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【インタビュー:サヨナラの最終回(後編)】IMALABとのタッグで具現化した、サヨサイのイマジネーション

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あえて CMをなくして、あのテーマに対する自分たちの楽曲を選んでちゃんと向き合った

――今回、あえて自分たちの曲を少しでも多く聴いてもらうために詰め込まず「サヨナラの最終回」という一つの作品として持っていくことを優先される姿勢がクリエイターだなと感じました。

シバタ:そうですね。商売人になりたくないです。“サヨナラの最終回のコマーシャル”として曲をやりたくなかった。それは今後の活動でもそうだと思っています。これ難しいんですけど、CM的なことをやった瞬間にオタクは離れていってしまうんですよね。「愛してる」という言葉に対するCMというか。そういう曲とかを僕は絶対歌いたくないんです。自分の意見ではない事を言いたくないという感じ。僕の中で、そういう不純な、と言うか「この曲は売れるから入れとこう」みたいな作為的なのを挟みたくないから、今回のIMALAB LIVEで「拝啓、10年前の自分へ」ってテーマでいくとなった時に、10年前の自分に言いたい曲しか入れなかったって感じです。そういう意味だと、あえてCMをなくしてテーマに対する自分たちの楽曲を選んでちゃんと向き合いました。商売人が悪いとかじゃないし商売人がすごく大事な事は当然として、サヨナラの最終回としては僕が商売人の立場にはならない方がいいのかなって。画廊と画家に例えるなら、僕が画廊になっちゃダメなんです。画家じゃないと。

――つまり、売れそうだからこういう曲を歌うとか、目を引くからこういう演出してるとかって風にやってないんですね。「曲を聴いてくれ」っていうある種プライドみたいな感じというか。その本当に深い部分から愛してくれるオタクに届けたいっていうところがきっとそれなんだなと感じます。

シバタ:まさにそうです。オタクの敵になりたくないんです。アニオタだけじゃなくて、オタク的な人たちに「あいつらわかってるな」と思ってもらえるようなことをしていきたいし、そうするためにはやっぱり自分自身の「オタク」っていう心に常にアンテナを張ってなきゃいけない。「お前それ本当に“オタク純度”の高いシバタカヲルか?」っていう。これぐらいでいっか、でやってないか?というのをしっかり保っていきたい。やっぱりオタクってすぐ見抜くと思うし、そういう意味ではやっぱり僕はプロフェッショナルになって、自分に厳しくやっていかないとな、と思います。

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――楽器隊のほうもそれを汲んで表現していくことを心がけるということですか?

TiG:そうですね。今回でシバタカヲルの脳内の世界観を4人で追求しようっていう方向性がはっきり見えて、バンドとしてのビジョンがひとつになったのはかなり大きいのかな。そのおかげでやっぱりパフォーマンスも4つの力が中心に集まって見えるようになったんじゃないかなと。

シバタ:肩組んで友情を前面にみたいな一体感はやっぱ「陽」の一体感だったりするんですよ。反対に「陰」の一体感って、例えば学校に持ってきちゃいけないマンガの貸し借りをこっそりやるような一体感で、僕の本質はそういう一体感を表現する人間なのに、これまではずっと「陽」の一体感を表現してたんです。それがCMなんですよ。一体感っていうCM。それが本当に「陽」の人間だったらCMじゃないからやったほうがいいけど、俺がやるとそれがCMになっちゃう。それならメンバーとのアイコンタクトをせずに「実はしっかり信頼してるぞ」って表現の方が、本当の意味での僕の一体感じゃないか、みたいな。

