コンサルではなく、一緒に考えるパートナーとして。白糠町との歩みを振り返る | 白糠の挑戦事例に関して<前編>
前回の記事ではイミューの企業理念やその成り立ちについて聞きました。今回はもうすこし踏み込んだ具体のお話、北海道白糠町での挑戦事例についてです。
▼前回記事
ー今日に至るまでに、極寒ブリ、ホッキ貝といった自社ブランドの他、シラリカブランドプロジェクトで扱うシラリカいくらやししゃもの事業継承など様々な事業を展開している、今やイミューの代表事例と言える白糠町での活動ですが、どういった経緯で町とのお付き合いが始まったのですか?
最初は弊社からの電話です。白糠町のふるさと納税に取り組む姿勢が素晴らしく、2021年に私たちからお電話で営業をさせてもらったところから始まりました。当時役場の中でふるさと納税に関するトップの立ち位置にいた佐々木さんという方にお世話になり、町に頻繁に出向くようになりました。
ーお話だけを聞くと、とんとん拍子に事が進んだように聞こえます。
そこにはタイミングの妙みたいなものもありました。先程お話しした佐々木さんが、ちょうどその時に定年退職を控えていたんです。イミュ―としてお声がけした年には既に白糠町はふるさと納税の寄付額で全国4位だったのですが、担当者が変わってしまうとそれまでに積み重ねてきたノウハウも同時に失われてしまいます。そうならないように佐々木さんが、今後の運用をどうするか悩んでいたタイミングということもあって、運よく自分たちに白羽の矢を立ててくれました。
ー役場の外の人間を後継者に選ぶのは、だいぶ思い切った選択ですね。
イミュ―のスタンスを気に入っていただけたのは大きかったかもしれません。コンサル事業って、どうしても外部から口出しするだけの人のように聞こえてしまうんですけど、私たちはコンサルではなくパートナー事業と呼ぶように、最初から内部の人間として動こうとしてきました。中の情報を知った上で、さらに踏み込んで、主体的に実働まで進めていく姿勢が良かったんだと思います。
WEBマーケティングのコンサルだと、アカウントだけを見て「アクセスを伸ばしてください。」みたいな、言っていることは分かってもやり方が分からないようなことを伝えてしまう場合があります。イミュ―ではそういう投げやりなスタンスではなく、「直近イクラの数字が落ち込んでいるが、どんなことがあったのか」「生産者との会話の中でこのイクラの強みは、鮮度とそれを実現する製造オペレーションなのではないか」「2パターンの画像を制作するので、どちらが良いか事業者含めて考えましょう」など、事業者さんに対して課題を見せつつ、一緒に考えるパートナーとして社員を提供して解決に向けて取り組むスタンスで歩んできました。
それとこれは自治体あるあるみたいな話なんですけど、3年ごとくらいでジョブローテーションが発生するんですよね。この制度は特定の企業や団体との癒着を防ぐためのものですが、1,700を超える自治体同士が競争するふるさと納税市場では、ノウハウの蓄積は不可欠です。こういった事情から、外部企業を巻き込んでノウハウを積み上げることは、自治体のそもそものあり方とはズレがあるものの、結果を残すためには必要な視点だと思っています。
ー自治体内部の方では解決出来ないような課題に対して、その方々と変わらないスタンスで働きかけ続けて来たんですね。
私たちはそのスタンスですが、白糠町さんを始め、イミュ―が関わる自治体の皆様にもそう思っていただけていると嬉しいです笑
◇ ◇ ◇
ーでは次に、白糠町での事業の変遷を教えてください!
2021年にお付き合いが始まってから最初に取り組んだことは、ふるさと納税の寄付者さん達に関するデータの分析やそのレポート、そこから導き出したアドバイスの提供といった周辺業務でした。その中で白糠町役場の方々の寄付者さんに対する取り組みの姿勢に魅了され、訪問するたびに感じる雄大な自然と豊富な資源を目の当たりにしていく中で、この地でブランドをつくっていく構想が出来上がっていきました。
ー1番最初につくったブランドは何ですか?
2022年の9月から実施した秋鮭と極寒ブリです。これは当初、「寄付者と育てるふるさと納税返礼品」と題して、寄付と商品へのフィードバックをもらいながら改善スピードを高める開発施策の中で、テストマーケティングの意味合いを持って創ったブランドでした。この施策では、開発中の商品を寄付者さんに向けて先出しすることで、寄付者さんとしてはブランド価値が付く前に安く商品を試すことができ、僕らは食べた方々から感想をもらうことでスピーディーに商品開発のPDCAを回して、その姿を白糠町の事業者さん達に見てもらうことが目的だったんです。
しかし驚いたことに、施策の中で準備した秋鮭とブリのそれぞれ約200食が、たった1週間でなくなりました。
ー凄まじい数字ですね。
元々あった白糠町産品への信頼に加えて、特に極寒ブリの持つストーリーが良かったことも理由としてあると思います。白糠町では元々ブリは捨てられていた魚で、それがブランド化されることでほぼ未利用と言える資源の活用が出来るようになり、地域にも実際に食べた方々にも喜んでもらえるものになりました。
また、この経験はイミュ―としての自信や事業の加速にも繋がりました。地域でのブランド創りはずっとやるつもりでいたものの、異業種へのチャレンジだったこともあり、その道筋の不透明さから、思ったように進まない検討事項が山積みでした。ですが、このテストマーケティングにより、白糠町がいろんな側面から事業を応援してくれていること、ふるさと納税と1次産業である水産加工を掛け合わせた新規ブランドは注目度を高めることができることなど、様々な学びを得ることができました。
これを受けて、翌2023年9月に実際に工場を設立し、今日に至るまでにホッキ貝やシラリカいくらといった別の食ブランドの創出や、白糠で60年続いた伝統製法で造るししゃも会社の事業継承などを進めてきました。
ーこの過程でぶつかった困難などはありましたか?
慣れない土地での未経験の業態へのチャレンジだったので、困難はつきものです笑 例えば先程お話しした工場の設立では、地域ごとの考え方の違いみたいなものに悩まされました。
1つ例を挙げると、本州の業者さんに図面制作や機器の手配をお願いしていたのですが、実際の現場稼働をするゼネコンは地元業者でした。本州チームが描いた図面では、魚を捌く加工場に部屋を温めるオイルヒーターはないのですが部屋を冷やすエアコンはある、ゼネコンチームはエアコンは不要だがオイルヒーターは絶対必要だと主張していたんです。これは、魚を扱うことや北海道の寒さに対する認識の差から生じた食い違いなのですが、悩みながらも周りのサポートをいただき解消していきました。
このような中で5月の頭には出来るはずだった図面が、5月中旬・下旬と遅れ、結局出来上がったのは6月でした。9月の1週目にはブリの水揚げが始まるため、当時はかなり焦っていましたが、見かねた現場の職人さんたちのご尽力のお陰で8月中に竣工することが出来ました。夜帯や土日も含めての作業でしたが、地元では大変珍しい光景だったそうです笑
―北海道ほど本州と気候や文化が違うと、予想だにしない差があるんですね。結局オイルヒーターとエアコンはどちらを採用したんですか?
結局両方設置しました笑
ーよそ者が地域に入り込んでいくからこその壁ですね。続く中編では、白糠町での事業で経験した、印象的なエピソードを聞きました。
▼中編記事はこちら
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株式会社イミューでは「地域に根を張り、日本を興す」というコンセプトのもと、地域資源のブランド化による産業創出を行っています。事業に関するご相談や取材、一緒に働きたいと思った方はHPからお気軽にお問い合わせください!
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