180日後に去る私 64

この時期に私は、ちょっとした怪我をしたことがありました。雨が降っていて、トラックに積み込みを終えた直後、工場の入口で滑ってしまい(水に反応して滑りやすい性質の薬品が多いです。)派手に転んだという事でした。
まあ工場ではよくある事です。


しかし入口は軽く傾斜になっているので、転んだ時に当然両手をつくのですが、地面に胸を強く打ってしまい、手首と脇腹を痛めてしまいました。


その後も業務を続けたのですが、どうも痛みがひかなかったのです。
翌日まで様子をみましたが、その日はもう午前で上がって、病院で診察を受けました。


レントゲンを見ると本当に薄くですが、肋骨にヒビが入っていました。これでは通常業務は無理なので(そもそも重たい物などは激痛が走るので持てない)現場の仲間達に頼りながら、できる業務をこなしていました。


これは流石に工場内での事故ですし、再発を防ぐ為の対策も兼ねて、労災申請をしたいと工場長へ申し出ました。

「それは当然です。そうしましょう」

言葉とは裏腹に、翌日工場まで営業マンのMさんが説明に来ました。内容は労災保険の定義、申請の方法などでした。

あまりに馬鹿馬鹿しいので説明された内容も覚えていませんが、要するに「労災申請してほしくない」という事でした。労災隠しというやつですね。保険料が上がったり、回数を重ねると監査が入る…だったかな?会社としては不利益があるんですよね。


サラッと書いてますが、これは本当に大問題です。しかも工場長からではなく、Mさんに説明をさせるという他力本願ぶり。
いよいよこの会社も来るとこまで来たなという印象だったのですか…何故こうなったのか大きな理由はU課長がこの時もう、退職されていたからでした。

社内に、まともな大人がいなくなった為、会社は完璧に間違った方向へと進んでいきました。
U課長本人も仰っていたことですが、
「私が1番社長に文句言ってます」
この会社を良くしようと思っていてくれたのでしょう。
人間的に凄く良い方だったので、この会社や私達下の者を守ろうとしてくれていたのだと思います。


そんなU課長も限界が来て、とうとう退職されてしまいました。
それも社長から緘口令が敷かれていたので、大分後になってから、私達現場作業員に聞かされたのでした。


会社を去るまで
あと117日

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