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ヘルパースケルター4

深夜2時
路地裏奥、人が1人通るのが精一杯の路地に立つBARに男は居た。

??:・・・ギムレットくれ。

マスター:かしこまりました。
オーダーを受けた、マスターは手際よくジンとライムを合わせてシェイクする。

その音がなりやむ時
カラン・・・BARの扉が開く。

○○:ここに居たのか…唯。
男は、先に座る男に声をかける。

唯:・・・1人になりたかったんだよ

○○:お嬢も秀も待ってる。この1杯だけ飲んで行くぞ。

唯:○○、お前も付き合え。マスター同じのを彼にも
マスターは頷き、また慣れた手つきでシェイクする。

唯は、涙を流し○○を睨みつけ告げる
唯:なぜ悠哉さんをやった・・・?

○○:・・・月は2つもいらないからだ。
○○の前に置かれたギムレットを一気にあおる。

○○:唯、お前がどちらに着くかはお前が決めろ。ただあいつらを傷つける気ならお前でも容赦はしない。

黙ったまま、唯はギムレットを飲み干し
唯:俺はやるよ。お前らのつながりのが強いよ。

2人は店を出て会社に戻った。

~~
つい数時間前の事を思い出すと、寺田は吐き気を催して何度も倒れそうになっていた。

隣の席で仕事をする伊藤は毎度心配の目を彼女に向ける。
伊藤:蘭世ちゃん大丈夫?

寺田:・・・すみません、この見積もり出来てますから置いときますね。
忘れる為に目の前の仕事をこなしていく。

~~
寺田と伊藤が奥宮渡の社葬開催における見積もりや各種手配にくれる頃、上谷兄弟と北見は喫煙ルームに居た。

悠樹:社葬ってなったら、また人が死ぬね笑
オプションパープルに火を付けながら言う

北見:・・・笑い事じゃないっすよ、しかも今回は奥宮さんの葬式。何か起きても普通じゃない。
悠樹からオプションを奪い、火をもらう。

悠樹:あとは、渡さんの後任が誰かだね。
悠里に目を向けて話をする。

悠里:・・・後任は若月さんだろうな。
銀ピースの灰を落とす。

悠樹:また意外な人選笑
笑いながら、悠里に告げる。

悠里:あの人も、親父や渡さんに近いからな・・・。

悠里:それに○○さん達とも

北見:俺、あんま知らないんすよね。若月さんのこと。
天井を見上げながら告げる。

悠樹:あー、そっか北見とはほぼほぼ関わり無いもんな。

悠樹:若月唯・・・。俺とアイツで組んでやっと勝てるって人かな笑

北見:なんすかそれ、化け物じゃないですか

悠樹:まぁ、○○さんや秀一さんとは違う種類の化け物だな笑

悠樹:・・・最近は出社してなかったようだけどね

悠里:今は引きこもりの人事労務室の室長だ。

北見:また、閑職ですね。

悠里:あー、あの時に責任を取るって言って唯さん自ら志願したらしいよ

悠樹:唯さんに○○さん、またあのコンビが見れるよ笑

北見:コンビ組んでた俺からしたらなかなか複雑っすよ笑

3人はそれぞれ、タバコを灰皿に捨てて部屋を出た。

~~
社長室

秀一:唯!

唯:久しぶり秀!・・・お嬢
呼び慣れない、お嬢呼びに頭をかく。

白石:麻衣でいーよ!
唯の肩をバンバンと叩いた。

○○は1人微笑んでその光景を見ていた。

唯:ってぇ相変わらずのゴリラっぷりだな笑

白石:あぁん?

○○:やめとけって笑勝てねぇから
4人は束の間の再会を楽しんだ。

秀一:・・・本題に入ろうか。唯

白石:今回呼んだのは、他でもないの奥宮さんの仕事を引き継いで欲しい。

白石:・・・特に奥宮さんが行っていた月の仕事を片付けて欲しいの

唯:いーよ笑そんな固くなる?笑
へらへらと即答した唯

唯:・・・今日の社葬で誰が敵かわかるよ。

白石:・・・あぶりだしてどうする気?

