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EUの経済安全保障戦略

 今回は、欧州委員会及び外務・安全保障政策上級代表が2023年6月20日に発表した「欧州経済安全保障戦略」に関する欧州議会、欧州理事会及びEU理事会 (注1) に対する共同コミュニケーション[1] (以下、便宜的に「戦略ペーパー」という。) について、その概要をお伝えします (関連記事を含め、翻訳はすべて筆者による仮訳です)。欧州委員会のウェブサイトでは、戦略ペーパーの概要をまとめた「経済安全保障を強化するためのEUのアプローチ」と題したプレスリリース[2]が掲載され、同時に戦略ペーパー全文、その骨子をまとめた「ファクトシート」[3]も閲覧できます。また、プレスリリースには、欧州委員会首脳、EU外務・安全保障政策上級代表によるコメントも一部引用されています。EUの経済安全保障を戦略ペーパーとしてまとめた今回の措置は、日本を含む西側諸国及びEUとの密接な経済関係を維持している他の地域にも確実に影響を及ぼすこととなり、今後の対EU貿易及び投資を考察するに際して必読の文書になると考えられます。

(注1) 「欧州理事会(the European Council)」 と「EU理事会 (the Council)」は別組織
 欧州理事会は、政治レベルの最高協議機関。EU加盟国首脳及び欧州理事会議長及び欧州委員会委員長により構成。EUの発展に必要な原動力を与え一般的政治指針を策定する。
 EU理事会は、EU加盟国の閣僚級代表により構成されるEUの主たる決定機関。総務理事会、外務理事会、経済・財政理事会等分野毎に招集、開催される。議長は、外務理事会を除き半年交代の輪番制議長国閣僚が務める。

(外務省ウェブサイト「EU関連用語集」から引用)

 本稿では、戦略ペーパーの全体像の把握を容易にするために、第1章では、ジョセップ・ボレルEU外務・安全保障政策上級代表 (欧州委員会副委員長兼任) のコメントから本ペーパー策定の背景を窺い、 「ファクトシート」 (原文1ページの簡単な骨子) とプレスリリース (原文3ページの戦略ペーパーの要点整理) から要旨をまとめます。

 第2章では、戦略ペーパー本文 (原文で15ページ) からサプライチェーンに関連する事項と特に重要と思われる内容を抽出してお伝えします。

 第3章では、EUの具体的な制裁措置をとり上げます。ロシアと国境を接する加盟国を抱えるEUは、報道でも繰り返し伝えられているように、対ウクライナ支援と対ロシア制裁を累次にわたって実施しているところでありますが、本戦略ペーパー公表直後の6月23日に、第11次対ロシア制裁措置[4]が発表されたので、この制裁措置の概要についてまとめます。

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