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命がけで辞書をつくったひとびとの実話『マルモイ ことばあつめ』

自分たちの言葉や文字を使うことが厳しく禁じられていた時代に、命がけで辞書をつくったひとびとの実話に基づく物語。

韓国映画お得意のパターン、だらしないお調子者のおじさんが、言葉を守ろうとする人々に出会い、覚醒していき、やがて自ら渦中に身を投じていく。
こういうのは「パラサイト 半地下の家族」のソン・ガンホ主演の傑作「タクシー運転手」とか、韓国の民主化運動を描いた「1987、ある闘いの真実」とかありますね。「1987・・・」でも、この「マルモイ」でもそんなおじさんを演じたのが、韓国を代表する俳優ユ・へジンです。

そしてもうひとり、 僕が注目したのは、「愛の不時着」で北朝鮮の村の人民班長を演じたキム・ソニョン。なかなかに凛々しい役で活躍してます。彼女はさしずめ「韓国のおばちゃん」代表ですね。最近、韓国ドラマもまたまた人気ですが、この映画にもドラマに登場していた俳優との思わぬ再会も楽しみですよ。

この映画ですが、タイトルのマルモイ、韓国語の言葉=マル、集める=モイからきています。日本帝国主義支配下の朝鮮半島、「創氏改名」という日本名の強要、日本語の強制がおこなわれていたその時に、命がけで朝鮮語の辞書を作ろうとする人々がいました。
当時の朝鮮では標準語がなかったのです。そこで朝鮮総督府の弾圧をかいくぐり、全国各地の方言や言葉を集めて、辞書=標準語をつくっていくのです。どうやってそんなことができたのか。この映画の見所です。

米軍占領下の日本で、日本語が禁止され、英語が強要される、そんなことを想像してみてはどうだろう。

台湾は、日本の植民地支配の50年間により台湾語から日本語が標準語だった。その後、中華民国となり、今度は北京語が日本語にとって変わります。台湾語と北京語はまったく異なる言葉です。現地で、日本語から北京語に代替わりするその瞬間に、青年期を過ごした人の苦心を聞いたことがあります。

言葉を奪うことは、文化を奪うこと、人々の口をふさぎ、心を封じ込めることです。そんなことは結局不可能なのです。

この映画、心がホッカホッカしますよ。


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