唯:当たり前に消してやるよ、お前らの敵は俺の敵だから

唯:○○!渡さんのクライアントリスト俺に渡せ、今から確認すっぞ

○○:あぁ、付き合うよ。
○○と唯は2人で社長室を出ていった。

白石:・・・ねぇ、あの2人変わったね。

秀一:あぁ・・・けど根本は変わんねぇよ。俺らにできることはあいつらを信じるだけだ

白石:秀一は変わらないで・・・。あの頃みたいにみんなで笑ってたいよ

秀一:・・・できるよ。
出ていった2人を遠くに見ていた。

~~
元々、奥宮渡が使っていた部屋に唯と○○は居た。
唯:・・・あのおっさん隠しクライアント多すぎだろ

○○:先代組のクライアントをほぼほぼ引き継いでる訳だからこうなるわな。

唯:1人でどうにかとは思ったが、ここが出てくるなら話は違うぞ・・・。
唯は、1つのクライアントに丸をつけた。

○○:・・・ここは潰しきりたいが、2人でやれるか?

唯:奴さんも大事にはしたくねぇはず・・・。ただそれでも消したいなら悠樹達借りてぇな。

○○:あぁ。
○○は、唯が丸つけた田代組の文字を見つめて頷いた。

○○:静かには終えれそうにないな・・・。

~~
○○達が奥宮の遺したクライアントを整理する頃、北見と高宮は奥宮渡の遺骸を引取りに来ていた。

高宮:おかしなもんですよね、警察が何も手だしてこないって
単純な疑問を北見にぶつける。

北見:お前、知らなかったのか?

高宮:え?何をですか?

北見:うちの月の仕事半分はお国からの依頼だよ。

為政者には邪魔者がいる訳で、戦国時代のように大手を振って人を処理する訳にはいかない中、処理をする人が必要な訳で月組とはそういった表に出す訳にはいかない依頼をこなす為に設立された部隊であった。

高宮:お嬢が聞いたら卒倒しそうすね。

北見:・・・先代組の負の遺産だよ
奥宮の部屋を訪れた。2人は先に来ていた岩本に声をかける。

北見:岩本、進捗は?

岩本:綺麗なものですよ、あの人がやったって見る人見たら1発

北見:このまま手続きまで、崎と済ませてしまえ。

岩本:あー、了解

高宮:悠哉さんの方はなかなかでしょうけどね。

北見:あっちは悠樹さん達が済ましている。一応息子だしな手続きも完了したとの連絡も受けたよ。

高宮:さすがっすね、じゃあ俺らもお暇っすね。

北見:そうだな、帰って寝て明日は昼からでいい。

岩・高:はーい
北見は2人を残して部屋を出た。

~~
○○達が、クライアント整理を行っていた頃。寺田達は見積もりを終えていた。

伊藤:終わったぁ。
のびをしながら告げる。

寺田:この会社取引先多すぎですよ…。
全取り引き先に、社葬開催の案内を送った寺田は疲れから伸びをする

伊藤:…今日は帰りなよ。明日はお昼からでいいからねうめには言っとく

寺田はその言葉に従い、荷物をまとめてお疲れ様ですと残して部屋を出たが、奥宮さんの部屋の明かりがついていたので挨拶をと思い中に入った。

寺田:…お疲れ様です、お先失礼します。
中に居たのは、○○と定例会の時に○○と話していた男性だった。

唯:…君か!寺田さんって

○○:知り合いか?

唯:いーや、俺のひきこもり期間邪魔した子笑

○○:…紹介するよ。若月唯、明日から奥宮さんの後任だ

寺田:…源泉の回収ありがとうございます!

唯:いいっていいって、ちょっと脅せばすぐ出したから笑
寺田は、悠樹に似た雰囲気の男だと思った。

○○:…寺田今日はお疲れ様。

寺田:ありがとうございます…。

○○:夜道は危ない、伊藤と一緒にタクシーで帰れ
○○の気遣いに伊藤を呼びに行こうとしたら、唯が伊藤を連れてきていた。

唯:タクシーは○○もちだってー笑
寺田は、この2人とも優しさを素直に言えないのかと思った。

タクシーに乗り込んだ2人はそれぞれに行き先を告げて走り出した。
伊藤:…ねぇ、蘭世ちゃん。辞めたりしないよね…。

寺田:えっ…?そんなことないよ笑

伊藤:僕が初めて月の仕事を見た時、ここは危ないから逃げようって思ったんだ。

寺田:…うん。

伊藤:その時にさ、北見さんに言われたんだよね。あの人達の1面だけ見ないでってみんなの本質は違うよって…けどやっぱり怖くてさ笑

寺田の心の奥をつく怖いという単語をさらに奥に飲み込んだ。

伊藤:けど、みんなと関わって仕事したりご飯行ったりしてみんな優しさに触れて欲しいかな笑

伊藤:…だからさ、明日もよろしくねって今日か。ははは

寺田は伊藤の言葉に頷いて、小さい声で明日も頑張りますと告げた。

タクシーはタイミングよく、寺田の家の前につき、寺田はタクシーから降りて伊藤に告げた。
寺田:…明日もお願いします!

