ATTホームワーク用紙

No.3|教育・育児|注意訓練(こども用)の概要

注意訓練を始める前に:注意に関する基礎的な理論

子育て世代のお母さんやお父さんが、子どもに身につけて欲しい能力の1つにあげているものに「集中力」があります。

心理学では、集中力は「注意」という概念で研究が行われていますが、注意とは何なのかと言われると非常に困ってしまう概念でもあります。

子どもの集中力を育てていくには、ちょっと面倒であっても、注意という概念の分類について理解しておくと良いでしょう。いろいろとある分類の中でも今回は「注意の制御(コントロール)」について理解していただけると良いと思います。

まず、注意の分類には「制御性」の分類があります。つまり、注意をどのようにコントロールしているかという分類です。意図的に注意を向けられる能動的なものと、意図しないで注意が向いてしまう受動的なものに分けられます。

急に大きな物音が聞こえたら、その方向に顔(意識)が向いてしまうと思いますが、これは受動的な注意です。反対に、周囲が騒がしくても目の前の友人の話しに耳を傾けている状態は能動的な注意です。自分に関連する情報や刺激については受動的な注意が働きやすいと言われていて、別の刺激や情報に能動的に注意を切り替えるのが難しいと言われています。自分に関連する情報とは、自分の身体感覚(痛み・痒み)や、頭の中の思考、感情などの他には、他人が自分の名前を呼んだ時の声、自分の好きな人(嫌いな人)の姿や声・・などが含まれます。

自分に関連する刺激や情報に注意が向くと(受動的な注意になると)、目の前の集中しなければいけないことになかなか集中できません。また、ネガティブな感情・思考・感覚にいったん注意が向いてしまうと、その感情・思考・感覚はより一層ネガティブになってしまいます(余計に能動的に注意を切り替えることは難しくなります)。そのため、やらなければいけない事に集中するためには、受動的な注意を能動的に切り替えられるようなスキルが必要になってきます。

そのトレーニングとして効果的なのが「注意訓練」という方法です。

注意訓練の概略

今回集中する「注意訓練(Attention Training:ATT)」は、上記に示してきた自己関連刺激へ集中するクセを治すトレーニングです(注意訓練の詳細な方法や理論については、別の記事で説明します)。

注意訓練の方法は簡単です。

今回は小学生のお子さんに実施する場合を想定して紹介しますが、大人でも慣れない場合は子どもと同じ手続きの方が導入しやすいと思います。

まず、集中したい日常生活音を3つほど選びます。最初の1分間は選んだ音のうち1つにだけ集中します。慣れないうちは、いろんな雑念が浮かんできますが、雑念が浮かんだら「音に戻ります」と心で唱えて、集中すべき音に意識を戻します。1分経ったら、別の音に集中します。そして、また1分経ったら別の音に集中するといった具合に、1つの物音に集中するトレーニングを数分おこないます。その次は、これまで集中してきた全ての音を同時に聞くようにします

今回は、小学生を対象にして注意訓練を実施した時のホームワーク課題のサンプルを公開いたしました。ヘッドフォンで視聴していただくことをお勧めします(左右別の音と音量が設定されています)。

【今日のポイント】

自分の感情・思考・感覚にとらわれることなく、集中すべき事に集中する能力は簡単なトレーニングで鍛えられる!

子どもを対象にした注意訓練の研究はまだまだ発展途中ですが、マインドフルネス・トレーニングと類似した手続きが含まれておりますので、感情のコントロールや集中力を鍛えるには良い方法だと思われます(成人を対象にした注意訓練の研究では、抑うつや不安にも絶大な効果を示しています)。集中力は学習や仕事に求められる能力というよりは、自分の感情を安定させるために求められる能力と言えるかもしれません。ちょっとした日々の訓練を行いながら、子どもの集中力を育てていきましょう!

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早稲田大学応用脳科学研究所:客員准教授 |臨床心理士・公認心理師・特別支援教育士・専門健康心理士| マインドフルな子育てや教育をサポートします。 『10代のためのマインドフルネス』監修者/ 『子どものマインドフルネス(合同出版)』執筆中