――オタクって言うとちょっと特殊に聞こえるけど、入りやすい入り口になる事で、そこからどっぷり入ってきてくれる人って結構いるのかなと思いました。

シバタ:そうですね。入り口にしてもらえたら嬉しいですよね。僕たちが到達点でも通過点でもいいし。入り口か到達点か、自分たちがどうなっていくかちょっとまだわからなかったりしますね。ただ、今後も奥行きがあるバンドにはなりたいです。入り口だけで終わらないで、奥深くまで行っちゃう人もいるような。僕の書く楽曲や歌詞は、わかりやすいけど受け取りようによってはマニアックになっていくように混在させてて。MVとかも同じで、“才或る兎は侮らなゐ”のMVにはAKIRAとかエヴァンゲリオンとかのオマージュも入れてるけど、それだけにしてしまったら僕の中ではCMっぽくなっちゃう。だからAKIRAのシーンで乗ってるバイクは、フリクリのバイクにしてみたりっていう、そのややこしさとかマニアックさこそが、MVがニコ動だけでバズった理由じゃないかなと思います。そういうとこですよ。「おもれー」「俺はわかるぜ!」って言ってくれる人がそこにいた。だから「俺はわかるぜ!」っていう深い人だけじゃなくて、「アニメすげー!」ってふらっと見てくれる人たちにも届いたんだと思います。そういう意味では僕の中ではその奥行きがあった作品で、すごく良かったですね。契機でした。

――確かにサヨサイの楽曲は、普通にかっこいいロックだから違和感なく「まず入ってくる」っていう状態だと思うんです。そこからよくよく聴いていくと「あれ?歌詞深いぞ?」みたいに掘り返していけるところが奥行きなのかなと感じました。

シバタ:それこそTiGの機材や音楽オタク要素や、こうのアイドルオタク要素が合わさって音楽表現の幅が広がっていると思うんですよね。僕だけだったら僕ひとり特化型の、すごくマニアックすぎる何かになってしまうと思いますし。特に北斗なんてバランスの鬼だからうまいことバランサーになってくれるし。だからもし、いろんな方が聴いてくださるんだとしたらメンバーのおかげです。シバタカヲルひとりのソロプロジェクトじゃ絶対できないですよ。

サヨナラの最終回01

僕も引きこもりだったりいじめられっ子だったりしたから、そういうやつに絶対届けたいっていう思いがあるんですよ


――そういう色々なエッセンスが混ざっているからキレイに集約されているんですね。今30曲ほどあると仰ってましたが、この先1年ぐらいの中でやりたいこと・叶えていきたいことなどはありますか?

シバタ:今後出すMVの再生回数が100万再生を目標にしようとしています。他にも何千人を集客するとか、何枚CDをリリースするとかもあるけど、MVを見てもらうってのが大きくて。
僕的にはオタクの人に見てもらいたいし、僕も引きこもりだったりいじめられっ子だったりしたから、そういうやつに絶対届けたいっていう思いがあるんですよ。過去の自分が聴きたいと思うものを届けたいから、IMALAB LIVEの時に持ってきたテーマが「拝啓、10年前の自分へ」だったし。
そこに届けたいなら、やっぱりMVをいっぱい見てもらわなきゃ。そしたらそいつにも絶対届くと思うから。当然色々な人が見るMVにするけど、そいつらにクリティカルに引っかかるものじゃないと、自分を守る砦の向こう側に届けられないんです。
引きこもってた当時の僕が、もし今の世界を生きていたら音楽なんて瑛人の“香水”しか知らないと思います。それくらい突き抜けてくれないと、届かないぐらい何もかも見たくなかったし、そうしてやっと届いた曲が、もしそいつを救えるような曲だったりしたら……っていう、なんかおこがましいところはありますね。

――それがはっきりしているから力強いのかもしれないですね。

シバタ:曲が作れて絵が描けて人付き合いがある程度できる仲間がいる、陰キャの使命?ですね。そんな僕は日本人で検索かけたらあまりいない人間な気がするので。そうしたらそれは僕の使命なのかも。