内側から伊藤は笑顔で手を振った。

夜明けも近い頃、上谷兄弟は上谷悠哉の火葬を済ませて話していた。
悠樹:…終わってみればあっけないな笑

悠里:あぁ、だが最後まで俺らでは勝てなかったな…。

悠樹:1回くらい…腹割って話して見たかったかもね

悠里:…そうだな。なぜ俺たち兄弟だったのかもな…。
血の繋がりは無く、親子の思い出のほとんどが流れる血であったとしても、呆気ない親の死は2人の胸をうち涙を流した。

悠樹:…これで終わるな

悠里:あぁ…俺たちは俺たちの道を…。

悠樹:まずは家族が欲しいな…。

悠里:その前に彼女だろ

~~
伊藤たちを見送ってから2時間後、○○達は奥宮渡のクライアント整理を終えた。
○○:引きこもりに、この業務量は酷だろ笑

唯:なーに言ってんの、引きこもりだからこの時間起きてんだよ笑
2人は笑い合い、タバコに火をつけた。

唯:…とりあえずここは喫煙可な

唯:てか、時代は電子タバコな!まだチャコルフィルターに火付けやがって

○○:何言ってんだ、ガツンと一撃来るのは紙巻き限定の特権だ!

唯:だあほ、こういう時はおっさんを偲んで電子にしろよ!

○○:こういう時こそ、ポリシー曲げずに吸うんだよ

2人は、夜明けまで渡の思い出を話し合い泣いた。 明日、この2人は社葬に参加しない。奥宮の残した負の遺産に蹴りをつける為2人は参列しない事を決めた。 それは、社葬会場に血の雨を降らせない為にいや、奥宮渡の名を汚させない為に決めた2人の決意であった。

~~
○○と唯が渡を偲ぶ頃、秀一は??を取り逃した高層ビルの屋上で人に会っていた。

秀一:…お久しぶりです。先代。

先代:呼んだら来たな!秀一!!

先代と呼ばれた男は黒の喪服に身を包み髪を逆立て居た。

秀一:亡霊からの連絡、来ないわけがないでしょう。ご丁寧に狙撃手付きで

先代:ははっ、麻衣は元気か?

秀一:麻衣には会わせませんよ、後で泣かれるの目に見えてるんで

先代:お前は、麻衣のこと好きだなあの頃から変わんねぇ…お前ら3人は

秀一:それが家族の絆すよ

先代:絆で飯は食えねぇよ笑

秀一:俺はあんたに教わったんすけどね

秀一:…あんたは死んだままで居て欲しかった。なぜこのタイミングで戻ってきた!!

秀一は先代に掴みかかる。躱した先代は続ける
先代:渡と悠哉が死んだんだ…。

先代の目はあの頃と変わらない真っ直ぐな目だった。
秀一は戸惑った。

先代:お前に太陽の業を受ける覚悟があるか?

先代:業を背負うってのは、生半可じゃねぇ…残った2人いや、悠樹達もどんどん堕ちていくだろうなそれを救うことはお前にできるか?

秀一:それが俺の役目だ、何も持たねぇ俺を綺麗なままにしてくれている俺ができる唯一の恩返しなんだよ!

