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SNS時代に新人アーティストをどう発掘する?音楽ディレクター・今村圭介流の方法【IMALAB】

「何年も何十年も音楽で一緒にドキドキできるアーティストに出会いたい」というツイートから始まった、音楽アーティストの新人発掘&発信プロジェクト「IMALAB(イマラボ)」。主宰は、ユニバーサルミュージック/EMI Recordsの音楽制作ディレクター・今村圭介だ。

音楽に出会うことも発信することも、SNSを利用することが当たり前になった。約20年間の音楽ディレクターを経た今、取り組んでいる「今村流」の新人発掘について話を聞いた。

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SNSでの新人発掘は
「培ってきた耳だけを頼りに原石を見つける」

ーーIMALABでは、どのように新人アーティストを発掘していますか?

今村:かつて新人アーティストと出会うには、デモテープを聴くか、人から紹介してもらうか、ライブハウスに見に行くかでしたが、ここ10年位はSNS上で出会うことも多くて、今回は7月に発信したツイートに対して1,500件近くのリプライとメールをいただき、そこから発掘しています。でもネットだと、見つけ方がちょっと難しいと感じています

ーーどのあたりが難しいですか?

今村:ライブハウスだと、音楽の才能と箱のサイズが比例していることが多くて、たとえば東京だと「あのアーティストもう渋谷のクワトロでできるんだ!」って、集客力が評価の一基準になる。

でも、SNS上だと、評価の一基準になっている「いいね!」の数やチャンネル登録者数、フォロワー数は、必ずしも音楽の才能に比例してはいないなと感じています。ネット上のそういう数って音楽以外の要因でも増やすことができる。だから、ネットで発掘したいんですけど、そういう数で発掘するのはいやだなと思って 。

数ではなく、培ってきた耳だけを頼りに、むしろそういう数が少ない人を(笑)、原石を見つけるということをベースに発掘しています。

ーーアーティストに加え、クリエイターやスタッフも募集されましたよね。その方たちはどのように参加していますか?

今村:Co-Write(コライト)という言い方をしていて、僕1人だけの力じゃなくて、個が繋がってコミュニティとして一緒に発掘して、作って、発信するということをしています。

1人だとできないことも、集団になると情報がより強くなる。クリエイターやスタッフの活動の成果にもなるし、アーティストの力にもなる。最終的に、アーティストがEMI Recordsからのメジャーデビューを果たす、またはメジャーデビューではないインディペンデントな形をとって活動していく。

IMALABは「実験的プロジェクト」だと考えていて、新人の発掘と発信、それからクリエイティブ制作の新たなトライアルができればいいなと思っています。まだまだ実験している最中で、これが実験で終わるのか新しい形になるのかは、まだ分からないといったところです。

あんなに短期間で人が変わる、
原石が輝くという景色は今までに見たことがない

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ーーIMALABの第一弾イベントとして、9月にオンラインライブ「IMALAB LIVE EXPERIMENT #01」を開催しました。どのように制作しましたか?

今村:発掘した新人アーティストに出演してもらい、SNS上で繋がったIMALABのクリエイターやスタッフと一緒に1つのイベントを作り上げました。

ーー「耳だけで発掘したアーティスト」とのオンラインライブの感想は?

今村:出演してくれた「サヨナラの最終回」「NIYOCO」「blondy」の3組のバンドが、ほんっとによくやってくれたなというのが最初の感想です。SNSで出会って2ヶ月も経たずにイベント本番に臨んでくれました。もともと音源だけで発掘してるじゃないですか。ライブを見ずに発掘しているんで、3組のライブに対する自分の中での確かな保証はなかったんですよ。

ーーその状況から、どのようにライブ制作を進めましたか?

