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デリヴァーションズ(M・グールド作品集)/カンザス大学ウインドアンサンブル

ふと、M・グールドを聴きたくなりました。
2013年に生誕100周年を迎えたM・グールド。アメリカでは今回紹介するCD以外にも彼の作品集がリリースされています。1枚は、アメリカ海兵隊バンド(切実に欲しい)ともう1枚はアレンタウン・バンド。知らないだけで、他にもリリースがあるかもしれません。
今回の盤はNAXOSからリリースされており、現在も比較的容易に入手できると思います。
演奏しているのはアメリカの名門大学バンドであるカンザス大学ウインド・アンサンブル。NAXOSに収められる大学バンドの演奏はもう一歩、という印象がありましたがこの盤は金管楽器の安定した響きが印象的で、鑑賞用としても充分に満足できる演奏です。
現指揮者のP・ポピエルの就任前で、S・ウェイスという方が指揮を務めています。
1.自由へのファンファーレ
2.セント・ローレンス組曲
3.ジェリコ狂詩曲
4.ソロ・クラリネットとバンドのための「デリヴァーションズ」
5.交響曲第4番「ウエスト・ポイント」

自由へのファンファーレは1942~43年にシンシナティ交響楽団の指揮者ユージン・グーセンスから委嘱され作曲されたファンファーレのようです。因みに他に17曲委嘱され、その中には有名なコープランドの「市民のためのファンファーレ」やP・クレストン、H・ハンソン、W・G・スティルなど吹奏楽作品を残している作曲家の曲もあります。華やかでリズミカルなパッセージが金管楽器を中心に奏でられ、1分半という時間をあっという間に駆け抜けます。
セント・ローレンス組曲は吹奏楽曲で唯一グラミー賞作曲賞にノミネートされた曲のようで、商用水力発電の供給を記念する式典のために作曲されました。全体的に素朴で親しみのある曲が並びます。終曲のマーチなど聴きごたえがあります。
ジェリコ狂詩曲は原曲が短いあの歌を飽きさせずに上手く展開していきます。途中木管など跳躍が難しそうな連符など技術的にも歯ごたえのある曲。今、こうした曲を格好良く鳴らしてくれるバンドが日本にあるでしょうか・・・
デリヴァーションズがこの作曲家の本領発揮といったところでしょうか。1955年にベニー・グッドマンの委嘱でつくられた曲。M・グールドの多才さを痛感します。終楽章のスリリングな展開などゾクゾクします。
最後の曲は交響曲の4番。この曲を最初に聴いたのが東京佼成WOの青ジャケのロメジュリ。2楽章の冒頭、クラリネットが誤ってリードミスをしてしまうのですが、その演奏が染みついているので、ミスしない演奏に何故か違和感を感じてしまうのです(苦笑)カンザス大学は弱奏部なども余裕があり、和声感など他のCDでは聞き取りづらい部分もしっかり聞こえ曲を味わうことができます。
デリヴァーションズのような曲からクラシカルな語法を駆使した交響曲まで幅が広い、M・グールド。幼いころから作曲活動を始めていたようで、吹奏楽作品でもその才能が遺憾なく発揮されています。全体を通してカンザス大学WEの演奏がとても良く、他のNAXOSのリリース作品の再リスニングやKLAVIERからリリースされているCDを購入したいですね。
全米の大学バンドも沢山あるので、どこかでまとめてみたいなと思ったり(思うことだけは無料ですから・・・!)

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