先代は満足そうな笑みを浮かべて続けた。
先代:俺は、お前に期待している…お前はそのままでいろよ

それだけを言い残し、男はビルから飛び降りた。 秀一はその場から動けず、男の遺した業という言葉が秀一の脳内で反芻し続けた。 秀一は赤マルに火をつけ、一息付き漏らした。

秀一:…あんたに言われなくても守ってやる皆を…。

~~
翌日○○、秀一、唯の3人は喪服に身を包み社内の喫煙ルームにいた。
○○:俺と唯は社葬には参加しない…

秀一:わかった…麻衣には上手く伝えておく。でも先に会場で線香は上げろよ

○○:…あぁ。

唯:会場はそのままにしといてよ、次の日は俺らかもだから笑

秀一:今からでも遅くない…悠樹達を使えば…。
縋る声で2人に言う秀一

○○:かもな、けどこれは俺等でやりてぇ…もう悠樹達に業を背負って欲しくない

秀一:…業か

唯:安心しろって、俺ら2人で行って死んだことないじゃん笑
唯はあっけらかんと秀一に告げた。

○○と唯が喫煙ルームを出たあと、秀一は1人2本目のタバコに火を付けた。そんな時に秀一に声をかける人がいた。

「お疲れ様です。秀一さん」

秀一:お疲れ様。梅ちゃん

梅澤:…お疲れ様です。煙やなのでここで

秀一:すまねぇ、でどったの?
秀一はできるだけ普段の顔と声で答えた

梅澤:秀一さん…私…ここに居て良いんでしょうか?

秀一:どうした?北見と喧嘩でもしたか?

梅澤:…昨日、私だけは渡さんが亡くなった悲しみよりあっくんが帰って来た嬉しさの方が勝ってしまって…。こんな汚い感情のまま皆と一緒にいていいのかなって

秀一:それだけ北見を愛せてるって事だろ?

梅澤:…でも久保だったら。

秀一:あいつになる必要はねぇよ、梅ちゃんは梅ちゃんらしく居たらいいんだよ
タバコを消して、梅澤の頭を撫で

秀一:ここにいちゃダメなやつなんて居ねぇよ。梅ちゃん居なくなったら麻衣も悲しむぜ?

秀一が出ていった後梅澤は1人嗚咽混じりに泣いた。

「…大丈夫?」

梅澤:…山崎さん、お疲れ様です。

山崎:お疲れ様。

梅澤は、挨拶だけして去ろうとしたが山崎が止めた。
山崎:…少し話さない?

山崎は梅澤から離れたところで緑マルに火を付けた。

梅澤:…山崎さんって、吸ってましたっけたばこ

山崎:あそこにいたら必然的にね。

山崎:…今回はごめん。美波のきもち考えずに北見を頼っちゃった。帰ってこないかもしれなかったのにわがまま言っちゃった…。

梅澤は何も言えなかった。だってそのわがままを北見が受け入れたから

梅澤:…前から聞きたかったんですけど、なんであの時私を応援してくれたんですか?
好きだったのなら、思いを伝えれば良かったのにだったら私はこんなに醜い感情を持たなかったのに…と心の中で告げた。

梅澤は、北見と山崎の関係性が羨ましかった。北見を始め梅澤自身も仕事が第1で生活のほとんどを仕事の事を考えてしまっている。 その仕事のほとんどを北見と共に過ごす山崎に対して梅澤は嫉妬していた。 山崎は梅澤の知らない北見の顔をいっぱい見てきている。感情を沢山共有してきている。

山崎:…だって北見のこと相棒にしか見えなかったんだもん
山崎のタバコの灰が落ちた

山崎:…よく言えばだよ、私だけじゃなくて北見もそうだと思う。…もし私と北見が付き合ってたらずーっとお互い仕事モードになっちゃうよ

山崎もまた、梅澤に嫉妬していた。北見が自分に見せる顔は同僚の顔を超えて来ることは無い。けど梅澤に見せる顔は愛する彼女に向けての顔だから。

梅澤:…そうだったんですね。てっきり1回くらい付き合ってたのかと思ってました。

山崎:ふふふ、1回だけね本気でホテルに誘ったよ笑そしたらなんて言ったと思うあいつ?

山崎:お前とやったら、俺の中の何かが終わる気がするって笑…普通に振られちゃってるから私

山崎:だから美波が北見のこと好きって言った時、北見は同じ事言って振るんだろうなぁって思ってた。振られたら私はここを辞めてただの山崎怜奈としてあいつと付き合おうって思ってたの…

山崎:けど、北見は美波を選んだ。その事実は変わらないよ
山崎は消えかけのタバコを灰皿に捨てた

梅澤:山崎さん…
この人は本気だったんだ、そして本気で北見の幸せを願ってるんだって思うと自分の感情が綺麗になった気がした。

山崎:だから、美波は美波のままでいて久保みたいにも理々杏みたいにもなる必要ないから!だって…私の初めて恋した人の愛する人なんだから

~~
梅澤と山崎が、女同士の友情を深めている頃奥宮渡の社葬会場は刻々と完成に近づいていた
北見:この花は、あそこに。んでこの弔電の順番かえて!

