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秋の風にあの日の匂い

肌寒い風を感じるとあの頃の記憶が戻ってくる。

秋の思い出は何故だか色濃くって、鮮明に思い出される。

紙工場に端くれをもらい帰った通学路。
遅い時間に誰もいない廊下を歩いた文化祭前。
あの子を迎えに自転車でかけた東大阪の路地裏。
狭い夜の町を飛び出して二人でみた夜景。
唐突に行った富士山から見た夕日が沈む雲海

大人になってからというものの、忙殺されて思い出という思い出はないけど、あの頃のきらめくような心はいつだって舞い戻ってきて、ありがた迷惑にもセンチメンタルな気持ちにしてくれるわけだ。

少しだけ目を閉じて感傷を見つめてみる。

「あーあ、大人ってつまんねぇな」

と、この歳になってなお、あの頃に取り残された自分が顔を出してくる。

「全部やめちゃったらどうなるんだろ?」

責任なんてなかった子どもの頃が羨ましくなる。

こんな時は、そう、いつもこう考える。

おれにとって「幸せとは」

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