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【インタビュー:サヨナラの最終回(前編)】IMALABとのタッグで具現化した、サヨサイのイマジネーション

ユニバーサルミュージック / EMI Recordsで音楽ディレクターをしている今村圭介が立ち上げた新人アーティスト発掘の実験的プロジェクト「IMALAB(イマラボ)」。アーティストはもちろん、このプロジェクトに参加したいと集まった多くのクリエイターやスタッフたちとともに、構想から2ヶ月半後の2020年9月28日に第1回オンラインライブ「IMALAB LIVE EXPERIMENT #01」を開催した。

「IMALAB LIVE EXPERIMENT #01」のトリを飾った、サヨナラの最終回。「拝啓、10年前の僕へ」というテーマの下、アニメーションとリアルタイムの共演という予想外過ぎる演出を用いて、自分自身の物語をライブの中で表現してみせた。

今回、このライブ映像があらためて公開されるということで、サヨナラの最終回のメンバー全員にインタビューを実施。IMALAB LIVEを通して彼ら自身に起こった変化や今後の目標について語ってもらった。

全然違うふたつの感動って混ぜられるんだ、とIMALAB LIVEで発見した感じですね

――今回の IMALAB LIVEはアニメとの共演など、配信ならではの斬新なパフォーマンスが印象的でした。実際にやってみていかがでしたか?

シバタカヲル(Vo/Gt):僕はアニメや漫画がすごく好きだから、ライブ以外で感動する体験って結構あるなと思っていたんです。大好きなバンドのライブを号泣しながら知らない間に両手を挙げていることもあるのと同じように、家でアニメ見ながら泣いてる、ということもあって。でもこの感動って別々のものじゃないですか。それが今回のライブでは上手いこと融合できたな、という手応えがありましたね。

――別々の感動が同じようなベクトルで心に響いた感じですか?

シバタ:はい。ライブの感動でもあるけど、アニメ見てグッときてる時のあの感動。アハ体験っていうか、オチに向かって進んでドカンと落とした時の感動があったんです。全然違うふたつの感動って混ぜられるんだ、とIMALAB LIVEで発見した感じですね。

――やりたかったけど具体的な形としてイメージできなかったものが、今回初めて形になって可能性が広がったみたいな。

シバタ:広がりましたね。それこそさっき言った“融合”が僕は「できない」と思っていたから、「音楽の感動」の方を突き詰めなきゃと思ってて。けどそれだと僕の中の感動の一部でしかないから、僕の理想とする感動全てを伝えるなら前回みたいに『アニメ×ライブ』みたいなのがぴったりで。それが「できる」と気付かせてくれた感じですね。

サヨナラの最終回06


――理想とする感動を叶えるために、できるできない別としてやりたいことを全て伝えたんですか?

シバタ:そうですね、流れやカットなどを全部絵コンテに書いて提出しました。でも最初は俺弱気だったからこの企画も『ドラマ×ライブ』でスタートしたんですよ。実写とライブの融合みたいな感じで。これなら規格内だろうと思って提案して、その会議の時に「初めはこの絵コンテのままアニメにしようと思ったんですけどねー」って笑いながらポロっと言ったら「それじゃね?」と食いついてもらって。「サヨサイはやっぱアニメでしょ!」ってなって『アニメ×ライブ』をやることに決まりました。弱気な提案を砕いて、本当にやりたかったことを見抜かれた感じでしたね。

――ドラマを提案したときって、他のメンバー的にも「いやアニメでしょう」と思ってましたか?

ハヤシ“TiG”タイゴ(Gt):はい。もしかしたらアニメーションがいいんじゃないかというのは、多分全員どこかにはあったと思います。
カヲルが“才或る兎は侮らなゐ”のMVのアニメーションを描いてきた時に、僕ら後ろ3人が「こいつの才能ってここにもあるんだな」というところにちょっとビビッて、彼に時間を使ってみようっていう話をしていた頃だったんです。
ドラマ案も「それも面白いかも」とは思ってたけど、実際にIMALABチームのディレクターに「アニメじゃね?」って言われた時に、「あ、やっぱそこに気付きますか」と。
ディレクターチームは「僕らが協力できることは何でも言ってください」と言ってくださってるのもそうなんですが、なかでも「やれることやれないことは一旦抜きにしてやりたいこと教えて」っていうスタンスでいてくれるのがめちゃめちゃ心強いですね。

――なるほど。「それならやりたかったし、シバタさんの才能も活かせるから」と満場一致でアニメにシフトしたっていうことですね?

