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レインコートとキンカンとルナのお話

盲導犬のキャリアチェンジ犬のラブラドールレトリバーのルナと一緒に暮らしています。毎朝40分くらい散歩していると同じく犬の散歩をしている人たちと顔見知りになっていきます。

顔見知りといっても、お互い散歩する時間は合う時もあるし、合わない時もありますから、1ヶ月ぜんぜんお会いしないときもあれば、連日会う時もあって、でもそれが普通な感じです。

犬を飼っていればみんなと仲良くなれるわけでもなく、犬同士の相性が悪くすれ違うだけで激吠えするような関係性だと、遠くで見かけたら道を変えたり、止まって相手が通り過ぎるまでリードを短くもってじっとしておくといった、会っただけで「あ、やばい」という顔見知りの方もいます。

そうした顔見知りでボーダーコリーを2頭飼っている方がいて、そのうちの1頭はすごく吠える子でした。散歩の度に道路の対面に渡ったりしていたのですが、ある日、私ひとりでスーパーに買い出しに向かっている時に偶然お会いしたあって、その時はすごく人懐っこくでかわいい犬でした。

飼い主の方も笑顔が素敵なおばさまで、犬は激吠えなのですが、不思議といやな感じがしない方でした。

そうした中で2ヶ月ぶりに激吠えをしない方の1頭と散歩しているその方にお会いしました。

お久しぶりですとお声掛けをすると、いつもの笑顔ではあったのですが、少し寂しそうな表情で挨拶をされました。すると、「○○(激吠えする子の名前)が数週間前に急に亡くなってしまって・・・」とおっしゃったのです。

犬を飼っていたら覚悟はしておかないといけないことなのですが、やはり接点のあった犬が急にいなくなって、もう会えないというのはとても寂しいことです。それを聞いて私自身もすごくショックをうけました。

お話を少ししていたら、「一回しか使っていないのですが、あの子のレインコートをもらってやってくれないでしょうか」「どうしてもそれを見るたびに悲しくなってしまって・・・」と言われました。ルナと体格が同じだったのでサイズはぴったりだと。

ルナはレインコートは持っていなくて、雨の日はいつもずぶ濡れだったので、ありがたく頂戴することにしました。捨てるにも忍びないけど、持っているのもつらい、そんなレインコートのやり取りを通じて、全ての犬の飼い主が体験する別れの悲しい感情を、少しですが分かち合った感じがします。

1人で悲しい感情をうけとめるよりも、こうしてほんの少しずつでも分かち合うことができると、いいなと思いました。

そんなことを感じながら散歩から帰ると、お隣に住む小学生の子がちょうど登校する途中で、その子のお庭でできたキンカンの実をたくさん持ってきてくれました。「ルナちゃんにあげて!」と。前に、散歩の途中でキンカンが大好きなルナがその木の前で動かなくなったことがあって、その時に「この子キンカンが大好きでね(笑)」とお話したのを覚えていてくれて、持ってきてくれたのです。

その子の親御さんともよくご挨拶と立ち話をするのですが、「キンカンができすぎて毎年困っているんだよねー。もらってもらえてありがたいよ!」と言われました。その子のやさしい気持ちや、親の気遣い、そしてルナのとても嬉しそうな表情、そうしたものが交差していました。

こんなことが重なる日があるのだなと思いつつ、ものを通じていろんな気持ちや思いの分かち合いができる、いい一日のはじまりだなと思いました。

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