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国産アックス製作プロジェクトで感じた製造業の真の「働き方改革」

こんにちは!先日お話を書かせていただいたアイスクライミングアックスチャレンジですが、NHKの「おはよう日本」が本日取り上げてくださいました!!ニュースを見て、改めて世界最強の国産アックスができたのではないのかと自負しております。

「橋のトラス構造」から発案したアックス構造。まさに機能美とも言える美しさ。この他にもエンジニアの努力とノウハウが詰まった一品です。

さて、ニュースを見たあと、悦に入りながら改めて今回のアックスチャレンジがうまくいった理由を考えてみました。加えて、その後のプロジェクトメンバーの印象的な変化についてちょっと書いていみます。

スピード感のあるPDCAを実現するために

8月から本格的に始まったプロジェクト。12月のシーズン開始まで、わずか4ヶ月あまりしか無い。その上「世界最強」を謳うアックスを作るという目標を掲げているわけですから、妥協はできません。

この短いスパンで、ノウハウもない製品の仕様を磨き上げるには、次の2点が不可欠でした。

非同期コミュニケーションによるモチベーションの維持
・優秀な「翻訳者」の存在

非同期コミュニケーションによるモチベーションの維持

1ヶ月ほど経ったある日、プロジェクトメンバの一人に相談されます。

実際にいろいろと試作検討を重ねているが、使ってもらえるかもわからないし、試作結果がどうであったかの反応がわからないので不安。ちょっとギハードさんに聞いてくれないか?

製作チームとしては至極真当な意見でした。しかし、工場は愛知県の西尾市にある一方でギハード選手は普段東京の会社員。顔合わせでのミーティングはもちろん、Webでのミーティングも難しい状況です。それまでは私がハブになって意見を仲介するか、メールによるコミュニケーションだったのですが、どちらもコミュニケーションコストがかかりすぎる。

同じプロジェクトメンバ内で、
「■■様、○○です。お世話になっております。さて、」
なんていう無駄な文字列は必要ない。これによって、「なにか大きな出来事が無いと、連絡取れないかな・・・」みたいな心理障壁が生まれるのがあまりにもったいなさすぎる。

そう思い、Slackを導入することにしました。製造業ではあまり馴染みがないものですが、IT分野ではよく使われているビジネスチャットツールです。メンバーはアックス製作について聞きたいことをSlackチャンネルに垂れ流す。ギハード選手も質問を見たときに返答する。フィードバックも感じた瞬間に書き込む。これにより、非同期なコミュニケーションを実現できました!

結果としてこれがうまく作用しました。プロトタイプの製作において大事な要素である、メンバーのモチベーション向上アックス製作のPDCAサイクルのスピードアップを共に達成できたわけです。

翻訳者の存在

これはとても幸運なことであり、めぐり合わせかも知れませんが、このプロジェクトには「翻訳者」がいました。旭鉄工のウェブサイトでも記事を書いている岩瀬さんというアイスクライミングアックスの設計者です。

自らアイスクライミングも行うし、エンジニアリングもできる。選手側・製作側のどちらの言い分もわかる彼の存在がなければ、ここまでスピーディかつ高クオリティなものは製作できなかったでしょう。

同じ日本語でも、フィールドが違えばそれは異国の言葉です。正直、アイスクライミング未経験者の我々製作者側はギハード選手が言うフィードバックに「???」となる部分も時たまありました。しかし、そのコミュニケーションの齟齬を見事に吸収し、アックスデザインへと昇華させてくれました。

これはIT業界にも言えますが、あらゆるものが複合的に絡み合うプロジェクトでは、このような「翻訳者」の存在が必要不可欠だと思います。一点突破の深い知識を持つ人ももちろん必要ですが、このような広い知識を持つ人の存在が、未踏のプロジェクト遂行には必要だと感じました。

プロジェクトを通した、真の「働き方改革」

このような要素も相まって、初年度のプロジェクトが成功裡に終わりました。最後に、ニュースでは取り上げられなかったですが、インタビュー最中のプロジェクトメンバー高橋さんの言葉が非常に印象的だったので、ちょっと書かせてください。

我々は部品製造屋なので、「動いて当たり前のものを作る」のが本来の仕事。だからお客さんのフィードバックもほとんどないし、あったとしてもそれはクレームがほとんど。今回のプロジェクトでは「喜んでいる利用者の顔が見える」というのがとても新鮮で、嬉しかった。はじめは不安だったけど、とてもいい挑戦ができたと思う。

旭鉄工では「新しいことに挑戦」を昨年度スローガンに掲げていました。全体の風土を失敗してもいいから挑戦しようという方向に持っていこうとしています。しかし、よく考えてみると「製造業」という体質上、これは難しい挑戦であるんだなと気づきました。「動いて当たり前」のものを作る大変さを知っているが故に、挑戦が難しくなる。

今回のプロジェクトを通して、従業員のマインドの変化という真の働き方改革ができたのではな以下と思っています。「新しいことに挑戦」できたと実感してもらえたことは、私にとっては盲点でもあり、また感動したところです。非常に気づきが大きかったので今後のプロジェクトでは、今回のプロジェクトメンバがメンターとなって新しい人をプロジェクトに参加させる「教育としてのプロジェクト遂行」も考えています。

「そこには、挑戦というものづくりがある」

会社のホロに掲げられたメッセージです。チーム一丸となって達成できたアックスプロジェクト。まだまだ道半ばです。今後も取り組んでいくので、門田ギハード選手を、そして旭鉄工・iSTCをぜひとも応援よろしくおねがいします!


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