正常細胞にあまり作用しない。

・活性化リンパ球の細胞死を誘導することで免疫寛容に寄与している。


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