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悪口への向き合い方

どこからが悪口なのか基準を持てると楽になる

お仕事や日常生活をしていると、人から悪口を言われたり、言ったりすることがあると思います。

自分の心持ちが不安定の時は、何を言われても悪口に感じ取ってしまうことはありませんか?

自分の心の状態で悪口いわれた・いわれなかったを判断するのではなく、何が悪口かと基準を持てると、楽になります。

今回は書籍:悪口ってなんだろう、を参考にしていきます。

本書では、悪口を以下と定義しています。

悪口とは「誰かと比較して人を劣った存在だと言うこと」です。

書籍:悪口ってなんだろうP7から抜粋

「どうしてあの人は、中途採用なのに、細かく言わないと仕事ができなくて使えないわ(笑)」という悪口の中には、発言した人よりも仕事ができないことを言っています。

ちょっとまって、これ悪口じゃなくて事実を述べているだけだよね?高い給料払っているのに使えない人を使えないって言って何が悪いの?

と思った方は生粋のいじめっ子です。今後あなたの発言が炎上する可能性高いですから、この後の話をきちんと聞いてくださいね。

悪口を言うことは、自分が暮らすコミュニティのランキングの中で、自分の方が標的よりも上位に立っているのだ、標的はより下位にいるのだ、ということを表明します。

書籍:悪口ってなんだろうP28から抜粋

先ほどの例文では、自分よりも中途採用をしたあの人は仕事ができない表明をしています。

悪口は、標的のランクを下げ、社会的な立ち位置をあやうくします。その結果、標的となった人物には不都合が生じ、なにかと生きづらくなります。だから悪口は嫌なことであり、不快なことであり、屈辱的なことでもあるのです。そして悪口が悪いのは、そのような序列を作り出し、誰かを劣った存在として取り扱うことは悪いことだからです。

書籍:悪口ってなんだろうP30から抜粋

「どうしてあの人は、中途採用なのに、細かく言わないと仕事ができなくて使えないわ(笑)」と悪口を言っている人は気持ちいいかもしれませんが、それを聞いている会社の同僚や後輩は「中途採用のあの人に関わるとやっかいなことになりそう」と意識的・無意識的に思ってしまいます。

それは思い込みひどいわ、と思うかもしれませんが、「あんな使えない奴と仲良くして、あなたも使えない派なの?」と生粋のいじめっ子は追加して対象を拡げていくものですので、正しい防衛本能だと思います。

悪口を言った人、聞いた人と悪口の不利益はどんどん拡がっていくのです。そのきっかけとなった悪口を言った人は、その根源になります。

悪口は差別的発言の入口だから炎上する

ランクを下げるとありますが、人が意識するランキングは、1.記述のランキング、2.優劣のランキング、3.存在のランキングの3種類あるそうです。

  1. 記述のランキング:身長や体重など単なる事実のランキング

  2. 優劣のランキング:記述のランキングに何かしらの価値が付与されて「良し悪し」「優劣」の意味を持つランキング

  3. 存在のランキング:人間-チンパンジー-ヘビ-なめくじといったなんらかの価値観(例:より人間らしい)に従ってそれそのものに優劣をつけるランキング

「どうしてあの人は、中途採用なのに、細かく言わないと仕事ができなくて使えないわ(笑)」の悪口を分析すると、

中途採用のあの人は、細かく指示する必要がある

であれば悪口ではなく、事実を伝えているだけになります。

しかし、中途採用は細かく言わなくても仕事ができて当たり前という価値が付与されると「どうして/中途採用なのに/細かく言わないと/できない」といった劣った状態の表現が付いてきます。これで立派な?!悪口の完成です。

悪口が炎上するのは、3.存在のランキングに触れる内容になった時です。

(存在のランキングが、)もっと分類を細かくして、人間の中にも段階を見出そうとするのも、ごく自然なムーブかもしれません。人間は人間同士にも「種類」を見出して、この種類の人はこの種類の人よりも上だ、下だと考えてきました。その代表例がレイシズム(人種差別主義)であり、セクシズム(性差別主義)です。

書籍:悪口ってなんだろうP40から抜粋

つまり、「中途採用のあの人は」ならまだ普通の悪口ですが「中途採用の奴らって、なんだかんだいって使えないから再教育必要だよね」とくくっての悪口は差別的な発言につながっていきます。

軽口と悪口の違い

ここまで読んで、せちがらい世の中になったな・・・軽口も言えなくなったのか・・・と思った方。軽口と悪口は全然違います。

二人の間には、お互い思ったことを言ってもよいとする信頼関係があり、片方が片方に命令ばかりする、片方が片方の言うことを一切聞かない、といった力関係の差もありません。こうした二人の間でも、「きもっ」などと言うことは、広い意味では「悪口」に含まれるかもしれませんが、単に「口が悪いだけ」とも言えるでしょう。字面上は乱暴なことばを使っていますが、この程度は「軽口」の範囲です。

(中略)このように長い時間をかけて作った関係性、お互いの人柄や行動への信頼があってはじめて、軽口が成立するものだとも言えます。お互いの立場、お互いのランクの同等さが揺るがないという確信があってこそ、悪くない形でからかったり、揶揄したりできるのです。

すると、そのような関係性がないところでは、軽口がひどい悪口へと簡単に変化してしまいます。「いじり」と「いじめ」の境界線をまたぐことは難しくないのです。(中略)ランクの同等さが保証されないとき、どれほど親しみを込めようとも、発言が人をおとしめる、つまりランクを下げる可能性があるのです。(P52-53)

