180日後に去る私 8

初日の定時が近づくとKさんはすぐ掃除や片付けを初めていました。本日の積荷などもあるのですが、それは他の人がやるとの事(Kさんはフォークリフト禁止令が出ている為)
もう時間やし今日は帰っていいよと言われましたが、奥の方でまだ他の先輩方が作業しています。

私はKさんに挨拶をして、作業中のNさんに声をかけました。

「なにか手伝う事はありませんか?」
「ああ…初日やのにエエで、もう定時やろ?帰り帰り」
「でも…」
別の先輩Hさんが割って入ってきました。
「Nさん、そうは言うけどまだまだ終わらへんやろ?有難いやん。Iさん、初日から残業とか嫌でしょうけど正直言えば助かります。でも用事あるとかやったら帰ってくださいよ、全然構わないんで」

私はやる気をアピールしたかったですし、帰るなら帰るで皆でスッキリ終わらせてから揃って上がりたいと思いました。

「皆でやった方が早いでしょう?簡単な事なら僕にもできますし、仕事も早く覚えたいので教えてください」

Hさんは笑顔になって
「ありがとうございます。俺、そういう人大好きっすよ」
「Nさん、そこでモジモジしてんとIさんにやり方教えたって!」

Nさんは凄くシャイで人見知りが激しい方でした。最年長者だったのですが、皆を引っ張るタイプではなく、ユニークで親しみがあってイジられキャラ…可愛いおっちゃんといった感じでした。

「わて、アホやし難しい事でけへんから偉そうに言えんわ…みんなが決めたことやったら、ついていくから」

50超えたオッサンより若い人達が頑張ってほしいとよく言っていました。
謙遜しているだけで実際はめちゃくちゃ動ける人でしたし、慣れている反復作業はピカイチでした、

Hさんはというと私よりも若く30代前半。
スポーツトレーナーをやっていたらしく、身体能力は凄かったです。せっかちなタイプで、誰よりも動きも早いし頭を使う事も得意そうでした。
負けん気が強く、自分がみんなを引っ張って1番になりたいという感じでした。

実際仕事は何をやらしても早かったですし、優秀すぎるが故、ちょっとチームワークに欠ける一面もあったのが玉に瑕といったところでしょうか。

初日から残業で、どうなることやらといった感じでしたが…
必死で頑張らないといけない!というような緊張感ではなく、皆でワイワイと仕事を片付けていったので、心地よい疲労感に包まれながら会社を後にすることができました。


会社を去るまで
あと173日

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