『クライマーズ・ハイ』横山秀夫

日航機墜落事故を扱ったフィクションが嫌いだ
大勢の犠牲をネタに商売をする性根が腐っているからだ

『クライマーズ・ハイ』は日航機墜落事故を全権デスクとして担当することになった地方新聞の記者が主人公だ
『半落ち』の作者なので作品の出来について疑いは無い。気になったのは「日航機墜落事故」である必要があるのかどうかだ

読んでいる最中も作品の出来には感心しつつも「日航機」でなければならない理由はなかなか判然としなかった
しかし物語終盤になってある女子大生の言葉に気づかされるものがあった

大きい命、小さい命。重い命、軽い命

この言葉が読んだ人皆に響くかどうかはわからないが私自身は見落としていた視点だった
今後物事に触れるときもっと注意深くあらねばならない、と反省させられた
これだけでも読む価値はあった

巻末の解説で横山秀夫が上毛新聞という群馬県の地方紙で日航機墜落事故を取材していたことを知った(有名なのか?)
自身の体験を基にしたフィクションであるとあらかじめわかっていればモヤモヤしたまま読まずにすんだ、とも思う
だがそれ抜きでも作品としての説得力があったのは確かだ

でもやっぱり日航機のフィクションを読むのは滅多なことでは無いと思う
解説の後藤正治氏が興味深そうなノンフィクションを書いているようなので今度読んでみることにする


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?