――その使命を持って長い目で見た時の目標はどうでしょう。

シバタ:会場的なことなら幕張メッセでワンマンライブをしたいです。僕がコミケに行って、こんなにたくさんの人がいるんだということを知って、これぐらいの人の前でライブがしたいと思ったのがきっかけです。でも逆に言うと、どういう表現をしていくかを時代によってアウトプットの形を変えるところに興味があるというか。
だから長いことこの武器で戦いたいとかというよりも、やっぱりその瞬間その瞬間で自分の表現をして、結果的にその先に幕張メッセでワンマンライブができたら面白いよねっていう。あと6年ぐらいで叶えたいですね。

――なるほど。

シバタ:でも僕、幕張メッセとか言ってますけど、バーチャルチャットで幕張メッセくらい集められたら全然いいんですよね。VR(仮想現実)の中に入ってちゃんと人数が見えるなら。時代が変わっていくなら、僕はバーチャルチャットの中ででっかいライブします。

――単純にそこでやりたいみたいな目標ではなくて、あくまでやりたいことが主軸にあって。

シバタ:誰かが言わないといけないことをあえて言わない。誰か言わないといけないんだけど、誰も言えないみたいなことを言い続けたいです。僕は陰キャって言い方していますけど、これはかなり褒め言葉ですよ。僕自身が陰キャだし。
陰キャ達が生きづらいと思う時に、生きやすくなる言葉が言えるような。長い目で見た目標ってちょっとふわっとなっちゃうんですけど、そういうことを常に言っていきたいかなとは思いますね。

サヨナラの最終回03

――それはバンドの皆さん同じですか。

シバタ:ちょっと違うかな?

TiG:まあ僕ら陽キャなんで、ちょっとよくわからないですけど(笑)。

シバタ:3対1の構図だ。

TiG:今のカヲルの言葉を聞いて、そう考えているのかっていうのは再認識しましたし、予想していた通りでもあるので、総意で考えていることは間違いないなとも思うし。僕らは彼のビジョンを具現化していくだけなので楽しみです。

こう:カヲルの脳内のものをできるだけサポートするっていうのが、一番の目標っていうか、やるべき事かなと。でも陰キャになれって言われたらね、ちょっと。

シバタ:ド陰キャだろ(笑)。

TiG:ちょっと俺らには難しいよね。

北斗:僕も今色々カヲルが話してくれたカヲルの中の脳内、カヲルワールドっていうものを本当に色々な人に届けたいっていうのは、ずっと持ってるかな。やっぱりそれの中でメンバーとしてサポートできることはいっぱいあると思うし、カヲルっていうものをうまく昇華させていきたいと思ってるね。

シバタ:すっげーいい奴ら。だからこそ僕の使命感にも繋がるんですよ。これだけの奴らが周りにいてくれるんだぞお前(自分)は、っていう。プレッシャーでもあり、僕やサヨサイが持っている財産です。

TiG:ほんとにこんな仲いい4人組バンドいないですよ。僕らから見てもカヲルは面白いやつですしね。

シバタ:あざっす。

TiG:次何出てくるんだろうなっていうのを良い意味で楽しみに見てるというか。そこはある種信頼感なのかもしれないですね。あ、カヲルが今すごい嬉しそうな顔してる(笑)。

シバタ:こんなにわかりやすく嬉しい顔しちゃうんだ、俺。ってか今の言われてニヤニヤしないほうが逆にナナメじゃない?

TiG:かわいいやつだなあ、お前は(笑)。

――いや、いいバンドです本当に!では最後に一言お願いします!

シバタ:IMALAB LIVEは、あらゆるこだわりがふんだんに詰まっていますので、1回2回見たレベルじゃもう本当に気づけないようなカメラマンさん、僕たちの表情のこだわり、NIYOCO、blondyのいろんなアイディアが詰め込まれてます!改めて全出演者、血眼になって見てほしいなと思います。

――ありがとうございました!


インタビュー:倉田航仁郎
文・構成:鈴木美穂/倉田航仁郎/松村翠
ライブフォト:TAMA/クマタマサアキ

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