『後世への最大遺物・デンマルク国の話』内村鑑三

内村鑑三については「たしかキリスト教系の人だよな?」くらいの知識しかなかった。まぁ別にこの本は予備知識を必要とするものではないので「なんかアメリカで勉強した先生」くらいの感覚で読めばいいと思う
内容も若者相手の講演を纏めたものなので非常に理解しやすい。時代が時代だけに注釈が多いが巻末と行き来しながら読めばさほど気にならない。薄いし

「後世への最大遺物」と「デンマルク国の話」は別の講演だし時代も違うのでひとまとめにできないが内村鑑三が面白い人物というのはよくわかる。同じ時代にいれば話を聞いてみたかった、と思わせるのは教育者としての才能だろう

「後世への最大遺物」では人生において何を遺すべきか、という現代でも普遍的に問われそうな題材を扱っている。内容も今に通じるので若い人は読んでみるといい
面白いのは国(社会)への奉仕とキリスト教としての価値観が矛盾なく存在しているところか。キリスト教の伝道者が金を稼ぐ才があるなら稼ぎなさいというのは今でもなかなかインパクトがあるのではないだろうか

金、事業、教育、文学ときて全ての才をもたぬ人はなにを後世に残せばいいのか。簡単に言ってしまえば「生きざま」を遺しなさいということだ。このあたりの進め方が流石の話し上手なので一読してもらいたい

個人的には全くその通り、というか日本人はわりと自分の行いを小さく見過ぎるきらいがある
一生懸命にやっていればわりと周囲は見ているし良いことをしていれば良い影響を(それと知らず)与えている
逆に自分一人くらいがやってもいいだろう、と悪いことをしているとそれも周囲へ影響を与える

「自分の行いはそんなに小さくない」「知らず知らず周囲へ影響を与えている」と自覚すればより良く振る舞おうという気にもなってきやすいと思うがどうだろうか

キリスト教という「倫理観の背骨」がきっちりある人の言葉はわりと聞いていて面白い。宗教嫌いの色眼鏡無しに読んでみると思わぬ発見があるかもしれない

薄くわかりやすい本なので学生の読書感想文におすすめ

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