業者:はい!
本職でない北見の指示だが、余りにも完璧なため皆従う。

そんな中、白石麻衣は完成された祭壇の前で渡に語り掛けていた。
白石:…渡さん
名を呼びかけて、思い出を紡いでいく。

白石:兄貴達と、悠哉さんと4人でずーっと飲み歩いてたよね…。あんまりお酒強くないくせに3人に合わせて飲んでさ…。潰れて家に来る度に…麻衣ー!秀一はいい男だ良い旦那捕まえたなって…。また皆と一緒に飲んでるの?

白石:○○と唯と私が初めてお酒飲んだ時も渡さんが一緒だった…。その時もいつも通りに麻衣はいい女だって、兄貴と喧嘩した時も…
声がつまり、泣いた。 余りにも綺麗な泣き顔は作業する業者の視線を奪う。

唯:…麻衣。

○○:…大丈夫か?

唯:渡さんは、麻衣の笑った顔が好きなんだ…だから泣くな。…あの時もお前が泣くからあの人は止まったんだぜ…。

白石:…唯、○○…。

○○:お前に泣き顔は似合わねぇ…あのおっさんよく言ってたろ?だから、な
○○と唯は泣きじゃくる麻衣をなだめる2人の顔は、あの頃と全く変わらなかった。2人がどんどん遠くに離れて行っても変わらない絆はあるって白石自身信じたかった。

○○:落ち着いたか…。唯、行こうか

唯:…あぁ
2人は祭壇に並び手を合わせ渡に別れを告げる。

2人の背中を見つめていた麻衣はまた涙を堪えた。
最後の別れを終えたふたりは麻衣に告げる。

○○:じゃあ、行ってくる

唯:またな、

本当は止めたかった。けど2人にはもうこの言葉しか出てこなかった。
白石:いってらっしゃい、絶対帰ってこいよ!
去っていく2人を見つめて告げる。

~~
会場を出た○○と唯は黒のプリウスに乗り込み走らせた。
目的地は渡の隠しクライアントであった田代組。
国内最大規模の暴力団でその中で渡は犯罪コンサルタントとして介入していた。田代組としてもKYGとしても今回の渡の死によって出たくもない錆を出しかねなかったのだ。

○○達は田代組と書かれた屋敷の前に車を停め、拳銃と日本刀を持ちインターホンを鳴らした。
インターホン:もしもーし♪おっそーい笑

後ろから聞こえる断末魔の叫びを聞き、2人は屋敷に乗り込んだ。 玄関では7つの死体、進むごとに酷くなる血痕は常人では耐えれるものではなかった。

唯:はははっ、これはこれは俺らの考えることはお見通しって訳?

○○:…行くぞ!あいつの首根っこ抑えてこっちに戻す!!
○○達は、走って声のまだ聞こえる方に進んでいく。

「ギャーっ」ズシュッ
「動くんじゃねぇっ!」

??:…遅っ笑
ブシュッ

○○:よぉ派手だな…翔!!

翔:あーれ?遅くない?笑てか、2人できたんだ、てっきり悠樹さん達がいると思ったよ。兄さん♪

○○:…渡さんを殺ったのは、お前か翔

翔:そだよー、姉さんの指示でね笑

唯:…おいおい妖怪大戦争かよ

翔に飛びかかる唯
翔:おおっ…いきなりすぎ笑目的忘れてるっしょ笑

唯:てめぇ諸共殺ってやんよ!
襲いかかる田代組の連中もなぎ倒し唯は翔に襲いかかる。

○○:おいたが過ぎた、それにもう回収しているのだろ?渡さんが関与したものの証拠は
○○も既に3人を斬り、翔に詰寄る

翔:ピンポーん♪もうこんな感じかな
スマホから写真を見せるスマホには、○○達のターゲットであった田代組の組長が息絶えた姿で映っていた。

翔:もう、終わってるんだよね笑寝てたの?

