見出し画像

2:37

2:37分に誰かが自殺する。

そんな場面からこの映画は始まる。

校庭の木の緑、生徒たちの声、息が詰まるような苦しみを抱えている人たち。

障害を持ついじめられっ子、ゲイをカミングアウトした少年、美しい音色でジムノペディを弾く恐るべき秘密を持った少年。

現実離れしたように見えるが、実際に存在する彼らをあまりに残酷に描く。


見終わって時間が経つが、未だに覗き込んでしまった闇と叫びが頭の中から離れていかない。

ジムノペディの連弾の音、話し声、耳を塞ぎたくなる叫び声に産声、生きてきた音たち

ハサミ、お姉ちゃんの子供

呼びかける優しい声、

あなた、大丈夫なのね?

同じ声が、トイレで小さく、何度も祈りを捧げる

助けて、私を



自殺を描く作品は多い。でも、大抵の作品ははっきりとした理由を示すものや、美化されている表現が見受けられる。
この映画は、19歳が撮っていて、友達の自殺や本人の自殺未遂の経験がもとにされている。だから、あまりにリアルだ。
痛みと苦しみと虚無感が肌で感じられる。
文字通り、いや、文章で表せない、あまりにすごい映画だった。
自殺してしまう人は、どうして死んでしまったのだろうか、という疑問を残す人が多いかもしれない。
SOSが出ていない、というのは最終段階だと思う。絶対に救えないと言いきれてしまうかもしれない、本当に残酷だけど。
死んでしまったら、やっと認識される。
彼らと交わせただろうほんのひと言、それを一生十字架として背負うのだろう。
どうして、ケリーは死んでしまったのだろう。
それはずっと解くことのできないミステリー。
監督自身が失った友達に課せられた最後の宿題になったのだろう。

The elephant in the room
というフレーズがある。
部屋にゾウがいる、そんな異常事態なのに誰もそのことに触れない、見て見ぬふりをする、という意味だ。
人は皆、こんなフレーズに思うところがあると思う。
同じ部屋に、半径一メートル以内に、涙を流して苦しんでいる人がいても気づかないのだ。
私だって気付かれたことがないし、たぶんいろんな苦しみに気づかないできたと思う。
優しい人や自己犠牲的な人がもしも周りにいたら、声をかけてあげてほしい。お願いしたい。
何かが変わる、変わらないは置いておいて、とにかく周りの人に注意したい。
私やあなたの周りにもケリーがいるかもしれない。

この映画、どうにかして自分でリメイクしたいと強く思った。素晴らしい映画だった。
心の奥底から、監督とケリーからのメッセージに尊敬の意を表したい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?