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2024春例大祭で出した五壁坂の曲セルフライナーノーツ

音楽は人前に出した瞬間からクリエイターの手を離れており、聴き手に解釈や情景は委ねられるもので本来あれこれ言うべきではなく、ましてや東方アレンジという文化は音楽の中で超大事なメロディを神から間借りしている訳で、そこに入居者であるこちらのエゴを入れ込んだ解説をカマすなんざ賃貸なのに柱に自分の身長を刻むぐらい危うい行為だよな、と思ってやめてしまってたんだがなんか今回のはそれをやりたくなった。俺は181cmや!!!!!!!実は最近加齢で縮んで180cmや!!!!!!!2024年5月に五壁坂名義で出した4曲のセルフライナーノーツをこちらのnoteに書いていこうと思う。最初に出したEP作品みたいに買ってくれた方にエゴ丸出し怪文書スタイルで添付しても良かったんだがせっかくなんで販促にもなればよいと思って今回は公開文書にして掲載する。まあフルで聴いた人にしか全部わからん内容になるんでどこが販促やねんと思うが、お付き合いください。

セカンドイルミネーション / 月が視えたらさようなら

五壁坂名義で出した3曲入りシングル。

セカンドイルミネーション

原曲:千年幻想郷 〜 History of the Moon、狂気の瞳 ~ Invisible Full Moon
(東方永夜抄 ~ Imperishable Night.)

人間は2種類に分かれる、メジャーキー(明るい調の曲)の曲を作りたがる人間とマイナーキー(暗い調の曲)の曲を作りたがる人間の二種類である。実際はマイナーキーでも底抜けに明るい曲を作ることできるが大体東方アレンジ文化では後者のマイナーキー人間が集まりがちである、なぜならZUN a.k.a.神さんが作る曲がそもそもほぼマイナーキーだから。あとマイナーキーの方が曲に「含み」みたいな概念を持たせやすい。メジャーキーの浸食度合いはなかなか強烈でサビだけでメジャーキー始まりだったらその曲は明るい認定されるが逆はない。それだけ「陽」の力は強いのである。この曲は五壁坂ではおそらく初めてのメジャーキー進行で「ウ~ム俺らもそろそろ陽キャ目指すか」と千年幻想郷を1000回ぐらい聴いて咀嚼していたらこれが出来上がった。(追記:狂気の瞳のメロも入ってます)実際の陽キャってメジャーキーで曲作るんですか?今の陽キャ作るん絶対トラップビートとかやろ・・・。

日本で一番音圧がでかい陽キャ曲

タイトルのセカンドイルミネーションは「月の光に照らされて浮かび上がった、かつて光っていたもの」を意味している俺の造語で、まあ好きに投影して捉えてもろたらええんやけど俺の当初のイメージとしては東方アレンジ界隈のことを指したメタい歌詞を書いている。とはいっても別に東方アレンジ界隈が没落しちゃったから巻き返していくぞ、などと失礼な偏見押し付けて偉そうにメッセージソングかました訳では決してない。俺は五壁坂やりだす前は10年以上もこの東方アレンジ界隈にリスナー様として君臨し、Twitter(現Twitter)に上がってくる音源をつまみ食いしこの歌がどうのギターの音作りがどうこうなどと偉そうなカス評論家様の真似事をしては自分は何も作らない、というYoutubeの弾いてみたに付くカスコメントそのものの態度により多くのクリエイターたちにミュートやブロックされ倒している実績がある、とまあそれなりに界隈の外側から観測し続けてるんだがやはり界隈には流行り廃りと浮き沈みがあり、生活や他にやりたいことがあって離れていったクリエイター、自然とやらなくなっていったサークルがたくさんいる。しかしそれと同時にここ2,3年で確実に東方アレンジという遊び場が今まで以上に盛り上がりつつあるのも感じている。東方アレンジを聴いて育った若手サークル組からは「このジャンルを盛り上げよう」って意気込みがよく見えるし、今までやっていたクリエイターたちからも「もう一回東方アレンジやってみようかな」との声をちらほら感じるし、「あの時やれなかったけどやってみようかな」って思ってるクリエイター、まあこれは俺らのことなんだが、そういう存在が集まるとまたイルミネーションみたいに輝いて見えるんかもね…とは微塵しか思ってないが、彼ら俺らのことを考えながら歌詞を練り上げていった一曲である。
かと言って現代には他にも創作を楽しめるとか名を売れるジャンルはたくさんあるし、そもそも今のメインストリームの音楽もオタク文化がマジョリティになった上に成り立つようになってるし、この界隈を強力に後押しするような力は多分そんなにないというのが俺の認識なので、照らし出すのは太陽のような強い光ではなくて月の光程度のか細いもの、というのをちゃんと歌詞の中に表現したかった。永遠は人間には難しい、現実は無常であるのニュアンスをAメロにこれでもかと入れ、サビにて無理に前向きにならない、でも悲観はしないの両立を"不完全なミラーボールで 依然不安な光量で 夜に浮かぶガラクタはまた夢になれる"という月とその光の隠喩の部分に込めた。今回ぐらいちゃんと考えて歌詞を書いたの初めてなんで超カロリー使ったしこれで30kgぐらい痩せんかな。ダイエットはもう古い。令和は作詞で痩せろ!!!!!!!!!!!!