唯:舐めた口聞きやがって!
唯は左袈裟から翔のスマホを切り上げた

翔:…もう!危ないなぁ笑ちょっと黙ってて
翔は距離を詰め唯の胴を峰打った。

○○達が翔と対峙していた頃、寺田と伊藤は奥宮渡宛の弔電を捌いていた。 伊藤:これは、多すぎかな笑先代の時より多いよォ…。

寺田:それだけ奥宮さんは凄かったんですね

伊藤:そだねうちで1番まともな人だったから笑

1度しかあったことない寺田も納得せざるを得ない発言だった弔電を掲示板に貼り終えた。
2人は社葬前に渡の祭壇に手を合わせる 。
その後ろに2人の同僚が立っていた

岩本:2人とも遅いー

??:のんびりしすぎンゴ

伊藤:ごめんって、珠美

伊藤:あっ、事務部のメンバーの珠美ね

珠美:よろぴくー

寺田は、軽いこのギャルに戸惑っていた
寺田:はっ、初めまして…。

阪口:よろよろ〜

寺田:あの…阪口さんは出勤されてました?

阪口:事務部なのに忘れられてるぴえん

ぴえんを地で使う人いるんだと戸惑っていると北見さんと高宮くんが来た。

北・高:お疲れ様

全員:お疲れ様です

高宮:げっ、阪口までいるじゃん

阪口:さすがにいるっしょ、何言ってんの?草生える

高宮:てめぇと岩本が揃ってるとろくなことないんだよ…。

北見:高宮、お遊びはここまで。もうみんな中に入っておきなあと20分で始まる

北見たちは、寺田たちを中に入れた後受付台に立っていた山崎と梅澤に声をかけた。
北見:2人ともお疲れ様。

山崎:お疲れ様、2人は中に入らないの?

高宮:お疲れ様っす、俺たちは滞りなく社葬を行う為にお外で待ちですね笑

梅澤:あっくん、危ないことしないでよね。

北見:はは、この体じゃ無茶は出来ねぇよ笑

昨日悠哉に付けられた傷はまだ閉じきっておらず、喪服の下の白シャツには血が滲んでいた。
北見:それに…○○さん達が先に片付けているよ

梅澤:…だったら、こっち手伝ってよ。今でこれってことはお焼香の時もっと来るよ

~~
会場内には、たくさんの参列者が居た。
最前列には白石さんと秀一さんを見つけたけど○○さんも悠樹君達も参列してなかった。

寺田:…○○さん達居ないんだね。

伊藤:そうみたいだね。忙しいのかもしれないね。

2人で小声で話しているとつかつかとお坊さんが入ってきて社葬が始まった

~~
○○:…翔!!
唯を峰打ちで気絶させられ、○○は翔に飛びかかる。お互い抜き身で刀を合わせ命のやり取りを行う。

…パァン。

1発の弾丸が2人の合わさった刀を砕いた。
??:2人ともその辺になさい

翔:はーい笑姉さん

○○:絢音なのか…?

絢音:○○…久しぶりね

○○:貴様に家族面されたくねぇ…!

絢音:悲しいわ○○…。私はこれだけ愛しているのに

○○:何しに来た、俺に殺されに来たのか?

絢音:ふふふ、昂る○○に殺されるのも悪くないわ…。でもねもっと深くなりなさい。まだ淡いわ

○○:うるさい!

絢音に向かい切りかかるひらりと躱した絢音、躱されバランスを崩した○○の耳に近付け告げた。
絢音:…孝介も玄太も○○を狙ってる…。

絢音:私と一緒に逃げよ…。

○○:その選択肢が1番ねぇよ、あの人たちが麻衣たちに手ぇ出すなら俺が先にやってやる。あいつら置いて逃げれるか

絢音:…○○。

○○:…ここでお前と会ったことはお嬢達には言わねぇ…だからここで手打ちにしようぜ

絢音:えぇ…わかったわ。翔!帰るよ

翔:はーい!じゃあ兄さんまたね♪…次は壊しちゃうからね。

絢音:…○○!史緒里のことすまなかった。

○○:っ…早くいけ!!