今村:順番的には逆なんですが、音源だけで判断してライブ出演のオファーをして、出演してくれることが決まってから、普段どういうライブをするのか?を本人達にリサーチしました。つまり、彼らのライブを見る前にこの3組が出演することを決めてしまったんですね。その後、サヨナラの最終回はリアルでライブがあったので見に行かせてもらって、NIYOCOは過去のライブ映像を、blondyは配信ライブを見させてもらったんですが、正直、僕的にはどれもグッと来なかった。むしろこれはマズいかもと思ったほどでした。音源を聴いて感じたよさがライブでは全く感じ取れなかったんです。

そこから3組それぞれとの綿密な対話が始まりました。それこそ彼らにとってのライブの意味や目的、そして受け手がそれをどう感じているか?から始まり、今回のオンラインライブで伝えたいこと、見せたいこと、視聴者に持って帰って欲しい感情や想い、その為のセットリストから演奏やパフォーマンスの内容からMCまで、とにかく綿密に話したし、実際のリハーサル映像を共有してもらって何度も意見交換を重ねました。不安だったけれど、わずか1、2ヶ月であんなに人が変わるというか、原石が輝くという今までに見たことがない景色が見れました。アーティストって持っている才能があって、根っこから信念を持って話をしたり、景色を共有していくと輝いていくんだということを僕も改めて実感しました。

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ーーIMALABのクリエイターやスタッフとも、初めてのライブ制作でした。一緒にイベントを作ってみて印象は?

今村:オンラインライブを自主制作するのは初めてだったんですけど、とにかくいろんなスタッフが必要でした。アーティストとライブ周りだけで言っても、舞台監督、音響、照明、ローディー、マネージャー。配信周りだと撮影監督、カメラマン、スイッチャー、配信技術スタッフ。他にも宣伝、SNS担当、物販、デザイナーなどなど。でもそのスタッフがほぼ全員IMALABにいたっていう(笑)。こういうものを作りたいって言ったときに、それぞれが役割を買って出てくれて、一気に作れた。スタッフがとにかく凄かった。1、2ヶ月で作れる世界じゃなかったなと思ってます。大きな自信になりました。

ーー通常のライブとクオリティは同じでしたか?

今村:できたんじゃないですかね。むしろクオリティがあがったなと思います。僕たちが実際に会ったのは当日で、それまで全部オンラインで作っていたんですよ。お互いがどういう人かも分からない中で任せていった。それでも予想を遥かに超えたものができたというのは、個々が集まって集団になって届けることができる強さ、新しい届け方の強さを感じました。

そのアーティストでないと味わえない音楽に
出会いたい

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ーー今後の新人発掘で、どのようなアーティストに出会いたいですか?

今村:具体的に出会いたいアーティスト像は特にはないんです。ただ、あまり聴いたことのない音楽と出会いたいっていう気持ちがあります。

新入社員の頃、会社の先輩に、「ナンバーワンよりオンリーワンを目指せ」と言われました。ナンバーワンは相対評価であって、ナンバーツーになったりもする。でもオンリーワンは、そのアーティストしかいないから常にナンバーワンでもあるし、そのアーティストを聴かないとその音楽を味わえないので絶対必要なものになる。そういうアーティストや音楽に出会いたいなと思います

オンリーワンの音楽に出会うのってほんと難しいですけどね。そのときの時代性に合っていて、同じように売れているアーティストの中からだとナンバーツーになってしまう可能性がある。だから自分の中ではなるべく逆張りに近いくらいのアーティストを見つけたいなと思ってはいます(笑)

たとえば、ソロのアーティストが多くなってるんだったら、逆にバンドを見つけようとか。静かな曲が今流行ってるんだったら、ビックサウンドみたいな真逆を見つけようとか。今の流行が終わった瞬間の新しいものじゃないとオンリーワンにならないのかなっていう気持ちで発掘しようとしています

ーーIMALABの今後のアーティストを楽しみにしています!


インタビュー・文:山田歩


IMALABでは、新人アーティストの方、一緒に発掘したいクリエイターの方、スタッフ志望の方を随時募集しています。現在のフォロワー数、再生回数、実績などは気にしなくてOK!是非ご連絡お待ちしています。
mail:imalab.staff@gmail.com


■関連リンク■

▼新人アーティストの”実験的”発掘プロジェクト 主宰・今村圭介の野望とは?▼

▼IMALAB Youtube▼

▼IMALAB LIVE EXPERIMENT #01アーカイブ

「NIYOCO」

「blondy」

「サヨナラの最終回」



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