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特集:米国の半導体関連製品に関する原産国判断の推移

 米国税関の事前教示事例検索サイト 「CROSS」 から、半導体関連製品に係る実質的変更判断が組立加工を行う「後工程」から拡散工程などを行う「前工程」に変更されたことについて、本稿では基幹部品としてのトランジスタ、集積回路を、次回はその他の半導体関連製品を追ってみます。なお、CROSS掲載事例の翻訳は、筆者による仮訳です。

1. トランジスタなどの半導体デバイスの原産国判断基準を「組立工程」としていた当初事例

事例1:【当初事例】 トランジスタの原産国は、「組立て」を行った国

当初教示要旨】 トランジスタ及びダイオードの原産国は、ウエハーがトランジスタ又はダイオードを製造するための組立工程を行った国とする。

 事例1(参照番号等: 2007年2月23日、N007032、MAR-2 RR:NC:1:109)は、トランジスタ及びダイオードの原産国表示を求めた事案において、付随的に行われた原産国判断において簡単な記載があった最初の事例。

生産工程: 説明なし

実質的変更判断: 申請者は組立工程について説明していない。しかしながら、2001年7月6日付、教示事案 (HQ 562115、2001年7月6日、MAR-05 RR:CR:SM 562115 BLS) (注1) に一部記載されているように、本判決では、海外で行われた組立工程が実質的な変更をもたらしたと仮定し、以下のとおり判断。

トランジスタ及びダイオードの原産国は、ウエハーがトランジスタ又はダイオードを製造するための組立工程を行った国 (日本、韓国、シンガポール又はマレーシア) とする。

(注1) 本事例は集積回路の原産国表示について教示を求めた案件で、実質的変更判断については1990年5月21日、732357号事案(本稿事例2)及び1998年2月10日、560753号事案(集積回路の原産国判断として本稿事例2の注2で言及される1980年2月13日付C.S.D. 80-227号事案に言及)を引用し、「海外で行われる組立工程が実質的な変形をもたらすと仮定し、それに応じて、集積回路を製造するために様々な部品が組み立てられる国を原産国とする」旨判断。

筆者解説】 CROSSで公開されている半導体関連製品に係る米国税関の実質的変更判断は事例2の集積回路に係る事例が最も早く(1990年5月)、集積回路を形成する部品であるトランジスタ、ダイオードの実質的変更判断は、集積回路での判断を特段の検討もなく踏襲する形で行われたもの。本事例の主目的は微細な精密部品への標示に係る判断申請であったため、原産国判断部分は上記のとおり、ごく簡単に記載されています。

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