絢音たちは消えた

○○:ってぇ…。
左腰を抑えて蹲る。絢音に躱された際にアイスピックで刺された傷であった。 ○○はその場で倒れて意識を離した。

翔:兄さんは死ぬかな?笑

絢音:…これで死ぬなら○○はその程度よ
2人を乗せた車は、スピードを上げて夜の街をかけていく。

~~
奥宮渡の社葬は粛々と執り行われ、来場者によるお焼香の段取りとなった。 高宮:…。焼香にこんな物騒なのはいらないっす

??:…
男の腰には短刀とダイナマイトが刺さっていた。

高宮:疑わしきは罰す!
男の側頭部を蹴り取り押さえて連れていった。

焼香は順序よく進む中、上谷兄弟が焼香に顔を出した。

北見:お疲れ様です

悠樹:お疲れ様、状況は?

北見:1名、不審者はおりましたが他は異常なしです。

悠里:…北見、異常大ありだぞ
悠里は自らの位置より7つ前の女性を指さした。

悠樹:北見、秀一さんにバレるなよ…

悠樹達は、焼香の列を離れて女が焼香を終えるのを待った。
女が焼香を終え、社葬会場を出た所で悠樹が声をかけた。

悠樹:弟さんに挨拶はいらないっすか?笑…日芽香さん

中元:うん、今日は元彼にお別れ言いに来ただけだから…
振り返り悠樹に告げた。 悠樹は、何も言えず帰らせた

~~
唯は気絶した体を戻して起き上がった。
唯:…○○!
倒れている○○を見つけ、駆け寄った。

唯:…やべぇな
血は流れ唯の手を汚した。

○○:大丈夫だ、それより…唯お前は無事か?

唯:…喋んな!
唯は○○を肩に担ぎ田代組を後にした。

社葬は、少しの澱みをうんだが総じて滞りなく終えた。 予想された隠しクライアントに関しては○○達いや、翔によって壊滅的なダメージを受けており参列する余裕など無かった。

社葬を終え、奥宮渡の父母に火葬等の段取りを引き継ぎ社員はそれぞれ会社に戻った。
寺田達も社葬を終えて社に戻ってきた。

伊藤:お疲れ様だったねー皆

阪口:ほんとだよーっ!てかこの後皆でご飯なんでしょハミゴにされてるぴえん

寺田は歓迎会の存在をすっかり忘れていた。
寺田:今日…やるんですか?

伊藤:あったりまえじゃん!ついでにアテンド組もいるよ

阪口:私、明日からしばらく出勤しないしー笑

梅澤:ほんとよ!たまには出社しなさいよね
梅澤が山崎、岩本と共に部屋に来た。

伊藤:梅と崎さんもおつかれっすー笑

山崎:おつかれー、今美波ご機嫌ななめだから早めに潰そ笑

阪口:北見さんに振られたんだー笑

~~
唯は○○を衛藤に引き渡したあと、1人喫煙ルームに居た。

唯:ちくしょう…。翔の野郎!!

「…荒れてますね」

唯:悠里か、久しぶりだな

悠里:…やはり翔は生きてましたか?

唯:お前らから聞いた時は半信半疑だったけどな、アイツめちゃくちゃ強かった…。今のままじゃ…

悠里:…秀一さんからの伝言っす。20時にいつもの店だそうですよ。

唯:報告兼ねてってやつだな、わかったよ了解

唯:…翔の野郎、あれから何人やったんだろうな?

悠里:背負った業は俺ら以上でしょう…。もう私じゃ手も足も出ませんよ

唯:…俺がやるから安心しろ

~~
○○はその頃治療を受けて動ける程に回復していた。
衛藤:この傷絢音でしょ。

○○:さすが、腐っても医者って訳だな。その通りだよ

衛藤:腐ってもは余計だから、でどうするの

○○:向こうも派手に動いたからな、ぶつかることは無いだろう

衛藤:それは、困る!

衛藤:あんたらの治療費で、生活してるんだからもっと怪我しなさいよ

○○:医者の発言じゃねぇ!

「元気そうですね笑」

○○:悠樹、どーした?

悠樹:秀さんから、20時にいつもの店でだそうです。

○○:了解、メンツは?

悠樹:行ってからのお楽しみですね笑

○○:わかった、じゃあな衛藤。ありがとう

衛藤:はーいばいばーい

○○と悠樹は部屋を出て着替えた後集合場所へと向かった。 社葬は終えた。だがそれぞれの因縁の火はまだ燃えたまま今日という日を終えようとしている。 ○○達の答えはまだ見つかっていない

To Be Continued

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