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NETFLIX 『マスター・オブ・ゼロ』による2010年代の多様性の描きかた

どうも。
NETFLIXで配信中のドラマ『マスター・オブ・ゼロ』が好きです。

「NETFLIXでオススメある?」と聞かれた時は必ずこのドラマの名前を出すようにしています。

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ニューヨークで暮らすインド系アメリカ人のデフ(アジズ・アンサリ)はパッとしない役者(で独身)。『マスター・オブ・ゼロ』はそんなデフや彼の友達たちの日常や恋模様を、ゆるいタッチの会話劇で描くコメディです。

主人公のデフがインド系アメリカ人二世(両親が移民)ということもあり、ほとんどのエピソードはマイノリティな人々の視点から描かれます。しかし、その描き方はあくまでもフラット。デフがマッチングアプリを使って女性と食事に行ったり(そして上手くいかない)、友達が子育てする姿を見て将来のことを真剣に考えるようになったり。

特に今の生活に不満があるわけではないけど、仕事、友人、家族関係、そして結婚…果たしてこのままでいいのだろうか?
そんな人生の岐路に立っているような立っていないようなデフのニューヨークでの生活(私たちの日常と大差ないような日常)が描かれていきます。

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そんなデフを中心にしたドラマの中で、この『ニューヨーク、アイラブユー』はかなり異色なエピソード。何しろ、主人公デフがほとんど登場しません。このエピソードでスポットが当たるのが、ニューヨークで暮らす様々なマイノリティな人たちです。

例えば、
高級アパルトマンで働くドアマン、
耳が不自由な黒人女性、
ヒスパニック系のタクシー運転手とその友達、
などなど。

名もなきマイノリティの人々の日常がオムニバス形式で紡がれる構成になっています。(これを30分に纏めて上げている編集もまた見事)

特に圧巻なのが、聴覚障害を持つ女性のパート。

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女性がパートナーの男性と買い物に訪れた店の中で手話で会話しているのですが、その内容が自分たちの性生活の悩みについて。つまりめちゃくちゃ下ネタなのです。そして、二人の手話による下ネタはどんどんエスカレートしていきます。

「どうせ誰も手話なんて分からないのだから」という前提のもと、公の場で卑猥な会話を続ける二人。そして、他の買い物客からこんなツッコミが入ります。「うちの子、手話が分かるの!そんな話をここでしないで!!」

「手話によるコミュケーションはお堅い内容のはず」
という自分自身の思い込み。

「手話だから周りの人はどうせ分からないはず」
という劇中カップルの思い込み。

10分にも満たない時間の中で、何度も思い込みが裏切られていき、その度に自分の視野の狭さに気づかされる見事な演出!そして最も大事なのは、キチンと笑える会話劇であること。決して説教臭くならない脚本の豊かさに惹かれます。

さらにこのパートには、大きな仕掛けがあるのです。
耳が聞こえる私たちが耳が聞こえない彼女の世界に少しだけ足を踏み入れることになる大きな仕掛けが…

ニューヨークが抱える2010年代の多様性とはなんぞや?というテーマを素晴らしい演出と脚本で描き切った傑作!

一本のエピソードが約30分というコンパクトな構成なので、肩ひじ張らず、スキマ時間でだらだらと見進めることができるのも魅力です。

NETFLIXに加入しているなら是非。




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