TiG:そうですね。

シバタ:実際お声がけいただいてからIMALAB LIVE当日までの制作期間って1ヶ月ぐらいだったんですよ。だから多分みんながアニメにしようって言えなかったんじゃないかな。描くのは僕ですから、僕がやろうって言わなきゃできなかった。でも僕が弱気になってたポイントって、間に合うかどうかじゃなくて、『アニメ×ライブ』をやっていいのかどうかだったから。「やっていいんだったらやりたいな……」みたいな(笑)。
だからみんなが「アニメでいきたい」って言ってくれた時に僕は「やっていいんだ!やっちゃうよ!」って喜んでました。

――他のメンバーの方は、その制作にどのくらいのパワーがかかっているかご存知ですか?

TiG:カヲルが映像制作する時って自宅に篭ってるから謎です(笑)。もしかしたら彼はずっと寝てて、僕らが知らないチームが裏にいるんじゃないか?ぐらいの速度で作り上げてきますから(笑)。本当に彼が作っているんですけど(笑)。

高橋サウザー北斗(Dr):経過を知る間もなく出来ちゃってるよね(笑)。

――途中確認とかないんですね(笑)

シバタ:ないですね。完成版を見てもらってダメならダメだし、と思って。僕もう制作工程まで愛しちゃってるんで、アニメの制作工程通りにやりたいからひとりでキャラクター会議とかもするんです。その途中経過を見せても伝わらないし。それに、途中まで面白くないのに最後にめっちゃ面白いって作品あるじゃないですか。今回のIMALAB LIVEもそういう感じのアニメだったし、トータルで面白いと思ってもらえるものを考えちゃうので。だから途中で送らずに完成版で判断してほしかったんです。
「自信があるから完成するまで待っとけ!」じゃなくて、自信はないけどやっぱ完成品を見てもらわないと、と思ってますね。

サヨナラの最終回02


――そういうストーリー展開を意識したアニメ的な考え方って、ライブのセットリストを組む時も生かされているんですか?

シバタ:うちのバンドは、めちゃくちゃアニメ的だと思います。1話目で引きこんで、2~3話とかで温泉回とか水着回でちょっとゆるい空気出して、4話目ぐらいでどでかい悲しいことが起きて、最後にそれを回収する5話目みたいな。これってもう僕の中ではアニメだと思ってます。

――アニメにそこまで精通してないこう(こう/Ba)さんには、今の話どういう風に映っていますか?

こう:……「水着回だったんだ」と思いました(笑)。でも彼のイメージがそれだったというのは「らしいな」と。多分僕らもライブを組み立てていく中の抜きどころ、打ちどころを、個人個人の好きなものの解釈に当てはめてやってるという認識です。

シバタ:うちはみんなオタクなので。俺はアニオタですけど、こうはアイドルオタクだったりする。北斗は……

北斗:僕は一応恐竜オタクです(笑)。

シバタ:他のメンバーはジャンルに対して結構広めなオタクなんですけど、北斗はその中のジャンルひとつに対して深いオタクなんです。「金色のガッシュベル」だけは僕よりとても詳しい、みたいな。局地的オタク。

北斗:自分が本当に好きになったものしか見えなくなっちゃいますね、僕は。

――TiGさんは何のオタクなんですか?

TiG:僕は機材オタクですね。楽器とかマイクとかそういうのが好きで結構集めたりもしてたので。今、メンバーが使っているケーブルも全部僕が作ったものだし、メンバーの足元を全部メンテナンスしたり、機材作ったり。前回のライブは遂に僕のギターをカヲルが使いましたからね。

シバタ:僕自分の持ち込み機材ピックしかなくなっちゃいました、本当に(笑)。

こう:ステージに乗ってる機材8割ぐらいTiGさんのだった。

シバタ:逆に言うとサヨナラの最終回の音は、ライブやCD作る上で結構脳みそをTiGさんに置いてて。和音とかもTiGさんが違うと言ったらそれは違うっていう。そこは多分僕の中では分業しているところです。

TiG:サウンドプロデュース的な部分は僕なのかもしれないです。最近だと、バンド的な音作りはコロナ禍になってお客さんのいない配信向けのアプローチを意識してライブするようになりました。今までだったらライブでドンと一発出した時のパンチのある音や、そういう音の厚みみたいなことを考えてやってきたんですけど、それだけじゃなくて手元の粗さを減らしてシンプルに上達していこう、というところを意識し出しましたね。
個人的に僕は音のつなぎ目を意識しています。僕エフェクターを結構使うので、切り替えのタイミングで音が途切れたりしないように、わざと一拍遅らせて踏んだりとか。そういうちょっとした意識はしますね、配信向けに。やっぱり大きい音で聴くとごまかせる部分もあるから、ライブハウスで聴く音とはまた違った聴き方をリスナーがしている、と意識して考えてやってますね。全然違うふたつの感動って混ぜられるんだ、とIMALAB LIVEで発見した感じですね。

>>中編へ続く

インタビュー:倉田航仁郎
文・構成:鈴木美穂/倉田航仁郎/松村翠

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