3時間何を聴いていたんだ、先生


先日、気候危機とたたかうアジアの人々~「公正な移行」の実現にむけた日本の役割~の国際シンポジウムに参加をしてきました。

1.シンポジウムの内容

主催は国際環境NGO FoE(Friends of the Earth)Japan&Asia Pacificと法政大学国際文化学部でした。

FoEは、地球規模での環境問題に取り組む国際環境NGOで、世界73ヵ国に200万人のサポーターを有しています。Friends of the Earth International のメンバー団体として、1980年から日本で活動をしています。

今回のシンポジウムからFoE Asia Pacificとして、スリランカ・フィリピン・パレスチナ・インド・オーストラリアからメンバーが来日されて、スピーカーやパネリストとして登壇しています。

シンポジウムは3部にわかれていました。

第1部 気候危機のいま〜アジア諸国での損失と被害の実態〜

バングラディシュ、パプアニューギニア、インドネシアにおける気候変動に関連する災害状況の話がありました。

気温上昇によってヒマラヤ山脈の雪や氷がとけて下流の河川沿いに住む住民が住めなくなってしまったバングラディシュの事例や、数万の島からなるインドネシアにおいて年間多くの島が消滅してしまっている事例、タイフーンによって多くの死者がでている現状などの発表がありました。

第2部 脱炭素政策の裏側で〜各地で進む、誤った気候変動対策〜

今もなおアジアにおける化石燃料開発が加速している現状、そして海外の化石燃料事業への日本が投融資で後押ししている現実、日本のGX(グリーントランスフォーメーション)戦略の課題、日本で発生した二酸化炭素をマレーシア、インドネシア、オーストラリアなどに輸出している実態、などが発表されました。

日本のGXでは水素・アンモニアなど燃焼時に二酸化炭素を排出しないものを「脱炭素燃料」として推進しているが、ほとんどの水素とアンモニアは化石燃料から作られ、日本では火力発電所での混焼利用が進められています。また、バイオマス燃料をカーボンニュートラルとみなし、石炭火力に混焼して「排出対策」を行ったとみなす事例も増加しています。

こうした化石燃料に依存する状態の延命を目指していて、脱却は目指していない取り組みになっていることを「グリーンウォッシング」ではないか?と問題提起されていました。

第3部 アジア諸国が考える公正な移行とは〜私たちが目指す社会のあり方とは?〜

スリランカ・フィリピン・パレスチナ・インド・オーストラリア・日本のFoEメンバーが、どのような社会を目指すべきか、そのような社会の現実に向けて日本は何ができるかについてパネルディスカッションでした。

ポイントは2つありました。

1.公正な移行
脱炭素社会にむけて化石燃料に関わる職員や周辺の人たちが公正に移行できること。これは、既存の化石燃料プラントには多くの人たちが雇用されて、それにより生活をしています。そうした方々が再生可能エネルギーの活動に移行できることが大切です。

それ以外にも風力発電のために風車を設置したところ、渡り鳥の航路を塞いでしまう結果になるなどの、生態系に悪影響を与えないような配慮も必要との発言もありました。

つまり、再生可能エネルギーへの移行によって新たな社会問題が増えないようにする対応が必要ということです。

2.様々な領域が連動した取り組みが必要
単なるエネルギーの転換でなく、社会の仕組みそのものを変えていく取り組みにしていく必要があります。

エネルギーは人々の暮らしに密接に関係があります。そこを変えていくには、暮らしのあり方を考え直したり、行動様式を変えていくことが欠かせません。そして、この活動は、今ある様々な格差を変えていくことも期待されています。

2.シンポジウム終盤のとある先生の残念な質問

私自身、気候変動に関する被害の現状や対策や課題について、あまり知識がなかったので、今回のシンポジウムは本当に勉強になった!!と満足していた第3部のシンポジウムの最後の最後に、参加されていた某先生がこんな質問をされました。

このシンポジウム自体がグリーンウォッシングなのではないですか?こたえてください?

と。

シンポジウムが始まったのは14:00でした、質問をされたのが17:00過ぎのことです。私が思ったのは、

3時間何を聴いていたんだ、先生

でした。

第一部でバングラディシュ・パプアニューギニア・インドネシアで気候変動に関する甚大な被害が起きていて、その復興にはインフラや経済力の問題で10年以上かかるって言っていたよね?これは気候危機に向き合うのは、これからの被害を軽減することにつながるわけだから、人道支援の意味合いもあるのは明確だよ?

アジアの多くの国が自国に埋まっている化石燃料を海外の資金で掘り出されて輸出させられて、その後、海外で排出した二酸化炭素を自国に戻されていることは、廃棄物植民地主義と言われるくらいの不平等なこと起きてると思うけど。

日本の対応をグリーンウォッシングと言われて怒ったのかもしないですが、グリーンとかブルーとか言葉をつけても化石燃料に依存した考え方なわけで、その戦略を取り続けていても限界は見えているから、そこから次のあり方を様々な領域を含めて考えていく必要があるっていう問題提起がこのシンポジウムだよね。

従来の経済か環境かという二項対立ではない、包括的な問いの立て方をして様々なシステムと関連させて問題解決しようと言っているだけなのに、なんでシンポジウムの登壇者が、最後の最後に、この3時間の内容がグリーンウォッシングでないことを証明しないといけないの?

もっというと、企業の暴走をNPOや市民社会が抑える役割を担っていることは、これまでの公害や社会問題の歴史的な流れからも明確なので、こうした問いかけをするのは時代の要請なんです。NPOからこうした問いかけがないと企業は暴走していくのは歴史的にあきらかなのだけど、そうした背景を少しでも先生にも理解してもらいたい。

学生さんもいたから、かっこいいところを見せたいと思ったのかもしれないですけど、若い学生さんはこのシンポジウムはグリーンウォッシングじゃないと感覚的にわかっていると思います。今回のような論点を違えた倫理性が低い質問はかえって先生の品位を落としますよ。

その質問に答えたパネリストの1人が「このシンポジウムの主催をしてくださっている大学の方からそのような質問を受けるとは思っていませんでした」と言っていたの、あれドン引きしているってことですからね。通訳の人、訳すの困っていたからね。

このシンポジウムは学会ではありません。真理の追求の場ではなくて、一般市民への啓発の場です。先生は、切れ味するどい質問しているつもりかもしれないけど、残念ながら場違いだと思いました。

そもそも、グリーンウォッシングかそうでないかを論じたかったら第2部のグリーンウォッシングのところでその質問したらよかったのに、タイミング違うのではないでしょうか。

頼むわ先生。もっとみんなが創造的になる問いをたててください。

3.さいごに

私は、この質問を聞いた時に「こんな質問に答える必要ないわ」と内心思っていたのですが、FoEのパネリストの人たちは、一生懸命言葉をつくして回答をしようと努力されていました。

きっと気候危機に関する議論はこうした180度対岸にいる人たちとも、粘り強く話し合うことが重要なんだろうなと感じました。どんな質問でも、関心を持ってくれたことに変わりはないから、そこを尊重しているんだろうなとも思います。

今回のシンポジウムは勉強にもなって、記憶にも残る、いい体験になりました。改めてシンポジウム関係者の方々に感謝いたします。

記事を読んでくださいましてありがとうございます。少しでもお役に立てれば幸いです。おかげさまで毎回楽しく制作しております。皆さんからの応援があるとさらに励みになりますので、サポートお願いいたします!!