ExtendSession VAPE

原曲:月まで届け、不死の煙
(東方永夜抄 ~ Imperishable Night.)

実はBOOTHにこっそり試聴版ある

東方アレンジは俺が知ってる限りボーカルものが増えたのは人気が出て暫くした後の話であり、基本的には音ゲー畑などのクリエイターによるインストアレンジが主なアウトプットだったように存じている。我々のようなバンドものが増えたりボーカル活動される方が増えて歌アレンジ中心になったとはいえ文化にリスペクトを払いたい気持ちを常に持っとるんで一年に一回はインストアレンジを出したいな、でもボーカル三人もいるサークルでインストアレンジってどうしてもデモ版みたいになっちゃって立ち位置が難しいな、そうだシングルと銘打った作品にカップリングでつけるとしっくりくるな、ということでEXステージの曲のアレンジをExtendSessionという名前を冠して始め、一作目は去年出したシングル作品のExtendSession FUJIで、今回が二作目である。一作目はインストアレンジなのに歌詞カード中で一番長い歌詞を載せるという暴挙をかましてしまったのでたぶん誰もアレをインストアレンジとは思ってないと思う、この曲が五壁坂初の誰の声も入っていない楽曲である。
ExtendSessionシリーズはすべて俺が単独で仕上げており、ドラムのビートとかもDr.デイビス君が叩いた音を切り刻んでペタペタと貼ってMIDIも重ねて作っているが必ずバンドで再現できるような音数のアレンジに落ちつける、という普段とは逆の作り方をしている。今回はどう聴いてもte'(30文字曲名ばっかのインストバンド)みたいな仕上がりになったがこれはアッパーな1曲目とアンニュイな3曲目を繋ぐ存在としてこうせざるを得なかった。もしかしたら三拍子の曲作ったの自体初めてかもしれん。
なお今回出したシングルの楽曲はすべて月をテーマにする、メジャーキー中心にする、BPM186、同じ狂気の瞳の間奏メロディを入れる、というやり方で意図的に統一感を持たせて、その差異を各曲に表現するやりかたをしている。全員同じ髪型で同じ制服を着たほうがそれぞれの個性が浮き立つでしょ、スイカに塩掛けろ、の考え方なんで扱い方を間違えるとちょっと危うさも含むので、今回のシングル作品ぐらいのサイズ感だとちょうどよくやることができた。あとスイカに塩は全然別の話だわスマン。そのまま食え。塩とかかけるな。近所のスーパーでカットスイカがよく半額で売ってるんで見つけ次第買ってるけどスイカまじでうまい。伊吹萃香!!!!!!(原曲は藤原妹紅のメインテーマです)


月が視えたらさようなら

原曲:狂気の瞳 ~ Invisible Full Moon
(東方永夜抄 ~ Imperishable Night.)

俺の最近ずっとの思想である「BPMを上げなくても曲にスピード感はいくらでも出せる」を形にしたくてこのアレンジをこさえた。セブンス系コード進行にずっとハーフテンポで進むビート、重ねまくったコーラス、倍テンポで刻むギターのブリッジミュート、叫ぶように歌い上げるボーカル、5分を超える展開、と好き勝手やっていたら完全にPK Shampooの星になってしまった・・・のでいい塩梅に収めるべく半分ぐらい要素を削ぎ落して一つも同じ展開を繰り返さない構成にしたら良いバランスで五壁坂らしさに着地することができた。とはいえサビは1回やれば十分やろ派の俺といや最低二回はやらんと現代ポップスの形式も怪しなるやろがい派の俺が脳内大喧嘩を始めてしまい、落としどころとして大サビで転調したままAメロとサビの変形メロディが出てくるようにした、これは自分でも結構気に入っている。ちなみにセカンドイルミネーションはGEZANとPKのあいの子のつもりで作ってたらなぜかミセスグリーンアップルっぽく着地したので俺のこういう感覚はホンマにあてにならない。振り切ったパロディ系は100人中1000人が気付いて笑ってもらえる出来のを作れるのに・・・。

