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ラブレター・及び・告訴?

 ※この文章は『怪盗クイーン』シリーズの登場人物、ヤウズについて書かれています。シリーズ未読の方は是非本編を読んでください。

https://book-sp.kodansha.co.jp/queen/

 ヤウズくん、お誕生日おめでとう!

 今年はどんな1年でしたか?お師匠様の元での修行はどうですか?ドイツのご友人との交友関係は?ホットスプリング・テーブルテニスはまだ続けていますか?趣味である料理の腕もさらにメキメキ上がったのでは?

 その答えがどうであれ、先ずはこの1年を無事に過ごしてくれたことを祝福せねばなりません。本当におめでとう。

  思えばあなたが舞台の俎上に登ったのが15年前。初めて見た頃から比べればだいぶ印象が変わった気がします。趣味と友人とライフワーク、この3つを手に入れられたことはやはりあなたの人生にとって大きな意味のあることなのではないかと思います。それはあなた自身が1番実感しているかもしれませんね。

 あなたは今まで、おおよその同年代の人間が過ごすより大いに苦難の多い人生を送ってきたことと思います。具体的事実に言及するのは止しますが、少なくとも正確な年齢と誕生日を知らぬ程度には過酷な人生であったということです。大方の人というのは己の生年月日というものを把握していますから。あなたが自身の人生について辛いだとか苦しいだとかを感じなかったり、或いはそれを恣意的に感じないようにしていたとしても、あなたの人生はイレギュラーなものであった。

 だからこそ、あなたが今当たり前の幸せを手に入れていることがなんとも尊いものだと思えるのです。(もちろんお師匠様の修行は過酷なものでしょうが。)こんなことを言っては不謹慎というか、無神経がすぎるのかもしれません。あまりにも使い古された表現で言うと、あの頃の経験があるから今があるというか。再三申し上げれば、こんなわかったような口をきいてはならないのですが。

 とはいえ、誕生日や年齢がおおよそのものであることなど今はどうでもいいことのように思います。あなたは一度のみならず、きっと二度三度蘇っている。人として生まれ直している。今まで過ごした全ての時間を否定せず、その時間から脱している。そうであれば生年月日というものは「生まれ変わり」の都度変わったっていい。少なくとも今あなたがここに生きている事実と、今生きているあなたが1年歳を重ねたという事実があれば、今日は祝福されるべき誕生日たり得るはずです。

 改めて。誕生日おめでとう。あなたのこれからの一年に幸多からん事を。


 さて、言祝ぎはここまでにします。本当のところ、私はあなたにもっと言いたいことがあるのです。

 ヤウズよ。貴様、世界に一体何をした?

  お前が出てきてから。いや違うな。お前が出てきてから5年かそれ以上経った頃から特に顕著な気がするな。

①髪が長い ②目元が涼しげ ③長髪 ④料理がうまい ⑤苦労人

 上記5つのうち、少なくとも3つの特徴を持ったキャラが圧倒的に増えたんじゃないのか。もちろん私がその期間、今までより圧倒的に多くの作品に触れる機会があったということを加味してである。増えてないか?気のせいか?気のせいかもしれない。気のせいだったら早く私の頬をブチシバいてくれないか。

 要約すると、世の中にお前に似たキャラが増えている気がするということが言いたいのだ。お前、世界に一体何をしたのだ。世界の性癖を捻じ曲げたとでもいうのか。もちろんこのシリーズ作品自体が多くの人間を温かい蟻地獄に堕としているとはいえ、ちょっとばかしお前は寄与しすぎなんじゃないのか。世界を我が物にしようとしているだろ。性癖の元祖、すなわち人間の「核【コア】」に潜り込むことで、人を操ろうとしてないか?大いなる「母胎」になろうとしているのでないか?Motherにだ。Motherにだっつってんですよ!!!!!!ぽえ〜〜〜〜〜ん!!!

 証拠も上がっている。今「フェイスフレーミング」というのが流行している。簡単に言えば「前髪と耳の前の部分の髪だけを後ろ髪よりも明るい色に染めるヘアカラー」のことだ。これを世のオシャレ人間がどんどん試し始めている。主に前髪なし、センターパートのロングヘア。フレーミング部分は明るい金髪に近い色で、後ろ髪は暗いほぼアジア人の地毛のような色及び茶髪だ。

 震えろ。お前だ。

 そんな髪型の奴、お前以外にいました?いや、ちょこちょこ見かけることには見かけるが、色、長さまで完全一致しているのはお前だ。あとお前以前にそんなヘアカラーをしているキャラだとか、人間だとかをほぼ見たことがない。ゆうがたクインテットのアキラさんくらいじゃなかろうか。

 私は知っているんだ。こうやって「概念ヘア」の人間を増やすことによって、お前はさらに大いなるものになろうとしている。いったいどこまで膨れ上がるつもりだ。キャラと同じヘアカラーには憧れるのものだが、お前のその奇抜なヘアカラーは、それこそ流行でもしていないと実践しづらい。そこで初登場時の読者層がそろそろ好きな髪色で過ごせるようになったこの時期にフェイスフレーミングを流行らせ、流行の髪色から自分を想起させ、そして再度沼に嵌めようという魂胆だろう。おそろしい子!

 お前、どうなろうとしているんだ?自分と似た要素を持つキャラを流行らせ、さらに自分を想起させる個性的なヘアスタイルまで流行らせる。時代がお前に追いついたってか?違うね。お前はなんらかの手口で、時代を従えようとしている。当の手口がわからない限り、世界はお前を糾弾できない。なぜなら皆、時代を従えるその方法の実態もわからなければ、その証拠も掴めないからだ。時代を従える、多くの人間が試みては敗れた課題だ。お前は小さな形でそれをやってのけた。国家の財産なんかを転覆させる力は持たないとしても、一人一人の内心に滑り込む形で、お前はこの世界を少し征服してみせた。

 改めて問おう。ヤウズ、貴様は世界に一体何をした?

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