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スイートスプリングって

先日、会っていた人が別れ際に「これ」と言って、黄色い丸いものを手渡してきた。手のひら大、柑橘類らしいそれには、ピンクの養生テープが貼られていた。
そこにはカタカナで「スイートスプリング」と書いてあった。

「なあ、スイートスプリングってもらったことある?」

と友人Oさんは言った。ああ、これはスイートスプリングという種類か、と思うと同時に、いろんな返事が頭をよぎる。しかし、このスイートスプリング、別れ際も別れ際に差し出されたので「あまそう」と返事をしただけで終わってしまった。そしてOさんは車にさっさと乗って帰っていった。

Oさんはとにかく、話を端折る。以前もメールで「2歳になる息子には歯がないから…」と言っていたが、実際子どもに会ってみるときちんと歯はあった。よくよく話を聞くと「奥歯がまだ生えそろっていない」ということらしい。

このスイートスプリングにも、何かストーリーがあるはずだが、いつもなんとなく結論を預けられ、その過程に何があったのかはこちら側の想像にゆだねられている。こちらも話をつっこんで聞けばいいものだが、そんなことをすると、なんとなく野暮にさせられる口ぶり。

社会で働き、結婚し、子どもを育てるOさんだが、大学時代と変わらず話を端折りまくっていて安心感がある。12月1月と忙殺されていたけれど、こういうゆるいやり取りに生かされていると、心から思う。

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