書籍:悪口ってなんだろうP51-53から抜粋

同等のランクで、かつ長い時間をかけて作った関係性と信頼があって初めて軽口として通用しますが、それ以外は悪口になりえる危険性があります。

つまり、相当な間柄でないと軽口は言えないはずです。自分では軽口と思っていたことは、受け手からしたら悪口になっていたかもしれません。

生粋のいじめっ子のやり方

職場や日常生活にいる生粋のいじめっ子は頭がいいです。間接的に権力を持つ方法を使って、悪口言って当然・言われて当然の雰囲気をつくっていきます。本書には子どものケースで以下のように説明されています。

悪口でも同じことです。子ども同士は同じランクなので、片方が権力者でもう片方のランクを簡単に下げられる、というわけにはいかないかもしれません。

しかし、「Iはきもい」などの発言を、周りが、特に先生や保護者がスルーするならば、「Iについてそれは言ってもよい」という暗黙の許可が与えられてしまいます。

許可は一種のルールです。ルールを決められる人は権力者です。ですので、結局、子どもも間接的には権力者になれるのです。

オンライン上で何気なく誹謗中傷を書き込む人も、自分をランクが上の権力者だとは思っていないでしょう。むしろ、目立っている著名人と比べて、自分は弱者であり、発言に大した効果があるはずがない、と思っているかもしれません。

しかし、誹謗中傷が完全にスルーされてしまうなら、それは「やってもいい」というルールを作り出し、間接的にですが権力を持つことがあります。

書籍:悪口ってなんだろうP68から抜粋

私が出会った、生粋のいじめっ子の実態を振り返ってみると、皆この方法をつかっていました。これはなかなか抗えないものです。

悪口にどう向き合ったらいいのか

それでは悪口にどう向き合ったらいいのでしょうか。悪口を言われた人、悪口を聞いた人、悪口を言う人の3つの立ち位置からみていきます。

悪口を言われた人

悪口を実際に浴びた時の対応として本書では以下の通り述べられています。

すべきことは、同じ土俵/決闘の舞台に上がらないで、人にランク差があることを否定することです。悪口はバーチャルです。ランキングは幻に過ぎません。(中略)容姿がどうだ、能力がどうだ、年齢がどうだ、収入がどうだと人を値踏みして、ランキングをつけて、上げたり下げたりする人びとに合わせる必要はありません。

書籍:悪口ってなんだろうP143-144から抜粋

生粋のいじめっ子と、その取り巻きは、幻のランキングをつくっていきます。どういうランキングを作っているんだろうか?と目を凝らして分析的な視点で見ていくのがいいのかもしれません。

よく、マウンティングする人は優劣をつけることで自尊心を保つ痛々しい人と表現する人がいますが、そもそもその表現自体が悪口になっているから、向き合い方としてはよくないです。むしろマウンティングのメソッドを構造的に理解するくらいの心持ちがちょうどいいと思います。

悪口を聞いた人

悪口を言う・言われるの関係性だけでなく、誰かへの悪口を第三者的に聞くことがあると思います。その時にはどのように対応したらいいのでしょうか。

悪口を耳にする第三者としては、(中略)「そんなこと言ったらダメ」と批判することも必要になります。悪口は社会的な存在であり、周りが止めれば悪口は止まるからです。私たちは、人間のランキングのような、仮想的フィクションにどっぷり浸かって生きています。それと違う生き方をなかなか想像できません。ですので、(中略)人間同士上も下もないんだということを、あらためて、確認し合うべきなのです。

書籍:悪口ってなんだろうP144から抜粋

前述したように、スルーすることは生粋のいじめっ子に間接的に権力を与えることになってしまいます。悪口の怖さや強さを知っている人は止めるようにしましょう。

職員や団体さんの悪口を言っている人に出会うことがあります。「あいつら仕事していない。なぜあいつらのモチベーションをケアしないといけないんだ。俺はこんなに魂こめて仕事しているのに。なんのために仕事しているのかわかってない。」等です。これが悪口であることは、もうわかりますよね。

悪口を言う人

発言が無意識に悪口になってしまっている人はたまにいます。人が去ったり、炎上したりを繰り返すわけですが、原因はその無意識さです。誰かのランクを下げるような発言をしていないか、自分のひとりよがりの価値観で相手をこき下ろしていないか、を意識してください。

1番大切なことは、細かいことば尻がどうとかではなく、誰かのランクを下げ、平等さを危うくするような発言をすべきではない、ということです。(中略)ぐっと距離を詰めて人と親しくするために、「からかい」や「軽口」や「いじり」を使いたくなることがあるかもしれません。そういうときどうしたらよいでしょうか。(中略)文脈と関係性次第で何もかも変化します。ですので、すぐに軽口に頼るのではなく、最初は正直で誠実な発言だけを用いて、時間をかけて信頼関係を作る方がよいでしょう。

書籍:悪口ってなんだろうP141から抜粋

権力がある側にいると、からかいや軽口を言っても誰も文句をいいません。それが居心地のよさと勘違いをして悪口を連発する一因になっていますので、権力がある人こそ、丁寧に言葉を選んで欲しいです。

さいごに:とても大切なこと

ランキング関係なく、人として尊重されることは、一緒にすごす上で大切なことです。いろんな関係性があるとは思いますが、この部分を侵さずに持っておくことが重要だと思います。

重要なのは、すごい人だから「評価する」ことと、同じ人間だから「尊重する」ことの区別です。(中略)すごい人だろうがすごくない人だろうが、人間として同じように尊重されるべきだからです。

書籍:悪口ってなんだろうP35から抜粋

この人として尊重すること・されることは、NPOの活動においても根源的な価値観だと思います。

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