短編小説『エスパー茉莉の秘密の職業』
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「茉莉さん、殺人課より依頼があった。土曜の朝に申し訳ないね」
とレナード・マリエンバート博士から携帯に電話があった。モスクワの学会へ出張中のはずだから、向こうは朝の五時頃だろう。
わたしはがっかりした。駅前に新しくオープンしたケーキ屋の長い行列へ一時間も並んで、ようやく次に呼ばれる順番だったのだ。そこの和栗のモンブランはイートインのみで、お昼には完売してしまう。事前予約もネット販売もやっていない。しかも、十一月だけの限定メニューなのである。
「レナード、ごめんなさ