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映画「君は永遠にそいつらより若い」 若い人たちは変わっていけるのかもしれない

他者の痛みをわかろうとする主人公ホリガイ。

いや他者の痛みがわかっていないと自分を責めるホリガイ。

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「レディーバード」のように髪を赤く染めたホリガイ(佐久間由衣)は、派手な髪色とは裏腹にいつも困惑したような顔をしている。児童福祉士への内定が決まった大学4年生で、過去テレビで知った児童失踪事件のことをずっと心に留めているような一面を持つ。ニット帽を深くかぶっているイノギ(奈緒)は、ホリガイと同じ大学で哲学科。相手の気持ちをのぞき込むかのような表情で話を聴く様子が印象的だ。ほかに「焦燥感が優った」と言い残していったホミネ(笠松将)や、その友人であるヨッシー(小日向星一)がいる。


彼女らの世界はタイトで理不尽なものとして描かれる。両親の離婚、他人との距離感、身近なものの死と果たされなかった約束、ネグレクト、倒された赤い自転車。


ホリガイやイノギはなんとか抗ってみたり、でもやはり馴れ合ったりしながら世界を生きているような感じだ。大学生のモラトリアムの軽薄さはなく、困惑や諦めの方を帯びている。スクリーンに映る景色は澄んで寒々しいものだ。「ジョゼ~」や「人のセックス~」を思い起こさせる吐く息が白くなりそうな空気。ふたりは世界の寒さに耐えるかのようにコートを着込んでいる。いっそ手近なぬくもりを求めて他者と抱き合えばいいのに、ふたりはそれほどに世界と折り合いをつけていないのだ。


自分のことを語れば語るほど困惑するホリガイ。みずからを「とっ散らかっている」と言ってみたり、自分が定まっていないのか話す語尾を茶化したりする。イノギはそんなホリガイの話をまるで瞳を傾けるようにして聴き続ける。ふたりが台所で並んで座って話したり、別々の場所で互いに水面を見つめながら携帯で話したり、ふたりがたたずむシーンは気持ちがいい。すこし疲れているようなふたりが、ゆえに袖口だけ触れ合ってほのかに心通わせるような感じだ。ホリガイが卒業パーティーを蹴って、牡蠣鍋を準備するイノギの部屋に向かうところは見ているこちらも幸福だ。


世界は彼女たちに優しくないのに、みんなはでき得る限りで優しくあろうとする。ネグレクトの子どもを保護したり、過去あなたがつらかったその場所にいて助けたかったとまっすぐに言ったり、倒れた赤い自転車を起こしたり、勇気を出してチャイムを鳴らしたり、がんばれってイラストを描いてあげたり、さらにそれに色を塗って情愛を示したり。

ふたりが抱き合った夜。

そのシーンにすこし驚きながらも、とても納得のいくシーンだった。愛、共感、思いやり。なんでもいいけど、とても人間らしくて納得できるシーンだった。


映画終盤、みなが引き払った大学時代の部屋が映される。引っ越しが済んで何もなくなったそれぞれの部屋。これまでたくさんのモノがあって、そこでの時間や会話があった部屋。それがからっぽで無人で日の光にだけ照らされている。みんなここをあとにしていったのだ。そして、思った。これから世界や人間はどのように変容していくのだろうか。あまり希望は持てないような気がしていたが、もしかするとそうでもないのかもしれない。自分は見届けることができないかもしれないけれど、ホリガイたちのように挫けながらも自分を胡麻化さないのならば若い人たちは変わっていけるのかもしれない。

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