conference war
「まだ木曜って信じらんない…!」
パンツスーツの女が不機嫌に席に座る。
オフィス街の外れにある喫茶店。最近流行りの映えなんてものはなく、客層はコーヒー1杯頼んでタバコを嗜むようなジジくさいこの喫茶店で男女2人が面と向かって座る。
「…遅かったな残業か?」
??:そうよ、いいよね○○は!今週のノルマ達成してるから定時で帰れて!!
残業の苛立ちをぶつける。
○○:残業の愚痴聞く前に、まずは落ち着けよ…久保
メニューを手渡す
久保:それもそうね、すいませーん!
店員:はい。
久○:オレンジジュースください(…オレンジジュース)
店員:ふふふ…かしこまりました。
○○に微笑み、一瞥し去っていく。
久保:…待って○○、あの店員さんあんな顔できんの?
○○:そりゃ接客業だし、できんだろ
久保:むー、ノリ悪いなぁ笑
○○:久しぶりの定時上がりを邪魔したのは誰だ?
久保:…私です。
シュンとする久保
○○:で、何があった?
久保:いや…ね。オレンジジュース来てからにしよーかなって!
間延びさせたい時に限って注文は早く来るのだろうか。
店員:オレンジジュースです。
手際よく、コースターとジュースを置く。
久保:ありがとうございます!
店員:ごゆっくりお過ごしください
微笑み去っていった
久保:…ねぇ、笑ってくれた!
ストローをさしながら、嬉しそうに言う
○○:そりゃあ人だから笑うだろ
久保:そっか
オレンジジュースを2吸いする
○○:で、落ち着いたか?
久保:あ、うん。
○○:なんで木曜日に呼び出した?
久保:それは…明日開催ができなくなりそうだったから…。
○○:そっか、了解
荷物をまとめて、テーブルに千円を置く○○
久保:待てぇぇい!ねぇ、○○唯一の同期からの金晩の誘いってそんなもん?!
○○:うん、逆に6年もよくやってんなって感じだ
久保:6年か…。
○○:なんだ?今日の久保変だぞ
久保:そ、そう?
○○:さしずめ、岩本辺りに合コンに誘われたのか?
久保:え、なんでわかんの?エスパーですか?
久保の素っ頓狂な回答を無視してコーヒーを飲む○○
○○:簡単な推理だよ
KOOLマイルドに火をつけて続ける
○○:今日残業してるから、明日予定できたんだろうなって
○○:恐らくそれは久保ができる奴の雰囲気を見せておきたい相手。
○○:後輩連中でおれの予定より優先しそうな奴を考えたら岩本か阪口だろ?
久保:ま、参りました…
机に頭をつけて項垂れる。
○○:いいじゃん合コン笑岩本達なら慣れてるだろ
久保:私は慣れてないの…。
○○:普通にしてればいいじゃん、可愛いんだから
久保:…えっ?可愛い?私
○○:うん、久保は可愛いよ笑
無邪気な笑みで、久保の顔は真っ赤になる。
久保:で、でもね!蓮加たちはね
〜〜
岩本:史緒里さん〜!明日って暇ですか?
久保:え?あ、明日?
岩本:はい!明日19時半からです
久保:空いてるよ?どうしたの??
岩本:明日、珠美と合コンするんですけど…誘ってた子が彼氏にバレちゃって…。
久保:人が足んない訳だ笑
岩本:そうなんです…
久保:そんな時こそ、先輩に任せなさい笑
久保:蓮加の彼氏候補とキチンとくっつけてあげる笑
岩本:久保さぁぁん
抱きつく岩本を悪くないと頭を撫で回す
〜〜
久保:こんなこと言っちゃったらしっかりしなきゃじゃん…。
○○:そうなのか?
久保:蓮加が頼ってきたんだからしっかり応えたいの!
久保:だから○○!合コンの作戦会議しよ!!
○○:…はぁ。なぜおれなんだ…。
諦めてタバコに火をつける。
久保:だって○○、美波さんと付き合ったの合コンでしょ?
