秋晴れに思う

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義父から電話があった。
他愛のない父の話を上の空で
聞いていた。
脈絡のない話に相槌を打ちながら
唐突に、旧友が思い出されて、
はやくこの電話を切って、
彼女と話をしたくてたまらなくなった。
父との電話を切るとすぐに
友人にかけた。
いつも忙しく働く彼女は、
数年前から潔くスマホを持たなくなり、
LINEやSNSは繋がらない。
だから専らメールや手紙で
やりとりしていた。
電話するのは
滅多になかったが、コールすると
すぐに繋がった。
友人は仕事を休んでゆっくり
療養しているのだと
ゆっくりした口調で話した。
違和感を感じた。
その違和感は話しているうちに
段々と胸騒ぎにかわった。
ほんとうに元気なの?
すぐにでも会いに行きたいと思った。



10日後、彼女の訃報を知った。
学生時代に昼夜問わずつるんだ
今も大事な友達だ。

新幹線に飛び乗って、会いに行く。
2年ぶりの再会だった。
冷たくなってしまったからだは、
穏やかな表情のまま動かなくなり、
文字通り抜け殻となった。

3年半の闘病だったという。
家族と恋人以外は、
誰も彼女の病気のことは
知らなかったそうだ。

本人の苦悶、残された両親の喪失感、
あらゆる思いが胸を打った。

永遠に、若いままの彼女を
わたしは決して忘れないだろう。
ふとしたきっかけで思い出しては、
恋しくなって、泣きたくなるだろう。

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