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第5章 一般特恵制度 (GSP):GSP原産地規則の創設時からの変遷

 前回は、一般特恵制度 (Generalized System of Preferences: GSP) が実施されるに至った歴史的な背景と制度の概要について述べました。今回は、GSP創設時の原産地規則がどのように変遷していったのか、またその理由などについて解説していきます。 

1. 初めに

 本稿では、UNCTAD事務局がGSP技術協力プロジェクト用に編集した「Generalized System of Preferences - Digest of Rules of Origin」 (1982年版) から創設時の原産地規則を要約し、必要に応じてUNCTADの供与国別ハンドブックなどを参照しつつ説明を加えます。まず、完全生産品については、ほぼ同じ定義が各GSP供与国で採用されており、今日にいたってもほぼ同じです。したがって、以下に説明するのは、生産に使用された輸入材料が実質的に変更されたか否かを判断する規則です。UNCTADの整理では「プロセス基準」と「パーセンテージ基準」に分けられていましたが、今日使用されている原産性判断基準の呼称と混乱しないように、前者を関税分類変更を主要基準とする「欧州・日本型」とし、後者を付加価値基準のみを採用する「米国・英連邦・社会主義国型」として説明します。米国と英連邦の先進諸国は共に英米法を採用しているところに共通点があるので「英米法国」としてまとめることもできます。EECに加盟した英国はEECのGSPを実施することになるので、この英連邦のカテゴリーには入りません。さらに、ブレグジット後に実施した英国のGSPは、事実上、EUのGSPとほぼ同じであるので、今日においても英連邦系のGSP原産地規則とは異なっています。

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