○○:齋藤次長から聞いたのか。
久保:まぁね笑
久保:○○課長!合コンでの立ち振る舞いを教えてください笑
○○:こんな時だけ、役職で呼びやがって。
○○:まぁ、合コンでしくじってその後めんどくさいのもやだからやるか
乗り気になる○○
○○は、カバンから小さいノートを取り出す。
○○:まず、その会は何時間の店だ?
久保:3時間だね
スマホで予約されたコースを確認する。
○○:誰だその店抑えたやつ…
頭を抱える○○
久保:相手の男性だって蓮加言ってた。ダメなの?
○○:2点だな
○○:理由は2つ、間延びしすぎるのとボロが出る。
久保:○○だったらどうする?
○○:1時間半だな、1次会なんざ商談で言う商品説明なんだよ笑
久保:んー、短くない?
○○:そこだ。相手にもっと居たいって思わせれればどうだ?
久保:次がある。
○○:ご名答。しかも開始が19時半そこから3時間足してみ?
久保:22時半
○○:そう。もう1つはその時間だ
○○:例えば21時から2件目行こうってなるのと22時半から2件目行こうってなるのどっちが行きたい?
久保:20時かも
○○:だろ?22時〜23時の間に終わる会ってのは基本的にそのまま解散になる。
久保:まぁ、私的にはそれの方が良いんだけどね笑
○○:久保って今フリーだろ?あの取引先と別れてから
久保:あー、相手の男性陣顔濃くてタイプじゃないから笑
本心とは違うことをいけしゃあしゃあと告げる
○○:そゆことな、まぁ岩本と阪口は行けるなら2次会まで行っちまうだろうな
久保:かも…、そんな時って帰っていいのかな?
○○:絶対に帰れる一言教えてやる
○○:明日、お兄ちゃんが来るから。
久保:はぁ?
○○:大真面目だぞ、
○○:ポイントは、男側が合コンで何を目標にしてるかを見抜け。
久保:相手のニーズってやつね笑
○○:そうだ、男なんてあわよくばワンチャン狙ってる。おれも合コンなんてあったらそうだ
久保:うーわっ
○○:これが現実な
久保:じゃあ盛ってこられたら無理じゃん笑
○○:だから、お兄ちゃんなんだよ
久保:あー、家族で男だから?
○○:そー、ワンチャンやり捨ての可能性のある女と居て兄貴と鉢合わせなんてしてみ?
久保:酔いが冷めるね笑
○○:まぁ、それでもしつこいのはいるけど。そうなったらおれに連絡しな助けてやる
久保:頼りになるぅ!
○○:まぁ、ここからはパターンAとパターンBで考える必要があるわけだ。
勿体つけながら、○○は追加でアイスコーヒーを頼む。
タバコ休憩を挟みながら、ノートにAと書く。
○○:パターンA、合コンに誰かのタイプがいた場合
久保:ほう
1人頷く
○○:この場合は、徹底してその子の株をあげろ。
○○:アイツら2人のいい所なんて、語れるだろ?
久保:任せなさい!
胸をどんと叩く
○○:無い乳張るな
久保:あるわ!目立たんだけじゃ!
○○:はいはい、その時に気をつけるのは…相手が食いつく褒め方だ。
久保:そんなん出来たらやってるわぁ!
半ばキレ気味に言う久保
○○:だから、お前は係長なんだよ
久保:そこまで言うならあんたはどうすんのよ、私を褒めなさい
女王のように○○に無茶ぶる
○○:まぁ、そうだな。まず仕事が丁寧だな。商談のクロージングや取引先のグリップに関して右に出るやつは居ないだろ。
○○:新規開拓昔は苦手だったのに、今じゃガンガンテレアポに訪問も行って案件とってくるだろ。そんな所尊敬してるよ笑
仕事面で自分より上を行く○○からの褒めに照れる久保
○○:今気分いいだろ?
久保:今ならあんたに、2万までなら出すね
○○:でも、これを俺らの仕事を知らねぇやつが聞いたらどう思う?
