見出し画像

【ライブレポート:blondy】日常と音楽。何度でも“読み返したくなるような”30分間。

IMALAB LIVE EXPERIMENT #01 、2番手に登場したのは大阪発スリーピースバンドblondy(ブロンディ)。

大阪在住の彼等は事前に収録したライブ映像を配信する形で演奏を披露。モデルの老月ミカを特別キャストに迎え、更には緊張の一発撮り。普段のライブでは出来ないIMALABだけの、IMALABならではの表現に挑戦した。

鐘の音にも似たギターの音が響く。映し出されたのはblondyのメンバーではなく、1冊の小説を手にした少女。「---雨の音がする、もうすぐ10月がやってくる。」少女が呟く。何かが始まる。いつの間にか音が鳴っていた。深い深い、音。一輪の向日葵がふと目にとまる。

画像1

少女がページをめくると広がる景色。序章“サマードリーム”では、溶け合うようなコーラスワークが心地良く響いた。俯き加減で噛みしめるようにひとつひとつ言葉を紡ぐ奥野陸(Vo./Gt.)。少女が小説を読み進める。感情が動く、少女の表情が動く、音量が上がる。

画像5

流れるように展開されていく第2章“White”。聴き手によって様々な景色を見せてくれるこの曲は、巧みなカメラワークと相まって私たちをより強く物語の世界へと引き込む。徐々に確かに上がっていく熱量は一体どこへ向かうのか。

「---16時過ぎの快速に乗り込む。車内には誰もいない。僕はいつものように一番端にこっそり座った。」

奥野の柔らかな歌声、ソロパートからから始まった第3章“日常の中で”。変わってしまったこと、変わらないこと。信じられなくなったこと、それでも信じたかったこと。曖昧にくすぶっている感情を、濱田大地(Dr.)のダイナミックなドラミングが壊していく。切り裂くようなギター。叩きつけるようなベース。やり場のない感情が荒々しく音に乗る。

画像3

「---辺りは薄暗くなっていき、誰も乗っていなかった車内は学生や会社員が占拠する。聞き慣れたアナウンスが声をかき分けのっそりと耳に飛び込んできた。僕はまだ、あの日の記憶を辿っている。」

画像4

画像5

第4章“この街を出て”。気づけば車内には人が溢れていた、それに気がつかなかったこと。ハッと顔を上げる。もう振り切らなくちゃいけない、もう忘れなくちゃいけないこと。blondyの持ち味のひとつである、疾走感たっぷりのフレーズがスッと背中を押す。電車のスピードが上がる、もう止まれない。ライブ序盤、静かに溶け合っていたはずの木下茜(Ba.)のコーラスは、いつの間にか少女の背中を力強く押していた。

優しくあたたかく変わった奥野の表情、キラキラとした雫のようなフレーズが印象的だった最終章、冒頭で目に止まった一輪の“向日葵”は、かけがえのない大切な感情をいっぱいに浴びて真っ直ぐ顔を上げていた。

そして物語を読み終え、少女はそっと小説を閉じ表紙に手を置いた。

曲間に朗読シーンを挟みながら展開された今回のライブ。収録後は「4人で演奏した気分だった」と話すメンバー。少女が読んでいたのは、地元大阪の街をイメージして奥野が実際に書き下ろした小説だという。誰にでも、どこにでもある何気ない日常、生活。blondyが描くのはその欠片。何度でも読み返したくなるような特別なこの30分のことは、この先何度季節が変わってもそっと大切に心の中にしまっておこうと思う。

(舛屋史子)

セットリスト
1.サマードリーム
2.White
3.日常の中で
4.この街を出て
5.向日葵



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?