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春を愛さない人

春が嫌いだ。
過ごしやすく陽気なのは理解している。長く厳しい冬が終わり春の訪れを感じると心地よい。

でも、私は春が苦手なんです。
それは私の持病である統合失調症が大きな原因かなと思います。個人的に問題があるのです。

1番大きな要因は私が春に統合失調症を発病したからでしょうか。この病気の不思議な所は発症した季節がまた来る度に苦手だと言われる方が多いことです。私の場合はそれが、たまたま春でした。

体や脳が覚えているのでしょうか。22年前の春、私は精神科閉鎖病棟の隔離室にいました。隔離室とは保護室とも呼ばれ布団とトイレしかないワンルームくらいの部屋です。発病して興奮した私はそこで落ち着くまで隔離されました。今でも覚えてます。とても寂しくとても苦しく、とても不安でした。まだ16歳の私はその独房で辛い日々を過ごしました。

7ヶ月の治療を経た私は退院してもう1回高校2年生をしました。病気になって2回目の春は友達もおらず一人で家と学校を往復していました。

二学期になり少しずつ友達も出来て心配してた成績も良く順調に生活していきました。しかし、私は進学校のため、毎日5時間以上自習室に通い勉強していたのが精神的に強いストレスとなっていました。その年の春に進級が大きな刺激のトリガーとなり春に統合失調症が再発してまた入院となりました。

迎えた高校3年生の春。クラスメートは卒業式でみんなで卒業しましたが、私は保健室登校で単位がとれなかったので、春休み一人で足りない単位を担任の先生とマンツーマンで授業を受けて一人で卒業式をしました。

私の高校はミッションスクールなので校長はブラザーでした。校長室で校長から一人で卒業証書を貰い、普段誰も入れないブラザーの宿舎に入れてもらいお茶を飲みながら校長と少し話をさせて頂きました。寂しさもあり不安もある卒業でした。もちろん季節は春です。

その後、東京の大学に進学しましたが、そこでも春に統合失調症が再発しました。

父に説得されました。

「レベルの高い大学を出て大企業で働くのはお前の病気では難しい」と。

心がぶっ壊れました。

その後から、私は何をしても暗闇で心にポッカリ穴が空いたまま生活するようになります。このエッセイを書いてる今も心に穴があります。

私が再発する時は決まって春でした。次第に春が嫌いになってきました。春の独特の匂いも嫌いになってきました。

確か予備校時代でしょうか。同じ寮にいた男友達と仲良くなり1年ほど楽しい時間を過ごしました。

私は偏差値の高い大学の進学を諦めて芸術の感性を磨こうと大阪の芸術大学の進学を決意しました。友達からは言われました。

「遠くに行っても友達でいよう」

私は悲しくなりました。過去の経験で遠くに行ったり物理的な距離があると自然と疎遠になることを経験していたので。

「また遊びに来るよ」

そう言って私は大阪に行きました。もう会うこともほぼないかもしれないと思い不安になりながら大阪に向かったのも春でした。

新しい大学生活は楽しいでした。
難しことを考えず芸術の世界は新鮮で、学生生活を満喫しました。

でも卒業式の春頃になると私はまた寂しい気持ちになりました。あぁ、また春が来たなぁと。桜散る中、卒業式を迎えました。

そこから社会人になった私は、病気が悪化して苦しい日々を過ごし限界が来ました。それも……残念ながら春でした。卒業したら大学の友達も疎遠になっていきました。

私が中学の時に流行ったGLAYの歌の中にBELOVEDという歌があります。

"やがて来る それぞれの交差点を 迷いの中 立ち止まるけど それでも人はまた歩き出す"

GLAY『BELOVED』より引用

春は交差点なのです。直進する人もいれば左に曲がる、右に曲がる人もいます。

私は大阪の大学に行くまでの間、就職先で倒れてた期間、交差点をクルクルとひたすら回ってました。なので大学を卒業して一度入社してまた、社会人として復帰するのにそこから3年ほどかかりました。

春とは切ない別れの季節でもあり、嬉しい新しい出会いの始まりでもあります。私の場合は出会ってきた様々な人との別れが辛い季節でした。

だから、私は春を愛さない人なのです。梅の花を撮るのは好きですが春を愛していません。


それでも人は歩き出すのです。
生き続けるのです。

私は桜も大好きです。趣味がカメラなので桜も撮りに行きます。


美しい桜は一瞬で散ります。

美しさの中に儚さがあります。まるで人の命の輝きのように感じます。儚く一瞬で散るから美しさが増します。これは日本人の独特の侘び寂びの文化だと思っています。

皆さんにとって春とはどんな季節でしょうか?

春を愛する人は素敵ですよね。
なんかセンチメンタルな気持ちになるんですよね。

あなたはどうでしょうか?
今日の最高気温は20度で陽気な春日和となるでしょう。

今年の春であなたは新しい出会いや別れがありますか?

後で後悔しないよう今を精一杯生きて友達を家族を大切な人としっかりと思い出を作っておいてください。

そして、春になる度に桜の花びらを見ながら思い出してください。

思い出は永遠です。消えません。

あなたの人生が例え交差点で立ち止まっても。

振り返らずに前に進めますように。



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