久保:…訳わかんないかも
○○:そう
○○:じゃあ、おしゃれだとか部屋が綺麗とかどうだ?
久保:みんながわかる!
○○:その通り、ここに例えば漫画のキャラなんか絡めて話せれば最高だな
久保:それめっちゃ受けよくない?
○○:あぁ、で最後は絶対にゴールはアイツらのどっちかに決めさせろ
久保:どうすんのよ?
○○:はぁ…。お前本気で営業か?相手に話させろ男に質問するんだ〜君は漫画とか読む?みたいな感じだな
○○:男側の話が一段落した頃に、お前が席を立てばいい。
久保:自然と話はどちらかに行く!
○○:その通り、まぁ3時間のうち1時間はこの時間だろうな
久保:長い…。
○○:だからナンセンスなんだよ、拘束時間の長い店を選ぶのは
久保:そういう事ね
○○:あと、ちゃんと両方にやれよ。贔屓は後々厄介だから
久保:任せて!
○○:次は、Bパターン。テンションが下がる会だった時だ
久保:そうだね
○○:こうなったら相手側に話をさせろ。男側の自慢話なんかがいいな
久保:え?だるくない
○○:ダルいけど、無で3時間の方がだるいぞ
久保:うわぁ、途中で帰りたくなる…
○○:それこそ、岩本の顔に泥塗る
久保:そっか
○○:そういう時に使えるのが、男側の過去の恋愛話だ
久保:興味無いやつの1番興味無い部分じゃん
○○:一応営業だろ?仕事しろ
久保:えー、どうすんの?
○○:〜さんって絶対女の子泣かせて来た感じするぅ。だな
久保:あー、
○○:実際に泣かせてるやつなら、周りが色々話してくるし、童貞なら自分のピュアな話しかしなくなる笑
久保:きっつ…
○○:でも、頷いて一息着くタイミングでオウム返しで返せば?
久保:話さなくてよくなる!
○○:そう、地獄の3時間が終わるな笑
○○:会が終わったら、お疲れ様ですって言って3人で帰れ笑
久保:1番平和ね
○○:これでいいか?
○○はタバコに火をつけた
久保:まだよ、1番の問題点があるわ…
本日1の真剣な顔をする久保
○○:なんだよ
久保:ゲームとかするんでしょ?そんなゲームやったことない。負けたら飲まされる…。
○○:あぁ、店どこだ?見せてみ
スマホを渡すように手を差し出す
久保:はい
警戒心なく、食べログのページのまま○○に渡す
○○:あー、そんな展開はないな
久保:え?
○○:今回、女性陣の会費は?
久保:3000円だったかな
○○はほくそ笑み久保に告げる
○○:ここ、1人8000円はするから笑
久保:なんで知ってんの?
○○:齋藤さんによく連れてって貰ったんだよ。
○○:行ったらわかる、ここでゲームなんて出来ない
○○:アイツらが久保を誘ったのも納得だ笑
久保:え?詳しく教えてよ
○○:あの2人の友達って、結構ギャル多いのよ
久保:確かに、インスタとか見てるとそんな感じする
○○:恐らく、今回の女の子のキャンセルは店の敷居が高くて岩本達が拒否ったかもな
久保:ドレスコードってやつ?
○○:あぁ、そんな店でゲームなんてしてみろ出禁だぞ
久保:耐えたわ
○○:あんま飲みすぎんなよ、ここの白ワインマジで美味いから
久保:ダメダメ、そんなこと言ったら樽ごといくわ
○○:まぁ、店のセンスはあったって事だ楽しんでこいよ
久保:○○は、明日は何するの?
○○:久しぶりに、齋藤さんと白石の姐さんと可愛くねぇ後輩と飲みに行くかな笑
久保:え!行きたすぎる泣
○○:残念でしたー笑
さっとジャケットを着て立ち上がり、レジへと向かった。
久保:待ってよ!
小走りで後を追いかける
決戦の金曜日、久保はちゃんと合コンで戦えるのか。
To Be Continued…?
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