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日記 牡蠣の恩返し

日記。


出張で精神が疲れてしまったので、帰りにふらっと実家に寄った。家に着いたと同時に夕ご飯が出てきて、涙が出そうだった。

仕事の愚痴を職場の人に話そうとするとどうしても「自分を棚に上げている」と思われるんじゃないかと考えてしまい、なかなか本当の思いを打ち明けられない。実際棚に上げまくってはいるんだけど、それはそれとして他人への怒りが溜まっているのも事実なので、何も知らない親と話すのは非常に気が楽だった。職場での立ち位置や調和を一切気にすることなく、ただただ目の前に立ちはだかっている怒りを親に話した。ちょっと気持ちが軽くなった。


朝起きたらすでに全員出かけていたが、食卓に「食べていいよ」とのメモ書きとともに母手作りのお弁当が置いてあった。

母のおにぎりってなんでこんなに美味しいのだろうか。うちの母の味になる味の素とか売ってほしい。朝からお腹いっぱいになった。


午後に荷物が届く予定だったので、実家を出て自分の家に戻ってきた。
牡蠣が食べたくて、1週間前に楽天で買ったんですよ、生牡蠣500gを。出張中もずっと楽しみにしていて、帰宅途中にスーパーでポン酢とレモン汁とビールを買いワクワクしながら待ってたんですが、ふとスマホを見たらヤマト運輸から「配達完了」の通知が届いておりまして。

嫌な予感がして配達状況を確認したら、配送先の住所が実家になっており、そのまま玄関の床に倒れこんでしまった。私はこれを楽しみに1週間を過ごし、これを受け取るためにさっき実家から帰ってきたというのに。牡蠣と入れ違いで帰宅してきてしまったショックから、しばらく立ち直れなかった。震える指で母親にLINEを送った。

誤配送牡蠣は実家で美味しくいただかれたらしい。

昨日愚痴を聞いてもらった分のお返しということにして、なんとか精神の安定を図った。うんうん、これは立派な親孝行だ。誰が何と言おうと、親孝行ということにさせてほしい。そうでもしないと己のアホ具合に絞め殺されてしまう。牡蠣と引き換えに、親孝行ポイントと傑作アホエピソードをゲットした。

食卓に残されたポン酢とレモン汁とビールを眺めていたら牡蠣の幻影が見えてきたので、一か八かでスーパーに走った。奇跡的に生食用の牡蠣が売っていたので、想定外の形で牡蠣パを開催することができた。この不運の流れからして「当たり」を引く可能性がよぎったが、今は考えないことにする。


出張中にいろんな人の趣味の話を聞いていたら自分も新しい趣味を作りたくなったので、以前から薄々やりたいと思っていたギターとドールハウスを注文した。

今となっては、自分はどこかで「やらない理由」を探していたような気がする。騒音だの、時間がないだの、あれこれ考えていた時期もあったが、とりあえずやってみて困ったらそのときに考えればいいことだ。「自分には絶対できない」と言ってしまうことが多いな、と気づいて、少し反省した。人生をもうちょっと楽しくするぞ。

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