偶然にもAメロ後半メロディがほぼ狂気の瞳


歌詞は緩やかに沈んでいく日常と唐突に訪れる別れをテーマに書いた。主人公と相手が誰とでも取れるよう描写していて、東方キャラのニュアンスを少しだけ織り込んだことで東方アレンジらしさを補填している。狂気の瞳のAメロを歌メロに崩そうとすると原曲感を残すのにどうにも苦労したんでそれなら歌詞に入れ込んだったらええやん、との考えでこうなった。安酒の名前も入れることで下宿してる金ないのにタバコと酒は買う大学生感出せてより幅が広げられたなと思う。そもそも月が「消えたら」ではなくて「視えたら」さようならなのは実はこのタイトルに元ネタがあって、まあ気になる人はここ読んでみてほしい。テキストサイト生まれテキストサイト育ち、ネットで金稼ぐやつは全員敵、で育った俺にとってはこの引用は必然である。いや別に稼いでもええやろ・・・大サビの波長がどうのこうのの部分ってこれイコライザーの仕組み解説しとるだけやんけ・・・とかあるがうまく別れとそれにまつわる感情を表現することができたな、と書いたときは結構ニコニコした。他人の気持ちとか1mmも理解した気になれんが独白としてなら言い切ることができるのは歌詞というフォーマットが持つ強さだと思う。
セカンドイルミネーションのところにも書いているが今作は歌詞をとにかくちゃんと書いた。ちょうど1stアルバムの縁日を出したあたりから、五壁坂の音楽性は初期石鹸屋の匂いが強いパーティーギターロックから少しずつ独自のオルタナ歌謡曲風味へと足を踏み込みだしており、ほんなら今作はもっと思い切ってみよかと歌モノ強度をしっかり上げたくて今までのイメージからすると「らしくない」ことを意図的にかなりやった。メジャーキーで作ったのもそうだし、曲順で2曲目にインストを持ってきたのも歌詞に力を入れたのもその一環である。結構バクチなところあったが結果かなり好評を得ることができたと思ってるので今後さてどうしよかな~と考えている、次はインド人をプロデューサーに入れるかな、毎日インドカレー食いたいし、ネパール人でもいいな・・・。

百鬼戦争伍ノ巻

モジャン棒の田中じゅんじろーさんに誘われて参加したコンピ。

クラウンエンゲージメント

原曲:星条旗のピエロ
(東方紺珠伝 ~ Legacy of Lunatic Kingdom.)

先述のシングルとは対照的に、こっちは今までの五壁坂に持たれてるであろうイメージの再現に注力した。コンピって多分そういうの求められるもんやん?珍しく予算があったもんでサークルメンバーでスタジオに集まってあーだこーだ言いながら作ったのも多分にあり、酔っぱらった時しか口にしないようなコルピクラーニみたいなバカのコーラス、ツェッペリンよろしくなギターソロ、ポルノのアポロとひっかけたIQ低いオマージュ、最後に転調してアッチェレランド(どんどん速くなるやつ)をダメ押しで二回やるアホの構成、などなどパーチーソング感をとにかく演出しまくった曲が出来上がった。それでも憂いやら寂寥感みたいなものが入り込んでくるから底抜けに明るい曲はたぶん俺は作れんのやろなへへっ・・・と指のヨコで鼻の下掻いたりしたが、何より同じ原曲の友人サークル曲が毎回脳内に邪魔してきて大変だった。イモータル†ブレイキン†ガンマレイっていったい何なんだ・・・。

ペトボの皆さん

これも東方紺珠伝5面が異常に難しいよ~というプレイヤー目線のメタい歌詞にしていて、今道節な言い回しを多用してる以外は何も大したこと表現してないんだが、プレイヤー目線で歌詞を書くとナチュラルに一人称「僕」を入れられるなというのは結構な発見である。やっぱほぼ女の子しか出てこないキャラクター曲のアレンジで一人称僕は使いにくいやん?でも一番歌詞で使い慣れた一人称が僕やし何とか使いたいし不自然にならんよう構造を作れんかなとずっと思とって、そうかプレイヤー目線の歌詞にしたらええんや!と大発見したつもりやったけどよう考えたらこんなん大昔からしょっちゅうありましたね、ウサテイとか。いやアレは一人称俺か、どっちにしろめっちゃ車輪の再発明してもたわ・・・と後から気づいたがこれ便利なんで今後もこの視点の歌詞使っていきたいと思ってる。
しかしコンピに参加してより思ったけども、東方アレンジは同人音楽文化で一番フィジカル性があるジャンルだと思っている。ボーカル曲はどんだけ下手だろうと人間の声を求められるし、別に東方の話を絡めなくてもメロディのモチーフが東方原曲だったらそれは東方アレンジとして受け入れられる土壌なので、百人一首の本歌取りの現代版を胴元含めてみんなでやってるような楽しみ方ができる。未だに東方アレンジDJも根強いし過去曲もどんどん共有される土壌があるし、ライブシーンみたいなものも再興しつつあるし、まだまだ遊び尽くせるジャンルだなと新人のおじさんながら半身じゃなくてちゃんと入り込んでみてよかったなと今はとても思っている。誘ってくれた田中じゅんじろー社長に感謝。メンバーに感謝、いつも遅刻してすんません・・・5分前行動を心掛けてるのにいつも5分後にスタジオ着くの何とかなりませんか?毎回俺を遅刻させる大阪の交通網が憎い。それが世界の選択か・・・どうやら阪急電鉄はファイナルエージェントの俺達とやる気らしい・・・あぁ、わかってる。阪急グループなりの考えだな。ラ・ヨダソウ・スティアーナ(別れの合い言葉、意味はない)

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